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大雅、ちょっとだけ新人に心を開く
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「亜利馬ってさぁ」
「うん?」
「獅琉の部屋に住んでるんでしょ。撮影以外で獅琉とセックスしたの」
「えっ! す、するわけないじゃん! 何だよ急に……」
「ふうん。別に、ただ聞いただけ」
「いきなりそういうこと言われると、俺、鼻血出ちゃうから……」
……だけど、その辺の事情はよく分からない。AVモデル同士でプライベートのセックスってするモンなんだろうか。獅琉はスイッチが入ると止まらなくなると言っていたけれど、あれだけ仕事に対して真面目なら、プライベートでそういう遊びはしなさそうだし。潤歩とああいうことをしたのだって、俺の特訓という名目があったからだし。
「よ、っと」
フライ返しで生地をひっくり返し、裏面を焼く。いい匂いが広がるにつれて俺の腹も鳴り始めた。今日は午前中の撮影だったから、念のために朝飯を抜いてきたのだ。
「潤歩とは?」
「え……? さっきの話? 潤歩さんともしてないって」
「竜介とも?」
「竜介さんとは、まだ二人でちゃんと話したこともないよ。良い人そうってのは分かってるけど」
「ふうん……」
「何でそんなこと聞くの?」
別に。──予想通りの答えが返ってきたけれど、何か裏がありそうだ。だけどしつこくするのも躊躇われて、俺はホットケーキの焼け具合を見ながらそれ以上追及するのをやめた。
「はい、お待ちどー」
平らな皿に焼き立てのホットケーキを三段重ねにして、テーブルの上に置く。ほかほかの湯気が立つホットケーキの甘い香りに、大雅は目を丸くさせていた。
「美味しそう」
「初めての割には割と上手くいったよ。もちろん作り方見ながらだけどね」
「………」
「食べないの?」
「まだある?」
「まだまだあるよ。今日一日ずっと食べられるかも」
テーブルの前で大雅がそわそわしている。食べたそうにホットケーキをじっと見つめているくせに、なぜかフォークに手を伸ばそうとしない。
「大雅、どうし──」
言いかけたその時、玄関でインターホンが鳴った。パッと立ち上がった大雅が玄関へ行き、ドアを開けている。
「おお、美味そうな匂いだ!」
「あ、竜介さん。お疲れ様です」
入ってきたのは竜介だった。相変わらず見上げるほど背が高くて、ワイルドに髪を振り乱して、胸元のがっつり開いたシャツを着て──
「大雅にお呼ばれしてきたんだ。美味いホットケーキをご馳走してくれるんだろ、少年!」
「え、あ、はい。あんまり出来は良くないですけど、ぜひ!」
竜介の後からリビングに入ってきた大雅の顔は、若干赤くなっていた。──もしかして。
「それにしても、散らかった部屋だなぁ。先週一緒に掃除してやったのに、もう元通りじゃないか」
「……うるさい」
呟いた大雅の顔はやはり赤い。──ひょっとして。
「あの、二人とも座ってください。いっぱい焼いたしまだ焼けるので、好きなだけ食べてくださいね」
「ありがとう、少年。ホットケーキは俺の好物なんだ」
「あ、そうなんですね……」
俺の正面に座った大雅を盗み見ると、ハニーシロップのボトルを垂直で逆さまにして、ホットケーキの上へどぼどぼかけていた。もちろん顔は真っ赤だ。
「大雅、俺のと交換しよう。ハチミツあんまりかけると甘すぎて美味しくないよ」
「……うん」
どうやら俺は今日これからの時間、物凄く気を遣う羽目になりそうだぞ。
「うん?」
「獅琉の部屋に住んでるんでしょ。撮影以外で獅琉とセックスしたの」
「えっ! す、するわけないじゃん! 何だよ急に……」
「ふうん。別に、ただ聞いただけ」
「いきなりそういうこと言われると、俺、鼻血出ちゃうから……」
……だけど、その辺の事情はよく分からない。AVモデル同士でプライベートのセックスってするモンなんだろうか。獅琉はスイッチが入ると止まらなくなると言っていたけれど、あれだけ仕事に対して真面目なら、プライベートでそういう遊びはしなさそうだし。潤歩とああいうことをしたのだって、俺の特訓という名目があったからだし。
「よ、っと」
フライ返しで生地をひっくり返し、裏面を焼く。いい匂いが広がるにつれて俺の腹も鳴り始めた。今日は午前中の撮影だったから、念のために朝飯を抜いてきたのだ。
「潤歩とは?」
「え……? さっきの話? 潤歩さんともしてないって」
「竜介とも?」
「竜介さんとは、まだ二人でちゃんと話したこともないよ。良い人そうってのは分かってるけど」
「ふうん……」
「何でそんなこと聞くの?」
別に。──予想通りの答えが返ってきたけれど、何か裏がありそうだ。だけどしつこくするのも躊躇われて、俺はホットケーキの焼け具合を見ながらそれ以上追及するのをやめた。
「はい、お待ちどー」
平らな皿に焼き立てのホットケーキを三段重ねにして、テーブルの上に置く。ほかほかの湯気が立つホットケーキの甘い香りに、大雅は目を丸くさせていた。
「美味しそう」
「初めての割には割と上手くいったよ。もちろん作り方見ながらだけどね」
「………」
「食べないの?」
「まだある?」
「まだまだあるよ。今日一日ずっと食べられるかも」
テーブルの前で大雅がそわそわしている。食べたそうにホットケーキをじっと見つめているくせに、なぜかフォークに手を伸ばそうとしない。
「大雅、どうし──」
言いかけたその時、玄関でインターホンが鳴った。パッと立ち上がった大雅が玄関へ行き、ドアを開けている。
「おお、美味そうな匂いだ!」
「あ、竜介さん。お疲れ様です」
入ってきたのは竜介だった。相変わらず見上げるほど背が高くて、ワイルドに髪を振り乱して、胸元のがっつり開いたシャツを着て──
「大雅にお呼ばれしてきたんだ。美味いホットケーキをご馳走してくれるんだろ、少年!」
「え、あ、はい。あんまり出来は良くないですけど、ぜひ!」
竜介の後からリビングに入ってきた大雅の顔は、若干赤くなっていた。──もしかして。
「それにしても、散らかった部屋だなぁ。先週一緒に掃除してやったのに、もう元通りじゃないか」
「……うるさい」
呟いた大雅の顔はやはり赤い。──ひょっとして。
「あの、二人とも座ってください。いっぱい焼いたしまだ焼けるので、好きなだけ食べてくださいね」
「ありがとう、少年。ホットケーキは俺の好物なんだ」
「あ、そうなんですね……」
俺の正面に座った大雅を盗み見ると、ハニーシロップのボトルを垂直で逆さまにして、ホットケーキの上へどぼどぼかけていた。もちろん顔は真っ赤だ。
「大雅、俺のと交換しよう。ハチミツあんまりかけると甘すぎて美味しくないよ」
「……うん」
どうやら俺は今日これからの時間、物凄く気を遣う羽目になりそうだぞ。
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