104 / 111
ブレイズ、そこにいる5人
7
しおりを挟む
「亜利馬っ、それは俺の肉だ! 勝手に食ってんじゃねえ!」
「焼肉は戦いなんですよ、潤歩さん。ボサッとしてたら背中を刺されます」
「こっからこっち全部俺の肉! 俺様の陣地に入ってくんな、お前ら!」
「もう、飯くらい落ち着いて食べなよ。子供じゃないんだしさぁ」
「大雅、何か追加で頼むか?」
「……白いご飯と、ネギ塩タンと、コーラ」
「了解。お前達は何かあるか」
「竜介、俺のビールも!」
「特上ロース!」
「俺もコーラお願いします!」
焼肉屋の個室で男五人。食べて飲んで騒ぐ様はそれこそ子供みたいで、そんな時間が俺にとっては心から楽しかったりする。俺が「亜利馬」でいる時間。衣装を脱いで台本通りの台詞を言うこともない、正真正銘の「亜利馬」でいられる時間。
そんな大切なひと時を、この四人と一緒に過ごせることが嬉しかった。
「八月の動画でさ、みんなで海行ったりできるといいね」
「獅琉さん、日焼けしちゃいませんか?」
「毎年のことだもん、平気だよ」
「俺はボード持ってこうっと。お前らガキ組は浮き輪だな」
「別にいいじゃないですか、浮き輪楽しいですよ」
「竜介に二人分、引っ張ってもらう」
「はっはっは、任せろ!」
こんな風にずっと楽しくやっていけたら。
思ったその時、着信を受けた獅琉のスマホがテーブルの上で振動した。
「もしもし。……はい、今五人います。──えっ? あ、本当ですか……はい。わ、分かりました」
通話を切った獅琉が神妙な面持ちで俺達四人の顔を見て、……ニヤリと笑った。
「俺達のライバルグループの結成が正式に決まったって。今後は動画でグループ対決とかあるかもしれないって」
「えっ?」
「マジか」
ブレイズのライバル。本気で挑んでくるとしたら、それはきっとメーカー側も相当に自信のあるモデルを揃えるつもりだ。
「面白いじゃねえか。誰が来ようと血祭りにあげてやる」
「へ、平和なゲーム対決ならいいですけど……。売上げとかを本気で争うとしたら、ちょっと怖いですね……」
「構わないさ。楽しければ何でもいいじゃないか!」
「……俺もどっちでもいい」
「よし、俺達も改めて気合入れてこう!」
獅琉が拳を前に突き出し、俺もそれに続いた。竜介が大雅の腕を取って同じように突き出し、最後に潤歩が嫌そうに拳を作った。
「えーと、こういう時の掛け声は……」
「ファイトー! みたいな感じですか?」
「よし。ブレイズ──……」
「長げぇよ」
「ファイ、トー、……?」
「ファイト~」
全く噛み合わないタイミングのぐだぐだ感と照れ臭さに、俺達は大笑いしながら焼肉争奪戦を再開させた。
見たことがないもの、やったことがないもの、感じたことのないもの。
まだまだ知らないことが多過ぎて、これから先の道、不安は決してゼロじゃない。時には挫折したり泣いたり、悔しい思いもするかもしれない。着地点も定まっていない俺だけど──いつか見えた目指す場所が遠くても険しくても、その道を五人で走れるならきっと何だって乗り越えられる。
あの日踏み出した一歩を、いつか誇れる日がくるように。
俺もブレイズも、前だけを見て進み続けるんだ。
「焼肉は戦いなんですよ、潤歩さん。ボサッとしてたら背中を刺されます」
「こっからこっち全部俺の肉! 俺様の陣地に入ってくんな、お前ら!」
「もう、飯くらい落ち着いて食べなよ。子供じゃないんだしさぁ」
「大雅、何か追加で頼むか?」
「……白いご飯と、ネギ塩タンと、コーラ」
「了解。お前達は何かあるか」
「竜介、俺のビールも!」
「特上ロース!」
「俺もコーラお願いします!」
焼肉屋の個室で男五人。食べて飲んで騒ぐ様はそれこそ子供みたいで、そんな時間が俺にとっては心から楽しかったりする。俺が「亜利馬」でいる時間。衣装を脱いで台本通りの台詞を言うこともない、正真正銘の「亜利馬」でいられる時間。
そんな大切なひと時を、この四人と一緒に過ごせることが嬉しかった。
「八月の動画でさ、みんなで海行ったりできるといいね」
「獅琉さん、日焼けしちゃいませんか?」
「毎年のことだもん、平気だよ」
「俺はボード持ってこうっと。お前らガキ組は浮き輪だな」
「別にいいじゃないですか、浮き輪楽しいですよ」
「竜介に二人分、引っ張ってもらう」
「はっはっは、任せろ!」
こんな風にずっと楽しくやっていけたら。
思ったその時、着信を受けた獅琉のスマホがテーブルの上で振動した。
「もしもし。……はい、今五人います。──えっ? あ、本当ですか……はい。わ、分かりました」
通話を切った獅琉が神妙な面持ちで俺達四人の顔を見て、……ニヤリと笑った。
「俺達のライバルグループの結成が正式に決まったって。今後は動画でグループ対決とかあるかもしれないって」
「えっ?」
「マジか」
ブレイズのライバル。本気で挑んでくるとしたら、それはきっとメーカー側も相当に自信のあるモデルを揃えるつもりだ。
「面白いじゃねえか。誰が来ようと血祭りにあげてやる」
「へ、平和なゲーム対決ならいいですけど……。売上げとかを本気で争うとしたら、ちょっと怖いですね……」
「構わないさ。楽しければ何でもいいじゃないか!」
「……俺もどっちでもいい」
「よし、俺達も改めて気合入れてこう!」
獅琉が拳を前に突き出し、俺もそれに続いた。竜介が大雅の腕を取って同じように突き出し、最後に潤歩が嫌そうに拳を作った。
「えーと、こういう時の掛け声は……」
「ファイトー! みたいな感じですか?」
「よし。ブレイズ──……」
「長げぇよ」
「ファイ、トー、……?」
「ファイト~」
全く噛み合わないタイミングのぐだぐだ感と照れ臭さに、俺達は大笑いしながら焼肉争奪戦を再開させた。
見たことがないもの、やったことがないもの、感じたことのないもの。
まだまだ知らないことが多過ぎて、これから先の道、不安は決してゼロじゃない。時には挫折したり泣いたり、悔しい思いもするかもしれない。着地点も定まっていない俺だけど──いつか見えた目指す場所が遠くても険しくても、その道を五人で走れるならきっと何だって乗り越えられる。
あの日踏み出した一歩を、いつか誇れる日がくるように。
俺もブレイズも、前だけを見て進み続けるんだ。
0
お気に入りに追加
168
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
【完結】我が国はもうダメかもしれない。
みやこ嬢
BL
【2024年11月26日 完結、既婚子持ち国王総受BL】
ロトム王国の若き国王ジークヴァルトは死後女神アスティレイアから託宣を受ける。このままでは国が滅んでしまう、と。生き返るためには滅亡の原因を把握せねばならない。
幼馴染みの宰相、人見知り王宮医師、胡散臭い大司教、つらい過去持ち諜報部員、チャラい王宮警備隊員、幽閉中の従兄弟、死んだはずの隣国の王子などなど、その他多数の家臣から異様に慕われている事実に幽霊になってから気付いたジークヴァルトは滅亡回避ルートを求めて奔走する。
既婚子持ち国王総受けBLです。
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる