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二杯目 お肌プルプル鶏皮醤油ラーメン

第1話 ラーメン屋、鳥皮を求める

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■ヴァルディール 冒険者ギルド

 孤児院でのラーメン販売をはじめてから、2週間ほどたった朝。
 食べてくれる客、孤児院の子供たちにも喜んでもらっていて、毎日おいしそうに食べてくれるので俺もうれしい。
 嬉しいのだが、食べてくれる人に『夜鴉』のメンバーをはじめ女性が多いのでコラーゲン系ラーメンを作りたいと思い始めていた。

「コラーゲンといえば、手ごろなのは鳥皮だよな……」

 そう思って、屋台を出さない休日、朝市を巡ったのだが鳥皮は売ってなかった。
 鶏を飼うという文化がないので、アヒルやガチョウを食べている。
 そのため、コラーゲンのある鳥皮が取れないのだ。
 だから、鶏かそれ相応の鳥が見つからないか、冒険者ギルドに来ている。

「掲示板で依頼は……」

 最近は商業ギルドの方ばかりに行ってばかりだったので、久しぶりだった。
 『夜鴉』のメンバーには一緒に依頼に行こうと誘ってくれてはいたがランク差があるので断っている。
 そのかわりとばかりに、夜は屋敷の裏庭にキッチンカーをだしてラーメンと餃子を食べさせることになっていた。
 アルコール販売についても早めにできるようにしたいと思う。

「確か金貨5枚だったかな、アルコール販売で種類をそこそこだとこの値段なんだよなぁ……居酒屋の飲み放題メニューみたいだよなぁ……」

 俺はボヤキながら掲示板を見直した。
 冒険者ランクEではやれる依頼の幅は狭い。
 上のランクでは鳥系モンスターの依頼はあるが『フェニックス』とか俺ではどうしようもないものだった。

「そう簡単に、都合のいい依頼はないか……」
「どうかされましたか?」

 掲示板で悩んでいたことを気にしたのか、ギルド職員の女性が俺の隣によってくる。
 この世界に来てから、女性に構われる機会が増えた気がするが気のせいだろう。

「ああ、いい依頼がないかなとな」
「タケシさんはEランクですので、簡単な討伐か薬草採集がオススメですね。孤児院の方で料理も作られているときいていますから、食材系ですと……ホーンラビットなんかどうでしょうか?」

 ホーンラビットとは角の付いたウサギだ。
 ウサギだと思ってさけていたが、ウサギの肉は鳥に近いと聞いたことがあるのでチャーシューとか作るのはありだろう。
 直接鳥系モンスターを狙うよりかは、冒険者のランク上げも兼ねて小さな依頼をやっていくのもありだ。

「ホーンラビットの依頼なら、これか……」

 掲示板に張り出されている依頼用紙を一枚とって、ギルド職員に渡す。

「受理しました。頑張ってくださいね」

 ギルド職員に見送られて、俺はスイングドアを開けて外に出た。


■ヴァルディール近郊 ヴァルディール平原

 簡易な防具と剣という初心者装備を整えた俺はホーンラビットの出る平原へと足を運んだ。

「今日は孤児院の営業はお休みなの?」
「一日くらいは食材探したりする時間をとりたいしな」

 あれからルーミラは必要な時以外は妖精界というところに移動できるようになっている。
 ラーメンを作っているだけだったが、レベルが何故か上がっていたのだ。
 バフをかける俺のラーメンや餃子は付与魔法に近い扱いなのか、経験値が溜まるようである。
 フェアリーテイマーとして成長し、スキルも増えていた。


 【 名 前 】 タケシ・ヘイワジマ

 【 年 齢 】 42歳

 【 職 業 】 フェアリーテイマー

 【 レベル 】 5

 【 体 力 】 60

 【 魔 力 】 15

 【 攻撃力 】 15

 【 防御力 】 12

 【 俊敏性 】 15

 ( スキル ) 屋台召喚 アイテムボックス 鑑定 多言語理解 妖精感知 妖精召喚

「冒険者と平行して料理も作っていくなんて、タケシは働きものだね」
「ブラック企業にいた時は夜遅くまで働いていたんだ、これくらいは全然平気さ」

 ルーミラが俺の前を飛びながら笑いかけてくる。
 小さいながらも可愛いなと思った。

「周辺にモンスターの気配とかないか?」
「んと、その草むらにホーンラビットがいるね」
「おし! そりゃ!」

 俺は慣れない剣を振り草むらを薙いでホーンラビットが姿を探す。
 すぐに出てきたホーンラビットを逃がさないように追撃して倒した。
 生き物を殺す感覚は初めてだったが、何とかなりそうである。

「あっちにも何かいるよ!」
「よしきた!」

 ゲームのような感覚を得て、俺はホーンラビットをルーミラに索敵してもらいながら倒していった。
 10匹ほど倒したとき、ルーミラが大きな声をあげる。

「タケシ! あっちから、なんか大きいのが走って来ているよ!」
「突っ込んでくるのか、盾なんかないぞ!?」
 
 ルーミラの声に俺が動揺していると、ドドドと足音が近づき草むらの中から大きなシャモが飛び出してきた。

「シャモだ! これは鳥皮が取れるかもしれない!」

 俺は目の前の存在に喜び、剣を振るったが、口ばしにはじかれる。
 
「まずい、強いぞ!?」

 そのまま体当たりを受けて、俺は地面に転がった。

「タケシ! 今、治療するわ」
 
 ルーミラが傷ついた俺に回復魔法をかけてくれたので、立ち上がることはできるが、シャモと戦い続けることはできそうもない。
 だが、せっかくのシャモを逃がしたくなかった。

「さて、どうしようか……」

 俺が悩んでいる合間にもシャモが迫ってくる。
 意を決して、俺は剣をシャモの喉元をつくように突き出した。

  
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