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一杯目 出会いのニンニク醤油ラーメン
第9話 ラーメン屋、異世界で子供食堂をはじめる
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「ここって全然人来ないよな?」
「ええっと……はい……」
俺はイリナに案内された出店予定地に来たが、メインストリートの外れも外れ。
ほとんど人が来ない場所だった。
飲食店をやるには正直なところ不安しかない。
「ここで一か月契約ってのはないな……他の場所はないのか?」
「スペースをかなりとってしまうので、なかなか空いていないんですよ……広い場所といえば教会のそばでしょうか」
「教会か……」
教会ならば定期的な出入りはあるだろうし、場所としては悪くない。
「ただ、飲食店をやるには問題がありまして……」
「どんな問題だ?」
「その教会は孤児院も併設されているので、子供の相手をしなければ商売にならなこともあるそうです」
「なるほどな……」
孤児院が併設されているのであれば、孤児にラーメンを食べさせていくのもありだろう。
いわゆる子供食堂的な奴だ。
孤児でなくても子供を持つ親で子供の食事に困っている人がいるならば提供してもいい。
なんせ、食材は自動補充されるのだ。
「よし、そこでいい。案内してくれないか?」
「わかりました。こちらですよ」
俺の心は決まった。
ルーミラのこともそうだが、どうやら俺は子供好きらしい。
しかし、断じてロリコンではない!
■ヴァルディール・教会前
イリナに案内されたのは商店街とは離れているが、住宅街にある教会だった。
孤児院も併設で立っていて、教会の前には広場がある。
キッチンカーを出すには程よい広さだ。
「おや、タケシじゃないか」
「えっと……」
「あんまり話してないから、覚えられてないよな。あたしはリンダ。夜鴉のヒーラー担当さ」
孤児院から見たことのある女性が姿を見せる。
俺の顔をみるとウィンクを飛ばしてきて、キップのいい姉さんという言葉がよく似合っていた。
名前を憶えていなかったのは申し訳ないが、夜鴉のメンバーは多い上によく絡んでくるのが決まっているので、必然と覚えていくメンバーに差がでる。
「俺のほうは覚えてくれていたんだな。改めてよろしく頼む、リンダ」
「そりゃあ、あの『らぁめん』の味は忘れられないし、おかげでゴルドヒルシュに勝てたんだからね」
「ありがとうな。リンダはここで何をしているんだ?」
「ああ、あたしはこの孤児院出身でね、報酬の一部を寄付しにきたんだ」
黒髪黒目の人間が忌避されているのであれば、孤児になりやすいのも理解できた。
理解できるけれども、納得できるわけじゃない。
「俺はここでラーメン屋をやろうと思ってな。昼間から夕方にかけて開くし、子供食堂のような運営をしていく」
「『コドモショクドウ』って何だい?」
「子供に関しては無料でラーメン1杯と餃子をサービスするって業務形態だ。孤児でもそうでなくてもここにきてくれれば食べさせてやるつもりだ」
俺の言葉にリンダとイリナが驚き、目を見開いた。
「子供に一杯無料って、それで営業できるんですか?」
「ま、忙しくて動けなくならない限りは大丈夫だ。サポーターも一人当てができたしな」
「ふっふーん、このルーミラ様に任せなさいって!」
イリナの疑問に俺は答えた。
どこにいたのか、姿を急に見せたルーミラが得意げに同意して胸を逸らせる。
仕事の内容を詳しく話していないし、実際にやっていないはずなのになぜ得意げなのだろうか……。
「ピクシーまでいつの間に捕まえたんだい……あんたって、すごい男だねぇ……」
一連の様子をみていたリンダも関心したように言葉を漏らした。
さて、せっかくだからイリナとルーミラにラーメンを食べてもらうとしよう。
決して、リンダの関心に気恥ずかしさを抱いたわけではない!
「屋台召喚!」
俺の言葉と共に教会前の広場に1tトラックキッチンカーが姿を見せた。
「これがタケシさんの屋台? なんですね……」
「ラーメン作るからちょっと待っててくれ、リンダは孤児を呼び出してくれ。少し早い夕飯代わりになるだろう」
「あいよ、あたしもご一緒させてもらうよ」
リンダが孤児院の中に戻っている間、俺は折り畳みの椅子付きテーブルを広げて、キッチンカーの中に入る。
キッチンカーの中で服を着替えれば調理開始だ。
◇
「あいよ、ニンニクマシマシ背脂濃いめのガッツリ醤油ラーメン2つお待ち」
しばらくしてから、キッチンカーのカウンターに出来上がったラーメンを置く。
「これが『らぁめん』なんですね」
「へー、汁につけた麺なんて初めて見るわ」
イリナとルーミラがもやしとチャーシュー、背脂の塊が主張をしているラーメンを前にジーっと眺めたまま動かない。
「食べないと伸びて不味くなるぞ。そっちのテーブルにいって食べてくれ」
俺が目線でテーブルを示すと、二人はラーメンの器を持って移動した。
フォークでもって二人は麺を口につける。
つるつると麺が飲み込まれて、いったあと二人の目がくわっと開いた。
「「おいしい!」」
二人が大声をあげていると、孤児院の方から子供たちがリンダに手を引かれてやってくる。
「次々作るから、リンダはテーブルにラーメンを運んでくれ、ルーミラも食べ終わったらこっちを手伝ってくれよ」
「ふわぁい、わふぁった」
「食べてから喋れ、食べてから……」
くすくす笑いながら、俺はラーメンを人数分作りはじめた。
「ええっと……はい……」
俺はイリナに案内された出店予定地に来たが、メインストリートの外れも外れ。
ほとんど人が来ない場所だった。
飲食店をやるには正直なところ不安しかない。
「ここで一か月契約ってのはないな……他の場所はないのか?」
「スペースをかなりとってしまうので、なかなか空いていないんですよ……広い場所といえば教会のそばでしょうか」
「教会か……」
教会ならば定期的な出入りはあるだろうし、場所としては悪くない。
「ただ、飲食店をやるには問題がありまして……」
「どんな問題だ?」
「その教会は孤児院も併設されているので、子供の相手をしなければ商売にならなこともあるそうです」
「なるほどな……」
孤児院が併設されているのであれば、孤児にラーメンを食べさせていくのもありだろう。
いわゆる子供食堂的な奴だ。
孤児でなくても子供を持つ親で子供の食事に困っている人がいるならば提供してもいい。
なんせ、食材は自動補充されるのだ。
「よし、そこでいい。案内してくれないか?」
「わかりました。こちらですよ」
俺の心は決まった。
ルーミラのこともそうだが、どうやら俺は子供好きらしい。
しかし、断じてロリコンではない!
■ヴァルディール・教会前
イリナに案内されたのは商店街とは離れているが、住宅街にある教会だった。
孤児院も併設で立っていて、教会の前には広場がある。
キッチンカーを出すには程よい広さだ。
「おや、タケシじゃないか」
「えっと……」
「あんまり話してないから、覚えられてないよな。あたしはリンダ。夜鴉のヒーラー担当さ」
孤児院から見たことのある女性が姿を見せる。
俺の顔をみるとウィンクを飛ばしてきて、キップのいい姉さんという言葉がよく似合っていた。
名前を憶えていなかったのは申し訳ないが、夜鴉のメンバーは多い上によく絡んでくるのが決まっているので、必然と覚えていくメンバーに差がでる。
「俺のほうは覚えてくれていたんだな。改めてよろしく頼む、リンダ」
「そりゃあ、あの『らぁめん』の味は忘れられないし、おかげでゴルドヒルシュに勝てたんだからね」
「ありがとうな。リンダはここで何をしているんだ?」
「ああ、あたしはこの孤児院出身でね、報酬の一部を寄付しにきたんだ」
黒髪黒目の人間が忌避されているのであれば、孤児になりやすいのも理解できた。
理解できるけれども、納得できるわけじゃない。
「俺はここでラーメン屋をやろうと思ってな。昼間から夕方にかけて開くし、子供食堂のような運営をしていく」
「『コドモショクドウ』って何だい?」
「子供に関しては無料でラーメン1杯と餃子をサービスするって業務形態だ。孤児でもそうでなくてもここにきてくれれば食べさせてやるつもりだ」
俺の言葉にリンダとイリナが驚き、目を見開いた。
「子供に一杯無料って、それで営業できるんですか?」
「ま、忙しくて動けなくならない限りは大丈夫だ。サポーターも一人当てができたしな」
「ふっふーん、このルーミラ様に任せなさいって!」
イリナの疑問に俺は答えた。
どこにいたのか、姿を急に見せたルーミラが得意げに同意して胸を逸らせる。
仕事の内容を詳しく話していないし、実際にやっていないはずなのになぜ得意げなのだろうか……。
「ピクシーまでいつの間に捕まえたんだい……あんたって、すごい男だねぇ……」
一連の様子をみていたリンダも関心したように言葉を漏らした。
さて、せっかくだからイリナとルーミラにラーメンを食べてもらうとしよう。
決して、リンダの関心に気恥ずかしさを抱いたわけではない!
「屋台召喚!」
俺の言葉と共に教会前の広場に1tトラックキッチンカーが姿を見せた。
「これがタケシさんの屋台? なんですね……」
「ラーメン作るからちょっと待っててくれ、リンダは孤児を呼び出してくれ。少し早い夕飯代わりになるだろう」
「あいよ、あたしもご一緒させてもらうよ」
リンダが孤児院の中に戻っている間、俺は折り畳みの椅子付きテーブルを広げて、キッチンカーの中に入る。
キッチンカーの中で服を着替えれば調理開始だ。
◇
「あいよ、ニンニクマシマシ背脂濃いめのガッツリ醤油ラーメン2つお待ち」
しばらくしてから、キッチンカーのカウンターに出来上がったラーメンを置く。
「これが『らぁめん』なんですね」
「へー、汁につけた麺なんて初めて見るわ」
イリナとルーミラがもやしとチャーシュー、背脂の塊が主張をしているラーメンを前にジーっと眺めたまま動かない。
「食べないと伸びて不味くなるぞ。そっちのテーブルにいって食べてくれ」
俺が目線でテーブルを示すと、二人はラーメンの器を持って移動した。
フォークでもって二人は麺を口につける。
つるつると麺が飲み込まれて、いったあと二人の目がくわっと開いた。
「「おいしい!」」
二人が大声をあげていると、孤児院の方から子供たちがリンダに手を引かれてやってくる。
「次々作るから、リンダはテーブルにラーメンを運んでくれ、ルーミラも食べ終わったらこっちを手伝ってくれよ」
「ふわぁい、わふぁった」
「食べてから喋れ、食べてから……」
くすくす笑いながら、俺はラーメンを人数分作りはじめた。
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