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二杯目 お肌プルプル鶏皮醤油ラーメン
第2話 ラーメン屋、鳥皮を手に入れる
しおりを挟む「クエエエエ!」
シャモは俺の突きをかわし、俺の頭をその鋭い口ばしで突っついてきた。
顔をよじり避けるが、髪の毛の何本かが切れてハラハラと宙を舞う。
直撃したら汚い花火が散ることは間違いなかった。
「くそっ! くそっ! くそっ!」
俺は蹴りをシャモの胴体に叩き込んで距離をあけようとする。
なんども蹴りをたたきつけるが、突っつきの勢いが止まらなかった。
顔を逸らせて避けるのにも限界がある。
ついに突っつきで頬が斬れた。
「やばい、次でやられる!」
「おーい、タケシ、大丈夫っスか?」
俺が目をつぶって、覚悟を決めたとき上空から弓矢でシャモを射抜いたミアが空から降りてくる。
動かなくなったシャモが俺の上に倒れこんで潰されるが、押しのけた。
「生きた心地しなかった……助かったよ」
「ラーシャモなんて、珍しいっスね。このあたりじゃあまり見ないモンスターっスよ?」
俺は尻をはたいて立ち上がり、ミアに頭を下げる。
ラーシャモというモンスターらしいが、大きさは人間の子供くらいの大きさのシャモだった。
「首をきって、血抜きしよう。早くやらないと肉が不味くなる」
動いていない鳥であれば、こちらは手慣れたものである。
血抜きの処理をしてから、〈アイテムボックス〉に入れた。
後々知ったことだが、〈アイテムボックス〉では時間経過がないので血抜きは後でも大丈夫とのことである。
異世界は便利だ。
■ヴァルディール・夜鴉ホーム
冒険者ギルドでホーンラビットの報酬を手に入れてから、屋敷のキッチンにやってきた。
お昼も近いので、鳥皮の部分以外も料理に使ってみたい。
「大きさが大きさだが、体のつくりはシャモのままだな」
まな板に乗りきらない大きさのシャモの下ごしらえをしながら、俺は料理の仕方を考える。
このサイズをそのままゆでる鍋もないから分割して処理することにした。
両腕と両足、体も三つくらいに分けないと厳しい。
せっかくゆでるのであればスープも一緒に作ろうと思ってネギとニンニクとショウガを市場で買ってきた。
野菜は似たようなものがあったのは助かる。
今日は胴体の一つだけで鍋を用意して、残りは〈アイテムボックス〉へ戻した。
グツグツと煮える鍋をかきまわしながら、俺はラーメン屋台を出す前にいろいろと試していたときを思い出す。
「タケシー、お腹すいたっスー」
「今は屋台出せないからなぁ……」
シャワーを浴びて来たミアがシャツ一枚のラフなスタイルでキッチンに顔をだしてきた。
さっき助けてもらったこともあるので、邪険にしたくはないが目のやり場に困る。
じろじろ見ないようにスープを味見して、いい感じだったので俺は鶏白湯スープを用意することにした。
具はネギと鶏肉だけだが、すぐに出せるものとしてはこんなものだろう。
「ほらよ、俺らの世界の料理で鶏白湯スープっていうんだ」
「ありがとっスー」
鶏白湯スープを受け取ったミアはくるくる回り、羽をパタパタさせながら食堂へ歩いていった。
しかし、鳥人族といったのか、ミアのような種族に鶏白湯スープっていいんだろうか……。
◇ ◇ ◇
「ふぉぉぉぉ! お肌がつるつるになったっスー!」
食堂の方からミアの大きな声が響き、なんだなんだと夜鴉のメンバーが食堂に集まってきた。
昼時ということもあって、近くにいたのだろう。
俺も鍋の火を止めて、食堂へと向かった。
「タケシ! この『とりぱいたん』スープってすごいっスね。こんなにお肌がつるつるになるなんて思ってもみなかったっス」
「お、おう……そいつは良かった」
ガバッと勢いよく振り向いて抱き着いてきたミアに俺は思わずたじろぐ。
そして、ステータスを鑑定してみた。
【 名 前 】 ミア・ダスクウィング
【 年 齢 】 27歳
【 種 族 】 鳥人族
【 職 業 】 アーチャー
【 レベル 】 42
【 体 力 】 120
【 魔 力 】 40
【 攻撃力 】 58
【 防御力 】 37
【 俊敏性 】 81
( スキル ) 飛行、精密射撃、偵察
(バフ)トリパイタンスープ【魅力+1】
魅力というのが上がっているが、それがお肌ツルツルの理由なのだろう。
理由は鳥皮から出てきたコラーゲンだろが、モンスターを使えば発現するのだろうか?
詳しい理由がよくわからないが、夜鴉メンバーの鋭い視線が有無を言わせずに自分にも寄こせと訴えていた。
「ああ、まだスープはあるから食べてみるか?」
「「「食べる!」」」
「あたしにもお代わりほしいっスー!」
ラーメンのスープのために用意していたが、意外な効果を発揮したのでモンスター食材についていろいろ検討の余地があることを感じる。
モンスター食材の場合は永久効果があるとなれば、ますます世の中荒れそうなネタだ。
セシリアと相談して黙っておくかどうかを決めよう。
俺はそう心に誓うのだった。
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