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亜利馬、ようやく撮影終了
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シャワーを浴び終わって着替えてからまたビルに移動して、今度は俺のジャケット撮影だ。獅琉と潤歩はここで解散となり、給料をもらってからすっきりした顔でそれぞれ自分の部屋へと戻って行った。
「拘束とノーマルと二パターンで行くぞ」
まずは普通の俺をということで、スタイリストさんが用意していた服に着替える。獅琉のようなスーツかと思ったけれど至って普通のラフな格好で、普段俺が着ているのとあまり変わらない。サーフっぽいブルーの半袖シャツに中は黒のタンクトップ、下は弛めのジーンズ。
「新人は自然で爽やかなイメージが大事だからな」と、山野さんは言っていたけれど……普段と変わらな過ぎて野暮ったくならないかと不安になる。
「亜利馬くん、ヘアメするからそこ座ってね」
ドレッサーの前に座ってユージさんにドライヤーをあてられながら、ここにきてようやく「デビューするんだ」という実感がわいてきた。
「髪、柔らかいねぇ。アシメなのはいつからやってるの?」
「え、髪型ですか? ……高一の時に、『一番流行ってるやつにしてください』って、美容師やってた友達のお兄ちゃんに切ってもらって……」
「可愛いエピソードだなぁ。僕がそのお兄ちゃんだったらその場で襲ってるよ」
「ええぇ……ていうかユージさんは普段、美容師さんなんですか?」
「美容師もやってたけど、今はヘアメイクの仕事一本でやってるよ。前はホストクラブとかキャバクラとかと契約してたんだけど、インヘルさんに来てからはこっちでずっとやってるんだ。僕もゲイだし、可愛い子もカッコいい子も見れるから楽しいしね」
「ユージさんもカッコいいじゃないですか。モデルになればいいのに」
「昔一本だけ出たことあるけど、髪の毛いじる仕事の方が好きだからさ」
話しているうちにヘアセットが終わり、俺はユージさんにお礼を言ってから山野さんの元へ行った。
「よし、そこに立て」
背景がグリーンのスクリーンになっている撮影セット。テレビや雑誌で見たことのある、プロのモデルさんとか芸能人が撮影する時のアレだ。そこに俺が立つ日が来るなんて。
ぎこちなく立って背筋を伸ばすと、眩しいくらいの照明が俺に向けられた。
ベテランぽい中年のフォトグラファーさんが「木下です、よろしくね」と俺に笑う。
「よ、よろしくお願いします!」
「まずは正面から普通に撮ってくね。自然に笑ってね」
木下さんは撮るたびに「真顔で」とか「目線を右に外して」とか、細かく指示をしてくれた。
「次は、シャツを肩まで抜いてくれるかな?」
「は、はい」
そんな調子で時間をかけて何枚も何十枚も写真を撮られ、今度はベッドに寝た状態で手首を拘束され、俺の上をまたいで立った木下さんに真上からまた何十枚も撮られた。
「乳首出して」
「はい」
アシスタントさんがせっせと木下さんの要望に応え、縛られて動けない俺に代わって服をあれこれといじる。本番撮影とは別で「真剣にエロいことをされる」というのは、何だか変な気分だった。
「亜利馬くん、ちょっとエッチな顔できるかな」
「ど、どうすれば……」
「まだ難しいかな。えっとね、じゃあ泣きそうな顔、悲しい顔でもいいよ」
俺は頭の中で懸命に悲しい話を思い出し、唇を噛んで眉根を寄せた。
「いいね。可愛い」
本当だろうか。情けない顔になっていないだろうか。
「拘束とノーマルと二パターンで行くぞ」
まずは普通の俺をということで、スタイリストさんが用意していた服に着替える。獅琉のようなスーツかと思ったけれど至って普通のラフな格好で、普段俺が着ているのとあまり変わらない。サーフっぽいブルーの半袖シャツに中は黒のタンクトップ、下は弛めのジーンズ。
「新人は自然で爽やかなイメージが大事だからな」と、山野さんは言っていたけれど……普段と変わらな過ぎて野暮ったくならないかと不安になる。
「亜利馬くん、ヘアメするからそこ座ってね」
ドレッサーの前に座ってユージさんにドライヤーをあてられながら、ここにきてようやく「デビューするんだ」という実感がわいてきた。
「髪、柔らかいねぇ。アシメなのはいつからやってるの?」
「え、髪型ですか? ……高一の時に、『一番流行ってるやつにしてください』って、美容師やってた友達のお兄ちゃんに切ってもらって……」
「可愛いエピソードだなぁ。僕がそのお兄ちゃんだったらその場で襲ってるよ」
「ええぇ……ていうかユージさんは普段、美容師さんなんですか?」
「美容師もやってたけど、今はヘアメイクの仕事一本でやってるよ。前はホストクラブとかキャバクラとかと契約してたんだけど、インヘルさんに来てからはこっちでずっとやってるんだ。僕もゲイだし、可愛い子もカッコいい子も見れるから楽しいしね」
「ユージさんもカッコいいじゃないですか。モデルになればいいのに」
「昔一本だけ出たことあるけど、髪の毛いじる仕事の方が好きだからさ」
話しているうちにヘアセットが終わり、俺はユージさんにお礼を言ってから山野さんの元へ行った。
「よし、そこに立て」
背景がグリーンのスクリーンになっている撮影セット。テレビや雑誌で見たことのある、プロのモデルさんとか芸能人が撮影する時のアレだ。そこに俺が立つ日が来るなんて。
ぎこちなく立って背筋を伸ばすと、眩しいくらいの照明が俺に向けられた。
ベテランぽい中年のフォトグラファーさんが「木下です、よろしくね」と俺に笑う。
「よ、よろしくお願いします!」
「まずは正面から普通に撮ってくね。自然に笑ってね」
木下さんは撮るたびに「真顔で」とか「目線を右に外して」とか、細かく指示をしてくれた。
「次は、シャツを肩まで抜いてくれるかな?」
「は、はい」
そんな調子で時間をかけて何枚も何十枚も写真を撮られ、今度はベッドに寝た状態で手首を拘束され、俺の上をまたいで立った木下さんに真上からまた何十枚も撮られた。
「乳首出して」
「はい」
アシスタントさんがせっせと木下さんの要望に応え、縛られて動けない俺に代わって服をあれこれといじる。本番撮影とは別で「真剣にエロいことをされる」というのは、何だか変な気分だった。
「亜利馬くん、ちょっとエッチな顔できるかな」
「ど、どうすれば……」
「まだ難しいかな。えっとね、じゃあ泣きそうな顔、悲しい顔でもいいよ」
俺は頭の中で懸命に悲しい話を思い出し、唇を噛んで眉根を寄せた。
「いいね。可愛い」
本当だろうか。情けない顔になっていないだろうか。
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