68 / 86
亜利馬、ぶるぶる
7
しおりを挟む
「あ、結局亜利馬も捕まっちゃったんだ。全員確保で潤歩の勝ちだね」
「俺様の体力と俊敏さを甘く見んなよ」
潤歩に腕を掴まれたまま、俺は未だ頬を火照らせていた。
「皆さんお疲れ様です! 撮影終了です!」
ケンさんがこちらに近付いて来て、「一言お願いします」と一人ずつカメラが向けられる。
「久し振りにこういう遊びしたから楽しかった! 今日はぐっすり眠れそう」
獅琉が言って、次に竜介の方へカメラが移動した。
「たまには遊びで体動かすのもいいな。運動だけでなくブランコでのんびりもできたし」
「ブランコならずっと乗ってたい。竜介んちの庭に作ってよ」
大雅の呟きにスタッフの笑いが起き、俺も釣られて笑った。顔が赤いから気持ち悪い笑顔になってしまったけれど。
「俺はやっぱ、最後の鬼ごっこが最高だったわ。勝ったし」
「亜利馬くんは?」
「お、おお、俺はぁ……」
しどろもどろになる俺の腕を、潤歩がぎゅっと強く掴んだ。
「お、俺はええと、全部面白かったです。一時間ずっとハラハラドキドキでした」
ケンさんのオッケーサインに、リーダー獅琉がまとめに入る。
「それでは今日は神奈川の某公園からお届けしました! インヘル公式ブレイズチャンネル、これからもどうぞよろしくお願いします!」
「ありがとうございました!」
最後は全員でポーズを取り、これで一応撮影は終了だ。
「お疲れ様でした! 撤収します!」
「ブレイズの皆さん車にどうぞ! 誰か、中でお茶渡してあげてください!」
秋風の寒さに身震いしながら駐車場へ向かう四人。再び俺だけケンさんに呼ばれ、さり気なく四人から離れてカメラの前に立つ。
「さて亜利馬くん、どうでした?」
「もう本当に大変でしたよ! 気付かれなかったのが奇跡ですって」
「ということは、亜利馬くんの勝ちだね」
「視聴者さんの大半は、絶対俺が負けると思ってたでしょ。へへ、俺だってやる時はやるんです!」
「おめでとう亜利馬くん! こちら賞品です!」
「やったぁ! ありがとうございます!」
ギフト用のプリペイドカードを受け取り、俺はガッツポーズでカメラに笑って見せた。後はトイレでローターを取って、何食わぬ顔でワゴンに乗りみんなと帰るだけだ。
大変だけど楽しかった。アクシデントも色々あったけれど……とにかくめでたしめでたし、だ。
*
「………」
数日後。
配信された動画を見て、俺は頭を抱えていた。
「亜利馬、やっぱり変だったよね。……みんなも気付いた?」
撤収中にワゴンに乗った俺以外の四人の様子が、別のカメラで撮影されていたのだ。この時の俺はケンさんから金一封を頂き、トイレでローターを抜いている真っ最中だった。
「あれ絶対ケツにバイブかローター挿れてたぞ。あいつ何も言わなかったけど、微妙にバイブ音聞こえてくる時あったし。途中勃起してたしよ……」
潤歩の言葉に、大雅が頷いた。
「滑り台で亜利馬の上に重なった時、お尻のとこから振動が伝わってきた。……それに触れたら駄目だろうなと思って、黙ってたけど」
「うーん……。何故そんなことを……」
竜介が腕組みをして首を捻る。
「もしかしたら亜利馬、欲求不満なのかもね」
獅琉がまとめて、他の三人が「そうかも」と同意した。
……あの日、俺はずっと四人から「ケツにローターを入れて仕事をしている奴」だと思われていたのだ。みんなの変な優しさでスルーされていただけで、全員それに気付いていたのだ。
何も知らずに「勝った」と喜んでいた俺って、一体……。
「やっぱムッツリ小僧だ、あいつは」
道理であの日以来、みんなが俺に生暖かい視線を送ってくると思った。
「………」
俺は頭を抱えて床にうずくまり、「早くみんなが今日の動画を見て真相に気付いてくれますように」と心の底から祈り続けた。
「俺様の体力と俊敏さを甘く見んなよ」
潤歩に腕を掴まれたまま、俺は未だ頬を火照らせていた。
「皆さんお疲れ様です! 撮影終了です!」
ケンさんがこちらに近付いて来て、「一言お願いします」と一人ずつカメラが向けられる。
「久し振りにこういう遊びしたから楽しかった! 今日はぐっすり眠れそう」
獅琉が言って、次に竜介の方へカメラが移動した。
「たまには遊びで体動かすのもいいな。運動だけでなくブランコでのんびりもできたし」
「ブランコならずっと乗ってたい。竜介んちの庭に作ってよ」
大雅の呟きにスタッフの笑いが起き、俺も釣られて笑った。顔が赤いから気持ち悪い笑顔になってしまったけれど。
