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亜利馬、初めての生配信
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「こんばんは! インヘル動画チャンネル今日は生配信でお届けしています! メインMC兼イメージキャラクターのインヘルちゃんです! そして今日のお相手は──」
「あ、亜利馬、デス。こんばんは。よろしく、お願いしシマス」
緊張のあまり口の中が渇いて、カクカクとした喋り方になってしまう。まるで俺の方が人形みたいだ。
もちろん目の前にお客さんがいる訳ではない。そして、リアルタイムで送られてくるメッセージも俺が目を通すことはない。それは俺が緊張しないようにという動画班の配慮とのことだけど、配慮するほどたくさんの人が今この瞬間俺を見ていると思うと、本番撮影よりも緊張して吐きそうになってくる。
「お、さっそく亜利馬くんへのラブコールが届いてるね。デビュー作から応援してるって人が多いみたいだね。あと、妙に『w』が多いのは何なんだろうね?」
「……あの俺、皆さんが思ってるほど馬鹿じゃないですよ!」
「『w』が増えたね」
室内には動画班の人達しかいない。皆ニコニコ笑っているけど、ここに山野さんがいたら溜息をつかれていたかもしれなかった。ちなみに山野さんはあの後すぐに獅琉と潤歩がいるスタジオに直行したため、ここにはいない。移動車の中で見ているだろうか?
「今日はゲストに来てくれた亜利馬くんに色々質問をして、皆さんにもっと亜利馬くんのことを知ってもらおうと思ってるよ。──それじゃあ早速いってみよう!」
ジャン! とどこからともなくSEが鳴って、思わず体がビクついた。
「亜利馬くんがモデルになったきっかけ、これは?」
「えっと、渋谷でスカウトされました。面白そうだなって思って、高校卒業してすぐにコッチに出てきました」
「なるほど。初めての撮影はどうだった? やっぱり緊張した?」
「えーと……初めての撮影は先輩の潤歩さんと獅琉さんが相手役だったんですけど、もちろん緊張したけど二人がリードしてくれて安心してできました。スタッフさんも良い人達で、現場の雰囲気も良かったですよ」
そんなに昔のことじゃないのに、何だか懐かしい。潤歩のアレが受け入れられなかったこと、デートしたこと、獅琉が俺の初めての相手になったこと。今でもはっきりと思い出せる。
「亜利馬くんの先輩はみんなトップモデルさん達だもんね。そんな中で亜利馬くんもブレイズのメンバーになったわけだけど、今後はこういうモデルさんになりたい! っていう理想はあるのかな?」
「もちろん皆さんの役に立てるモデルにはなりたいですけど、それと同じくらい、皆さんに笑ってもらえるようなモデルになりたいです。……あ、『w』じゃなくてね。笑顔になって欲しいって意味ですからね」
「バドミントンの動画が凄く人気だったみたいってのは聞いてるよ。ああいうのを見て笑顔になった人もいるかもね」
インヘルちゃんがそう言って、俺に向かって何度か首を傾げた。頷いているらしい。
「許されるなら、絡みの映像以外も皆さんに見てもらえるといいなと思うんですけど……。俺の周り、本当に笑いが絶えないんです。先輩達の話も面白いし、いつも凄く和気あいあいとしてて……。それぞれ性格は全然違うのに、ブレイズの五人は兄弟みたいに仲が良いんです」
優しくてお世話好きな獅琉。ぶっきらぼうだけど情に厚い潤歩。兄貴肌で皆を引っ張ってくれる竜介。大人しいけど本当は人懐こくて可愛い大雅。
──四人とも、俺の大事な仲間だ。
「亜利馬くんは居場所を見つけたんだね」
「えっ……」
インヘルちゃんの言葉にハッとして、一瞬茫然としてしまった。
「ブレイズの皆もきっと、亜利馬くんのことが大好きだよ」
「………」
「という訳で、亜利馬くんの引退発表みたいな雰囲気になりましたが」
「な、なってませんっ。引退しないです! ……次の質問行ってくださいっ」
