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一杯目 出会いのニンニク醤油ラーメン

第6話 ラーメン屋、己のスキルを試す

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■『夜鴉』ホーム・裏庭

 ダンジョン潜った日は打ち上げをする夜鴉は翌日はお休みを設けている。
 昨夜の酒盛りの様子からすればさもありなん。
 俺は朝食をセリーナやエドガーさんと共に済ませたあと、昼ご飯まで裏庭でスキルの練習をすることにした。

「屋台召喚!」

 俺はアニメとかでありそうなポーズを決めて、意識してみた。
 裏庭には昨日納車された1tトラックキッチンカーが姿をみせる。

「食材とかはどうなっているのかな」

 キッチンカーの荷台にあがり、冷蔵庫などを確認していった中身は出発前と同じような状態になっていた。
 昨日は食べ終わった調理器具類は洗っていなかったのだが、再召喚したら全て真新しくなっている。
 
「洗い物しなくていいのは楽だなぁ~」

 昨日使った器類も復活しているので、消耗品は自動補充されるようだ。
 同じ背脂ラーメンを出すだけなら、問題はなかった。

「ただ、創作系を出すためには食材変えたいんだよなぁ……」

 俺が悩んでいると、ウィンドウが目の前に現れる。


 【屋台召喚 レベル 1】

 購入した屋台を召喚することができる。

 購入した屋台に限り最善の状態に保ち、課金に応じてメニューを追加することができる。

 『効果』破壊不可、自動補充


「課金と来たか……やはり世の中は金なんだなぁ……」

 異世界でも金を稼いでいかなければならないが、屋台の食材は自動補充されていくとなるなら原価は0円。
 売れば売るだけ儲かるじゃないかと思ったが、そこに俺の労力は加味されていない。

「課金はどうやるんだ?」

 ウィンドウを眺めていると、ウィンドウが切り替わり追加メニューと費用がでてきた。
 『アルコール販売』『ソフトドリンク販売』『餃子販売』といった売り出すメニューが並ぶ、費用はこちらの通貨でもある金貨〇枚といった表示である。
 
「金貨を集めなきゃか、ちゃんと値段を決めて冒険者相手に売っていくが一番やりやすいか」

 俺は一人で納得してウィンドウを閉じようとしたら、カリンの顔が目の前にあった。

「わぁ!? いつの間に!」
「結構前からいたけど、屋台の中でうんうん唸っていたから、気づかなかったんじゃない?」

 シャツにズボンといった普段着のカリンがクスクス笑っている。
 黒髪のポニーテールが白いシャツに映えて、絵になる美人だと思った。

「今日は休みのようだけど、何か俺に用か?」
「そうそう、ほかのメンバーとも相談したんだけどね、昨日の討伐はタケシのおかげもあるから、『らぁめん代』の含めて報酬を一部渡そうって話になったのよ」

 そういって、カリンは金貨の入った袋を俺に渡してくれた。
 中には1枚の金貨と40枚の銀貨が入っている。

「ここだと金貨1枚で何ができるんだ?」

 通貨の価値は何が対価として使えるかが重要だ。
 ただ単に餃子を増やすために使っていいものではない。

「そうね、大体の宿で1泊は銀貨5枚前後、金貨1枚なら2~3日泊まれるわね。ちょっと高い宿なら金貨2,3枚はいるわ」

 カリンの説明を受けて、俺はここでの金貨は1万円くらいだと予想した。
 それならば、餃子に使ってもいいだろう。

「じゃあ、新しいメニューを増やしてみるな」

 ウィンドウを開き、メニュー画面から『餃子販売』を選択すると、手に持っていた金貨がふわっと浮かび上がり消えていった。
 そうすると、冷蔵庫が光って商品が追加されたことを示す。

「ちょっと待っててくれ、今から味見がてら作るから」
「やったわ、みんなより先に異世界の料理を味わえちゃうなんて、ラッキーね」

 キッチンカーの前で待ってもらい、俺は冷蔵庫からチルド餃子を取り出してフライパンで焼いていった。
 チルドなのですぐに焼いて使えるのがいい。

「ほらよ、餃子お待ち!」
「不思議な見た目をしているのね……」

 窓の前にあるカウンターに餃子をスチロール皿に載せて、プラスチックフォークと共に置いた。
 フォークを手に取り、カリンは餃子を突き刺して食べる。

「肉汁が出てきて、おいしい! これって、お酒に合うわよね! あ、お代わりあるなら食べたい!」
「あいよ……まぁ、俺のいた世界でも酒と一緒に食べるのは普通だな」

 リクエストに応えて、俺はチルド餃子をもう一人前焼いていった。
 冷蔵庫の大きさからストック量はそれほどでもない、一旦収納して、再召喚したら復活するけどもその手間が面倒くさそうである。

「あ! カリン! こんなところにいたっス! 何やってんスか? いい匂いしているし、抜け駆けっスか!」
「ずるい……屋台だすなら、先に行ってほしい……らぁめん食べたい」

 ミアやフェリシアが中庭にやってきて騒がしくなる。
 この二人は特に料理に目がない二人なので、餃子もラーメンもたくさん食べられるだろう。
 
「お昼前だから、ほどほどに……」

 俺は頭にタオルを巻き、ラーメンの方も作り始めた。
 会社勤めの時は休日に仕事なんて、ブラックだと思ったが、美女の笑顔を前にしてはそんな気持ちは浮かばない。
 ところ変われば、やりがいも変わるものだった。



 
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