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亜利馬、ようやく撮影終了
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翌日、午前十時半。
「どぅあぁぁッ──あっはっはッ、……やめ、っ、やめてえぇッ──!」
競泳用のゴーグルを付けたモデルさん三人に脇の下や足の裏をべロベロ舐められて、何度もNGを出した俺はまたもや口枷をされる羽目になった。
「昨日撮った画像、ちゃんと載ってるぞ」
「え……?」
『亜利馬・十八歳 五月一日最速デビュー!』
会議室で山野さんにノートパソコンを借りて見たら、インヘルのホームページのトップにでかでかと俺が載っていた。
「初々しさはインヘル史上ナンバーワン! 真っ赤になって頑張ってくれた亜利馬くんの雄姿をお楽しみに!」
「亜利馬くんのバージンショットが見られるのはデビュー作だけ……! 相手役には人気モデル・獅琉&潤歩が参戦ッ!」
開発ブログと称したスタッフさんのブログ記事には、木下さんに撮ってもらった俺の画像が何枚もアップされていた。
『亜利馬くん可愛いですね』『DVD買います』『獅琉が出てる時点で予約しました』『バージンでいきなり潤歩のデカマラ入るんかい(笑)』……
恥ずかしいような嬉しいようなコメントがたくさん付いている。この人達は俺よりずっと獅琉や潤歩のことを知っているんだと思うと、何だか不思議な気持ちになった。
『期待してます。頑張ってください』
「………」
こんな短いコメントにも凄く勇気付けられる。撮影が終われば後の編集には関われないけれど、みんなで力を合わせて一つの作品を完成させ、またそれを販売する店舗やホームページにお世話になって、ようやくそれを待つ人達の元へ届けられるのだ。
たくさんの人が関わっていて、たくさんの人が待っている。がっかりさせるような出来にしたくない。そのためには俺が頑張らないといけないんだ。足の指をしゃぶられて爆笑してる場合じゃないんだ。
「すいません。初日も今日も、NG出しちゃって……頑張らないと駄目だって、分かってるのに」
しゅんとなって謝ると、山野さんが眼鏡のブリッジを持ち上げて不敵に笑った。
「気にしなくていい。全て想定内だ」
「そうなんですか?」
「今までどれだけのモデルを撮ってきたと思っている」
「そ、そっか……やらかしてるの、俺だけじゃないんだ。ちょっと安心……」
胸を撫で下ろしたその時、会議室のドアが開いて大雅が入ってきた。
「おはようございます。撮影、一時からでしたっけ」
「お前の撮影は明日だ。壁にカレンダーを貼れって言っただろ」
「あー……また間違えた」
山野さんが溜息をついて、苦笑する。
「大雅のデビュー時は亜利馬より酷かったな。台詞は覚えないし喘ぎ声の一つも出さないし、何されても無表情で……不感症なのかと思ったくらいだ」
「そ、そうなの大雅?」
「……だって、気持ち良くなかったし」
「そういう訳だから、亜利馬は気にしなくていい。明日は休みだから今日はもう帰ってゆっくり休め」
山野さんがパソコンを閉じて会議室を出て行き、俺はふらふらと眠そうにしている大雅に顔を向けて言った。
「なあ。大雅も今日休みなら、良かったら一緒に飯でも食わない?」
「めし……」
「大雅、何が食べたい? 洗浄のやり方教えてくれたお礼に奢るよ」
うーん、と大雅が首を傾げる。考えている時も無表情だ。
「ホットケーキ」
「え? そんなのでいいの?」
「亜利馬が作って。俺の部屋で」
「えっ、そんなの俺作ったことないよ!」
「いいから」
さっさと会議室を出て行ってしまう大雅。
仕方なく俺はその後を追いかけ、スマホで「美味しいホットケーキの作り方」を検索した。
「どぅあぁぁッ──あっはっはッ、……やめ、っ、やめてえぇッ──!」
競泳用のゴーグルを付けたモデルさん三人に脇の下や足の裏をべロベロ舐められて、何度もNGを出した俺はまたもや口枷をされる羽目になった。
「昨日撮った画像、ちゃんと載ってるぞ」
「え……?」
『亜利馬・十八歳 五月一日最速デビュー!』
会議室で山野さんにノートパソコンを借りて見たら、インヘルのホームページのトップにでかでかと俺が載っていた。
「初々しさはインヘル史上ナンバーワン! 真っ赤になって頑張ってくれた亜利馬くんの雄姿をお楽しみに!」
「亜利馬くんのバージンショットが見られるのはデビュー作だけ……! 相手役には人気モデル・獅琉&潤歩が参戦ッ!」
開発ブログと称したスタッフさんのブログ記事には、木下さんに撮ってもらった俺の画像が何枚もアップされていた。
『亜利馬くん可愛いですね』『DVD買います』『獅琉が出てる時点で予約しました』『バージンでいきなり潤歩のデカマラ入るんかい(笑)』……
恥ずかしいような嬉しいようなコメントがたくさん付いている。この人達は俺よりずっと獅琉や潤歩のことを知っているんだと思うと、何だか不思議な気持ちになった。
『期待してます。頑張ってください』
「………」
こんな短いコメントにも凄く勇気付けられる。撮影が終われば後の編集には関われないけれど、みんなで力を合わせて一つの作品を完成させ、またそれを販売する店舗やホームページにお世話になって、ようやくそれを待つ人達の元へ届けられるのだ。
たくさんの人が関わっていて、たくさんの人が待っている。がっかりさせるような出来にしたくない。そのためには俺が頑張らないといけないんだ。足の指をしゃぶられて爆笑してる場合じゃないんだ。
「すいません。初日も今日も、NG出しちゃって……頑張らないと駄目だって、分かってるのに」
しゅんとなって謝ると、山野さんが眼鏡のブリッジを持ち上げて不敵に笑った。
「気にしなくていい。全て想定内だ」
「そうなんですか?」
「今までどれだけのモデルを撮ってきたと思っている」
「そ、そっか……やらかしてるの、俺だけじゃないんだ。ちょっと安心……」
胸を撫で下ろしたその時、会議室のドアが開いて大雅が入ってきた。
「おはようございます。撮影、一時からでしたっけ」
「お前の撮影は明日だ。壁にカレンダーを貼れって言っただろ」
「あー……また間違えた」
山野さんが溜息をついて、苦笑する。
「大雅のデビュー時は亜利馬より酷かったな。台詞は覚えないし喘ぎ声の一つも出さないし、何されても無表情で……不感症なのかと思ったくらいだ」
「そ、そうなの大雅?」
「……だって、気持ち良くなかったし」
「そういう訳だから、亜利馬は気にしなくていい。明日は休みだから今日はもう帰ってゆっくり休め」
山野さんがパソコンを閉じて会議室を出て行き、俺はふらふらと眠そうにしている大雅に顔を向けて言った。
「なあ。大雅も今日休みなら、良かったら一緒に飯でも食わない?」
「めし……」
「大雅、何が食べたい? 洗浄のやり方教えてくれたお礼に奢るよ」
うーん、と大雅が首を傾げる。考えている時も無表情だ。
「ホットケーキ」
「え? そんなのでいいの?」
「亜利馬が作って。俺の部屋で」
「えっ、そんなの俺作ったことないよ!」
「いいから」
さっさと会議室を出て行ってしまう大雅。
仕方なく俺はその後を追いかけ、スマホで「美味しいホットケーキの作り方」を検索した。
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