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潤歩、彼氏モード発動
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移動用ワゴン車の中で、再びカメラが向けられる。
「どう? 亜利馬くん、緊張溶けた?」
「だいぶ大丈夫です。潤歩さんが自然とリードしてくれたし」
「何だよ、俺の話?」
「いえ、してません。入って来なくても大丈夫です」
「何だお前、鼻血小僧のくせに」
他愛のない会話を撮られつつ公園に着いて、今度はベンチに座った状態からのスタートとなった。
そういう穴場を選んだのか、元々都会の人は公園なんて来ないのか。とにかくベンチから見渡せる所には俺達以外に誰もいない。山野さんが「今のうちに撮ってしまおう」と言って、到着後早々に撮影が開始された。
「亜利馬。どうだった初デートは」
いきなり潤歩に切り出されて驚いたが、俺はベンチにもたれながらそれに答えた。
「楽しかったですよ。綿あめも美味しかったし」
「ちょっと甘すぎたな」
「潤歩さんて、今までデートの時どういう所に行ってたんですか?」
「気分によるな。クラブとか行く時もあるし、映画とかも行ってたし」
でも、とほんの少しだけ間を置いて、潤歩が言った。
「一番特別な奴とは、こういう何もない公園で座ってるだけの方が楽しい」
「えっ」
「時間がゆっくり過ぎてくだろ。長い時間一緒にいられるような感じが好きだ」
「……何か、らしくないですね」
真顔で言うと、潤歩が顔を真っ赤にさせて俺の頭を叩いた。
「いてっ! な、何すんですか」
「ムードを作れ、ガキが!」
「あ、そ、……そうか」
恐らく今のシーンはカットだ。
俺は一つ大きく息をつき、「潤歩の後輩彼氏」という自分を頭に再度インプットさせた。
「でも潤歩さんって、アレですよね。ほんと、その……イケメンですよね」
「……やめろ、その棒読み」
言われて苦笑し、視線を潤歩から自分の足元へと移動させる。
「……でも本当に、始めはめちゃくちゃ怖い人だって思ってたけど、実は面倒見が良いっていうか。初めての一人での撮影の時も、潤歩さんが俺に助言してくれたから何となく落ち着けたし……。俺、まだ新人で全然どうなるか分からないけど。『ブレイズ』に選ばれた理由も全然分からないですけど、……潤歩さんのお陰で、頑張れると思います」
「ああ。頑張れよ亜利馬」
くしゃくしゃと頭を撫でられ、不覚にも心地好さにぼんやりしてしまう。
潤歩の手が俺の頭から離れ、そのまま肩へと移動し軽く抱き寄せられた。……至近距離で繋がる視線に、鼓動がほんの少し速まる。
潤歩の鋭い眼、それからピアスの光る唇が、ゆっくりと笑う形に細くなった。そういえば、これは……
「───」
これは俺にとって、初めてのキスだ。
恥ずかしくて強く目を閉じてしまったが、二秒、三秒──五秒経っても、潤歩が唇を離す気配はない。次第に不安になってきた。大丈夫だろうか? 誰かに見られていないだろうか。
「………」
それにしてもこの距離になって初めて気付いたけど、潤歩って人より体温が高い気がする。肩に置かれた手も、触れたままの唇も、何だか動物みたいな温かさだ。子供の頃に飼っていた犬が俺の腹の上でよく寝ていたけど、肩の手からはそれと同じ温かみを感じた。
そんなことを考えていたら、ようやく唇が離れて俺も目を開けることができた。
「顔赤いぜ、亜利馬」
「……そっちだって」
しばらくそのまま見つめ合い、やがて「オッケーです!」の声と共にカメラが止まった。
「どう? 亜利馬くん、緊張溶けた?」
「だいぶ大丈夫です。潤歩さんが自然とリードしてくれたし」
「何だよ、俺の話?」
「いえ、してません。入って来なくても大丈夫です」
「何だお前、鼻血小僧のくせに」
他愛のない会話を撮られつつ公園に着いて、今度はベンチに座った状態からのスタートとなった。
そういう穴場を選んだのか、元々都会の人は公園なんて来ないのか。とにかくベンチから見渡せる所には俺達以外に誰もいない。山野さんが「今のうちに撮ってしまおう」と言って、到着後早々に撮影が開始された。
「亜利馬。どうだった初デートは」
いきなり潤歩に切り出されて驚いたが、俺はベンチにもたれながらそれに答えた。
「楽しかったですよ。綿あめも美味しかったし」
「ちょっと甘すぎたな」
「潤歩さんて、今までデートの時どういう所に行ってたんですか?」
「気分によるな。クラブとか行く時もあるし、映画とかも行ってたし」
でも、とほんの少しだけ間を置いて、潤歩が言った。
「一番特別な奴とは、こういう何もない公園で座ってるだけの方が楽しい」
「えっ」
「時間がゆっくり過ぎてくだろ。長い時間一緒にいられるような感じが好きだ」
「……何か、らしくないですね」
真顔で言うと、潤歩が顔を真っ赤にさせて俺の頭を叩いた。
「いてっ! な、何すんですか」
「ムードを作れ、ガキが!」
「あ、そ、……そうか」
恐らく今のシーンはカットだ。
俺は一つ大きく息をつき、「潤歩の後輩彼氏」という自分を頭に再度インプットさせた。
「でも潤歩さんって、アレですよね。ほんと、その……イケメンですよね」
「……やめろ、その棒読み」
言われて苦笑し、視線を潤歩から自分の足元へと移動させる。
「……でも本当に、始めはめちゃくちゃ怖い人だって思ってたけど、実は面倒見が良いっていうか。初めての一人での撮影の時も、潤歩さんが俺に助言してくれたから何となく落ち着けたし……。俺、まだ新人で全然どうなるか分からないけど。『ブレイズ』に選ばれた理由も全然分からないですけど、……潤歩さんのお陰で、頑張れると思います」
「ああ。頑張れよ亜利馬」
くしゃくしゃと頭を撫でられ、不覚にも心地好さにぼんやりしてしまう。
潤歩の手が俺の頭から離れ、そのまま肩へと移動し軽く抱き寄せられた。……至近距離で繋がる視線に、鼓動がほんの少し速まる。
潤歩の鋭い眼、それからピアスの光る唇が、ゆっくりと笑う形に細くなった。そういえば、これは……
「───」
これは俺にとって、初めてのキスだ。
恥ずかしくて強く目を閉じてしまったが、二秒、三秒──五秒経っても、潤歩が唇を離す気配はない。次第に不安になってきた。大丈夫だろうか? 誰かに見られていないだろうか。
「………」
それにしてもこの距離になって初めて気付いたけど、潤歩って人より体温が高い気がする。肩に置かれた手も、触れたままの唇も、何だか動物みたいな温かさだ。子供の頃に飼っていた犬が俺の腹の上でよく寝ていたけど、肩の手からはそれと同じ温かみを感じた。
そんなことを考えていたら、ようやく唇が離れて俺も目を開けることができた。
「顔赤いぜ、亜利馬」
「……そっちだって」
しばらくそのまま見つめ合い、やがて「オッケーです!」の声と共にカメラが止まった。
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