インヘルちゃんのフォローで何とか笑いの方向へ持っていくことが出来たものの、あと一言でもブレイズメンバーについて何か言われていたら危うく泣いてしまうところだった。
「あ、亜利馬、デス。こんばんは。よろしく、お願いしシマス」
緊張のあまり口の中が渇いて、カクカクとした喋り方になってしまう。まるで俺の方が人形みたいだ。
もちろん目の前にお客さんがいる訳ではない。そして、リアルタイムで送られてくるメッセージも俺が目を通すことはない。それは俺が緊張しないようにという動画班の配慮とのことだけど、配慮するほどたくさんの人が今この瞬間俺を見ていると思うと、本番撮影よりも緊張して吐きそうになってくる。
「お、さっそく亜利馬くんへのラブコールが届いてるね。デビュー作から応援してるって人が多いみたいだね。あと、妙に『w』が多いのは何なんだろうね?」
「……あの俺、皆さんが思ってるほど馬鹿じゃないですよ!」
「『w』が増えたね」
室内には動画班の人達しかいない。皆ニコニコ笑っているけど、ここに山野さんがいたら溜息をつかれていたかもしれなかった。ちなみに山野さんはあの後すぐに獅琉と潤歩がいるスタジオに直行したため、ここにはいない。移動車の中で見ているだろうか?
「今日はゲストに来てくれた亜利馬くんに色々質問をして、皆さんにもっと亜利馬くんのことを知ってもらおうと思ってるよ。──それじゃあ早速いってみよう!」
ジャン! とどこからともなくSEが鳴って、思わず体がビクついた。
「亜利馬くんがモデルになったきっかけ、これは?」
「えっと、渋谷でスカウトされました。面白そうだなって思って、高校卒業してすぐにコッチに出てきました」
「なるほど。初めての撮影はどうだった? やっぱり緊張した?」
「えーと……初めての撮影は先輩の潤歩さんと獅琉さんが相手役だったんですけど、もちろん緊張したけど二人がリードしてくれて安心してできました。スタッフさんも良い人達で、現場の雰囲気も良かったですよ」
そんなに昔のことじゃないのに、何だか懐かしい。潤歩のアレが受け入れられなかったこと、デートしたこと、獅琉が俺の初めての相手になったこと。今でもはっきりと思い出せる。
「亜利馬くんの先輩はみんなトップモデルさん達だもんね。そんな中で亜利馬くんもブレイズのメンバーになったわけだけど、今後はこういうモデルさんになりたい! っていう理想はあるのかな?」
「もちろん皆さんの役に立てるモデルにはなりたいですけど、それと同じくらい、皆さんに笑ってもらえるようなモデルになりたいです。……あ、『w』じゃなくてね。笑顔になって欲しいって意味ですからね」
「バドミントンの動画が凄く人気だったみたいってのは聞いてるよ。ああいうのを見て笑顔になった人もいるかもね」
インヘルちゃんがそう言って、俺に向かって何度か首を傾げた。頷いているらしい。
「許されるなら、絡みの映像以外も皆さんに見てもらえるといいなと思うんですけど……。俺の周り、本当に笑いが絶えないんです。先輩達の話も面白いし、いつも凄く和気あいあいとしてて……。それぞれ性格は全然違うのに、ブレイズの五人は兄弟みたいに仲が良いんです」
優しくてお世話好きな獅琉。ぶっきらぼうだけど情に厚い潤歩。兄貴肌で皆を引っ張ってくれる竜介。大人しいけど本当は人懐こくて可愛い大雅。
──四人とも、俺の大事な仲間だ。
「亜利馬くんは居場所を見つけたんだね」
「えっ……」
インヘルちゃんの言葉にハッとして、一瞬茫然としてしまった。
「ブレイズの皆もきっと、亜利馬くんのことが大好きだよ」
「………」
「という訳で、亜利馬くんの引退発表みたいな雰囲気になりましたが」
「な、なってませんっ。引退しないです! ……次の質問行ってくださいっ」
インヘルちゃんのフォローで何とか笑いの方向へ持っていくことが出来たものの、あと一言でもブレイズメンバーについて何か言われていたら危うく泣いてしまうところだった。
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