COALESCE!

狗嵜ネムリ

文字の大きさ
上 下
22 / 111
獅琉、スイッチオン

しおりを挟む
「ふあぁ、気持ち良かった!」
「……クッソだるい。何で俺こいつの部屋で無駄イキしてんだ……」
 艶々と湿った肌をタオルで拭う獅琉と、ベッドに倒れて溜息をつく潤歩。俺はティッシュで手と鼻を拭いてから、未だ熱くなったままの股間を見下ろした。何度確認しても同じだ。男同士の絡みを見て勃起してしまった事実が、今ここに存在している。
「だらしないな潤歩。セックスしたわけでもないのに……体力落ちたんじゃない?」
「うるっせえ、この性欲化け物。……こちとらジム帰りなんだよ馬鹿野郎」
 息切れしている潤歩に対して、獅琉はもうけろっとしている状態だ。一ミリも体力消耗していない俺だってまだ心臓が高鳴っているのに──これはまた別の問題か。
「でも亜利馬、そこまで鼻血出なかったね」
「そ、そういえば。でも風呂場で一度、結構な量が出たので……。昨日の分も合わせれば、もう残ってないのかな?」
「そういうシステムなの?」
 よく分からないけど、確かに俺にしては少なく済んだ方だ。未だかつてないほどの壮絶な現場を目にしたというのに、出たのはティッシュ二枚で収まる量だけ。もちろん興奮したしドキドキもしたけれど、風呂場で獅琉の全裸を見た時の方がずっと衝撃的だった、……ような気もする。
「もしかしたら、サプライズ的なものに弱いのかもね。流れがあったり心の準備が万端にできてれば、多少は違うのかも」
「サプライズ、ですか……」
「うん。例えばいきなりエロい話されたりとか、いきなり裸見たりとか、そういう時。予想してなかった分、急に血が上っちゃうのかも」
 確かに獅琉の言っていることは一理ある。ついさっき潤歩に羽交い絞めにされた状態で獅琉の裸を見た時も、頭は沸騰したけど鼻血は出なかった。
 それに、昨日オナニー撮影をした時も。あれだけの妄想をして直に刺激を与えていたにも関わらず、今と同じくらいの少量の出血しかしなかったし。
「お前ってさぁ」
 潤歩がベッドに寝そべりながら軽蔑したような視線を俺に寄越し、言った。
「究極のムッツリスケベって感じだな。童貞だから仕方ないだろうけど」
「し、失礼なことをっ……」
「仕事でエッチなことに慣れれば、そのうち鼻血も出なくなるよ。それにしても良かったよね。仕事での撮影なら心の準備する時間もあるし、一応ストーリーとかの流れもあるから、自然と本番に移れそう」
 獅琉が俺の頭を撫でて笑う。
 その理屈が本当に合っているのかはまだ分からないけれど、ともあれ少しだけ安心した。AVモデルが鼻血出しながら撮影なんて、それこそマニアックな層にしか受けないだろう。
「……ありがとうございました。俺のこと鍛えてくれようとして、こんなことまで……」
「いいよ別に。最初はそのつもりだったけど、途中から自分が気持ち良くなるの優先してたし」
「でも獅琉さん、凄く綺麗でした」
「ほんと? やっぱ本能のまま行動してる時の人間って、良くも悪くも魅力的なのかもね」
「潤歩さんはノックダウンしてますけど」
 見れば潤歩はベッドの上で大いびきをかいていた。射精すると眠くなるのは俺にもよく分かる。疲れていた時なら尚更だ。
「俺は全然眠くないよ。むしろこれから騒ぎたいって感じ。撮影の後もそうなんだけど、何か射精すると妙にテンション上がっちゃうんだよね」
「へえ。珍しいですね」
「続けて何回でもできるし。デビューしたての頃にメインで出たVブイでさ、一日の撮影でニ十回くらいイッたことあるよ。もちろん休憩は挟んでたけど」
「ええぇっ! に、ニ十回……。凄い痛くなりそう」
「潤歩とか竜介からは『性欲魔獣』とか『テクノブレイカー予備軍』とか言われるけど、俺昔からそうなんだよね。多淫症ってわけでもないし自分でも何故か分からないんだけど、スイッチ入ると幾らでもできちゃうんだ」
 照れ臭そうに笑って、獅琉が言った。
「ほんと、AVやるために産まれたのかもね」
 その笑顔は少し、ほんの少しだけ、……寂しそうだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...