異世界ラーメン屋台~俺が作るラーメンを食べるとバフがかかるらしい~

橘まさと

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二杯目 お肌プルプル鶏皮醤油ラーメン

第4話 ラーメン屋、商業ギルド職員の胃袋を掴む

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■商業ギルド 裏口

「はいよ、ニンニク醤油ラーメンと、餃子おまち!」
「タケシー、ギョウザ2つとトリパイタンスープ2つが追加だよー」
 
 俺がカウンターにどんどん料理を置いている間にルーミラから次の注文が届く。
 
「ごちそうさま! 器は捨てていっていいんだな?」
「はい、器とスプーンは袋に捨ててってください!」

 イリナも職員の対応をやってくれて、助かっていた。
 商人ギルド職員はそんなにいないかなと思っていたが、4人掛けのテーブルとカウンターが埋まり続けている。
 ゴミ袋を見ていると回転しているはずが、人の波は途切れない。

「思った以上にギルド職員っているんだな? それに昼食終わった後だろ?」
「いい匂いがしますからね、お腹を刺激しますよ。忙しいから簡単に済ませている人も多いですし」

 麺をゆでながらイリナに訪ねると納得のいく答えが返ってきた。
 俺も会社で働いていたときは、昼食はコンビニ飯などで簡単に済ませていた時期がある。
 ラーメンのいいところはすぐに食べれるところだ。
 その上で、腹いっぱいになるからいうことなしである。
 
「まぁ、そろそろ落ち着いてきたか?」

 そう思っていると、裏口から出てきた偉そうな雰囲気のおっさんがズンズンとこっちにやってきた。

「イリナ君! 君は勝手に何をやっているんだね! 裏口に屋台を出す許可なんか私は出してないよ!」

 顔を真っ赤にして起こっている中年のおっさんは日本でもよくいる中間管理職である。
 大きな騒ぎになっていることに気づき、やってきたのだろう。

「あー、これはーそのー」

 目を泳がせていたイリナがキッチンカーの中で俺を見上げてくるが、俺にどうしろというのだ。
 そもそも、許可などをとっておかなければいけないのはイリナの責任である。

「すみません、俺もよくわかってないもので出していいと言われたから出させていただいたんで」

 俺はとにかく腰を低くして、謝りこの場を納めようとした。
 しかし、おっさんの方はそれでは納得いかないようである。

「こんな風に勝手に出されては困るので、君の営業許可も無くすことも考えなくちゃいけないなぁ」
「それはちょっと、俺としては困ります」
「ならば、わかるだろ?」
 
 嫌な流れが生まれている。
 これは便宜を図るために金を寄こせと遠回しに言われているのだ。
 イリナよりも上司であるから、イリナからの担当変更だってありえる。
 そんなことされたら商売がやりづらくなるのが目に見えていた。

「それは君の越権行為や過ぎないかい?」
「こ、これはこれはギルドマスター」

 俺がどうしようかと思っているとき、裏口の扉から金髪ウェーブロングヘヤの美人が姿を見せる。
 その美人の頭には耳が生え、腰当たりから柔らかそうな狐の尻尾が揺れていた。
 パンツスーツのような男物の衣装を着こなしてはいるものの、肉付きのいい胸と腰が女であることを主張している。
 そんな姿の美女はモデルのような優美な歩き方でおっさんに近づいてき、たしなめた。
 美魔女という言葉がよく似合う成熟した女性の色気を感じされる美女におっさんはたじたじである。
 セシリアさんは知的な美女、こっちの女性は恥的な美女といった感じだ。

「上司の許可を取らなかったのは良くなかったね、イリナ君」
「申し訳ございません、ギルドマスター」

 イリナにも声をかけた狐の美女はゆっくりと歩き、キッチンカーにいる俺を見上げてくる。
 
「店主、私にも……そうだね、トリパイタンスープとギョウザを一つずつ貰おうか。これでいったん店じまいにしてほしい」
「かしこまりました」

 俺は有無を言わせない力強い瞳に魅せられて、料理を作っていった。
 その間も見つめられているので、気恥ずかしい。
 年上のお姉さん系にどうも弱いようだ。
 この年になると頼れる人が少ないので、その反動かもしれない。

「はいよ、鶏白湯スープと餃子だ」

 カウンターに置くと、美女はそのまま食べていく。
 フォークを使って食べている様が餃子のはずなのに高級フレンチに見えるような絵面になるのが不思議だった。

「うん、美味しいね。こちらのスープは……なるほど、これほど効果があるとは……」

 ぶつぶつとつぶやいて、美女は考えていたが急に顔を上げて俺を見てくる。

「いい腕だ。それに効果もすごい。私も〈鑑定〉持ちだからね、見させて貰ったよ」
「それはどうもありがとうございます。このトリパイタンスープを販売するにあたって何か問題や値付けのポイントはありますでしょうか?」

 俺は目の前の美女が商業ギルドの最高責任者だと聞いたので、率直に尋ねることにした。
 当初の予定は落ち着いたらイリナ経由で意見の集計を行っていくところだったが、この人の意見であれば誰も文句が出ないと考えている。

「そうだね……提供数を限定して、1杯銅貨7枚でいいだろう。『らーめん』とより少し下げないとバランスが悪くなるだろうが、価値が高い分、数量限定の提供だ」
「ありがとうございます。その、そのことを相談するだけなのにこんなに大騒ぎになってすみません」

 イリナの手続きが悪かったとしても、お願いしたのは俺なので、責任者には謝罪するのが筋というものだ。

「いやいや、噂の『らぁめん』屋というのが知れてよかったよ。次回はちゃんと食べたいので、孤児院の出店場所にも出向くよ」
「ありがとうございます」
「ああ、自己紹介がまだだったね。商業ギルドのギルドマスターをしているモミジ・シルヴァだ。よろしく頼むよ」
「タケシ・ヘイワジマです。タケシと呼んでください」

 偉い人だとわかっているからか敬語が抜けずに挨拶を交わす。
 俺のこの街での商売の仕方が大きく変わることになる握手になることを俺は知らなかった。

 
 

 
 
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