「俺はやっぱ、最後の鬼ごっこが最高だったわ。勝ったし」
「亜利馬くんは?」
「お、おお、俺はぁ……」
しどろもどろになる俺の腕を、潤歩がぎゅっと強く掴んだ。
「お、俺はええと、全部面白かったです。一時間ずっとハラハラドキドキでした」
ケンさんのオッケーサインに、リーダー獅琉がまとめに入る。
「それでは今日は神奈川の某公園からお届けしました! インヘル公式ブレイズチャンネル、これからもどうぞよろしくお願いします!」
「ありがとうございました!」
最後は全員でポーズを取り、これで一応撮影は終了だ。
「お疲れ様でした! 撤収します!」
「ブレイズの皆さん車にどうぞ! 誰か、中でお茶渡してあげてください!」
秋風の寒さに身震いしながら駐車場へ向かう四人。再び俺だけケンさんに呼ばれ、さり気なく四人から離れてカメラの前に立つ。
「さて亜利馬くん、どうでした?」
「もう本当に大変でしたよ! 気付かれなかったのが奇跡ですって」
「ということは、亜利馬くんの勝ちだね」
「視聴者さんの大半は、絶対俺が負けると思ってたでしょ。へへ、俺だってやる時はやるんです!」
「おめでとう亜利馬くん! こちら賞品です!」
「やったぁ! ありがとうございます!」
ギフト用のプリペイドカードを受け取り、俺はガッツポーズでカメラに笑って見せた。後はトイレでローターを取って、何食わぬ顔でワゴンに乗りみんなと帰るだけだ。
大変だけど楽しかった。アクシデントも色々あったけれど……とにかくめでたしめでたし、だ。
*
「………」
数日後。
配信された動画を見て、俺は頭を抱えていた。
「亜利馬、やっぱり変だったよね。……みんなも気付いた?」
撤収中にワゴンに乗った俺以外の四人の様子が、別のカメラで撮影されていたのだ。この時の俺はケンさんから金一封を頂き、トイレでローターを抜いている真っ最中だった。
「あれ絶対ケツにバイブかローター挿れてたぞ。あいつ何も言わなかったけど、微妙にバイブ音聞こえてくる時あったし。途中勃起してたしよ……」
潤歩の言葉に、大雅が頷いた。
「滑り台で亜利馬の上に重なった時、お尻のとこから振動が伝わってきた。……それに触れたら駄目だろうなと思って、黙ってたけど」
「うーん……。何故そんなことを……」
竜介が腕組みをして首を捻る。
「もしかしたら亜利馬、欲求不満なのかもね」
獅琉がまとめて、他の三人が「そうかも」と同意した。
……あの日、俺はずっと四人から「ケツにローターを入れて仕事をしている奴」だと思われていたのだ。みんなの変な優しさでスルーされていただけで、全員それに気付いていたのだ。
何も知らずに「勝った」と喜んでいた俺って、一体……。
「やっぱムッツリ小僧だ、あいつは」
道理であの日以来、みんなが俺に生暖かい視線を送ってくると思った。
「………」
俺は頭を抱えて床にうずくまり、「早くみんなが今日の動画を見て真相に気付いてくれますように」と心の底から祈り続けた。
0
お気に入りに追加
100
あなたにおすすめの小説



身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!
かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。
その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。
両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。
自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。
自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。
相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと…
のんびり新連載。
気まぐれ更新です。
BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意!
人外CPにはなりません
ストックなくなるまでは07:10に公開
3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!

寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる