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亜利馬、デビューに感動
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午後八時。
竜介の家の裏庭にあるプールは想像していた長方形ではなく、扇形というのか──L字のカーブがもっと緩やかになった形をしていた。男五人が各々思い切りはしゃいでもぶつからないくらいには広く、夜空も見渡せる。プールサイドにはデッキチェアがあり、温かい円形のジャグジーもあり、やる気さえあればバーベキューもできるらしい。
家の中にはバーカウンターもあって、そのフロアから裏庭に出入りする仕様になっていた。ライトアップもされているし、まるでテレビで見たリゾートホテルのよう。元水泳部だという竜介が家を建てる時、「できたらプール付きで」と相談したらあれよあれよという間にこんなデザインになったそうだ。
「大雅、泳げるの?」
「……亜利馬よりは」
「へへ。俺、犬かきとカエル泳ぎしかできないんだ」
「ていうか、完璧この家で撮影できるよなぁ」
潤歩がバタ足で水飛沫を飛ばしながら言った。確かに竜介の家ならAVに限らず色んな撮影に使えそうだ。いいなぁ、と思う。毎日ここに通いたい。
「ピザ焼けたよ! ラザニアも作ったよ!」
「酒もあるぞ~」
獅琉と竜介がバーカウンターのガラス戸を開け、大きな皿や瓶の酒やグラスを手にプールサイドへ降りてきた。
「やった! 腹減った、飯! 飯! 飯!」
「……潤歩、水飛ぶから暴れないで」
「竜介さん、シロとクロは?」
「飯食って、毛布に包まって寝てたよ」
「猫は水嫌いだから、ここまで来ることはないですもんね」
「亜利馬はシロ達とじゃれたいんだろ。泊まってくなら、明日起きたときに可愛がってやってくれ」
ニッと笑って、俺は頭までプールに潜った。
ちなみに俺と大雅は水着代わりに、マーケットで買ったボクサーパンツを穿いている。水の中だと生地のまとわりつく感じがちょっと気になるけど、それも始めのうちだけだった。
「ああ、気持ちいい……」
潤歩はパンツでプールなんて御免だと言って、一人だけ竜介の水着を借りていた。プールの縁に寄りかかりグラスのシャンパンを飲みながら、満足げに夜空を仰いでいる。
「竜介はプール入らないの?」
獅琉が訊くと、竜介が頷いて笑った。
「俺はもてなす側。お前達が楽しんでくれればそれでいい」
その穏やかな笑顔、流石は兄貴って感じだ。横を見ると「寂しそうなツラすんなよ」と潤歩が大雅をからかい、顔面に水をかけられていた。
「獅琉も遠慮せず楽しんでくれ。料理ありがとうな」
「じゃあ、お言葉に甘えて!」
プールサイドで服を脱ぎ始めた獅琉に、何となく四人の視線が集まる。
「……ちょっ、ちょっと獅琉さん、パンツ!」
「おっ、潔いぞ獅琉。そこでストリップやれ!」
ブルーのライトに照らされた獅琉の体。筋肉の陰影が美しく、その微笑もいつもより妖しい。
「じゃーん!」
最後の一枚を脱ぎ捨て全裸になった獅琉が、「行くぞ!」と思い切りジャンプした。──水飛沫と歓声。ずぶ濡れで笑う獅琉と、俺達。
「亜利馬、デビューおめでとう!」
「んっ、ぐ……!」
獅琉に上半身を抱きしめられ、思い切りキスをされる。
「く、苦しっ……、てか、下、下っ、当たってます……!」
──全てが、きらきらと輝いていた。
竜介の家の裏庭にあるプールは想像していた長方形ではなく、扇形というのか──L字のカーブがもっと緩やかになった形をしていた。男五人が各々思い切りはしゃいでもぶつからないくらいには広く、夜空も見渡せる。プールサイドにはデッキチェアがあり、温かい円形のジャグジーもあり、やる気さえあればバーベキューもできるらしい。
家の中にはバーカウンターもあって、そのフロアから裏庭に出入りする仕様になっていた。ライトアップもされているし、まるでテレビで見たリゾートホテルのよう。元水泳部だという竜介が家を建てる時、「できたらプール付きで」と相談したらあれよあれよという間にこんなデザインになったそうだ。
「大雅、泳げるの?」
「……亜利馬よりは」
「へへ。俺、犬かきとカエル泳ぎしかできないんだ」
「ていうか、完璧この家で撮影できるよなぁ」
潤歩がバタ足で水飛沫を飛ばしながら言った。確かに竜介の家ならAVに限らず色んな撮影に使えそうだ。いいなぁ、と思う。毎日ここに通いたい。
「ピザ焼けたよ! ラザニアも作ったよ!」
「酒もあるぞ~」
獅琉と竜介がバーカウンターのガラス戸を開け、大きな皿や瓶の酒やグラスを手にプールサイドへ降りてきた。
「やった! 腹減った、飯! 飯! 飯!」
「……潤歩、水飛ぶから暴れないで」
「竜介さん、シロとクロは?」
「飯食って、毛布に包まって寝てたよ」
「猫は水嫌いだから、ここまで来ることはないですもんね」
「亜利馬はシロ達とじゃれたいんだろ。泊まってくなら、明日起きたときに可愛がってやってくれ」
ニッと笑って、俺は頭までプールに潜った。
ちなみに俺と大雅は水着代わりに、マーケットで買ったボクサーパンツを穿いている。水の中だと生地のまとわりつく感じがちょっと気になるけど、それも始めのうちだけだった。
「ああ、気持ちいい……」
潤歩はパンツでプールなんて御免だと言って、一人だけ竜介の水着を借りていた。プールの縁に寄りかかりグラスのシャンパンを飲みながら、満足げに夜空を仰いでいる。
「竜介はプール入らないの?」
獅琉が訊くと、竜介が頷いて笑った。
「俺はもてなす側。お前達が楽しんでくれればそれでいい」
その穏やかな笑顔、流石は兄貴って感じだ。横を見ると「寂しそうなツラすんなよ」と潤歩が大雅をからかい、顔面に水をかけられていた。
「獅琉も遠慮せず楽しんでくれ。料理ありがとうな」
「じゃあ、お言葉に甘えて!」
プールサイドで服を脱ぎ始めた獅琉に、何となく四人の視線が集まる。
「……ちょっ、ちょっと獅琉さん、パンツ!」
「おっ、潔いぞ獅琉。そこでストリップやれ!」
ブルーのライトに照らされた獅琉の体。筋肉の陰影が美しく、その微笑もいつもより妖しい。
「じゃーん!」
最後の一枚を脱ぎ捨て全裸になった獅琉が、「行くぞ!」と思い切りジャンプした。──水飛沫と歓声。ずぶ濡れで笑う獅琉と、俺達。
「亜利馬、デビューおめでとう!」
「んっ、ぐ……!」
獅琉に上半身を抱きしめられ、思い切りキスをされる。
「く、苦しっ……、てか、下、下っ、当たってます……!」
──全てが、きらきらと輝いていた。
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