COALESCE!

狗嵜ネムリ

文字の大きさ
上 下
6 / 111
亜利馬、AVモデルになる

しおりを挟む
「潤歩。彼はウチの新人の亜利馬だよ。俺達と同じグループになるから仲良くしてやってよ」
「新人だ? こいつが?」
 潤歩が俺を指さして言った。その腕にはブレスレットやらストーンやらがじゃらじゃらと付いていて、爪には黒いマニキュアが塗られている。ウルフというより悪魔みたいな男だ。
「クソチビのガキじゃねえかよ。レーベル間違えてんじゃねえの」
 物凄い言われようにムッとなったが、残念ながら俺には、こんな怖そうな男に口答えできるほどの度胸はない。仕方なく黙ったまま俯くと、獅琉がこの悪魔──潤歩の肩を叩いて「まあまあ」と宥めてくれた。
「亜利馬は確かに『ボーイズ』向けって感じだけど、岡崎さんがスカウトした子だから間違いないと思うよ。大雅たいがだって始めはどうなるかと思ったけど、ちゃんとメインのレーベルで頑張ってるじゃん」
「大雅はもっと大人っぽかっただろうが。第一印象もこんなガキじゃなかった」
「とにかく契約もしたし、決定事項だから文句は駄目だよ。それに、山野さんだって納得してたんだからさ」
「……クソが」
 言い返せなくなった潤歩が俺を睨み、吐き捨てるように言った。
「一発目に俺と絡ませろよ。二度とメインに出ようなんて思わなくさせてやる」
「それは会社が決めることでしょ」
 獅琉が良い人だった分、潤歩の怖さが余計に際立ってしまう。俺は体の前で両手を組み、教師やバイト先の店長に叱られているような気持ちになってひたすら俯いていた。とにかく無言でやり過ごすしかないと思ったからだ。
 ……だけど、メインとかレーベルとかって、一体何だろう。ひょっとしたら同じグループでも弟分的な立ち位置のものとか、そういうのがあるんだろうか。確かに獅琉と潤歩を見る限りだと、俺よりも少し年上のお兄さん系というジャンルに属しそうだ。この二人と比べたら俺はガキっぽいし田舎っぽいし、決して同じ毛色ではないかもしれない。
 潤歩が怒るのも当たり前なのかな。

「………」
「ほら、亜利馬が黙っちゃったよ。潤歩言い過ぎ。謝ってあげなよ」
「ざけんな。おいガキ、お前この業界初めてなんだろ。何でまたやろうなんて気になった」
 潤歩に質問──というか詰問されて、俺は縮こまったまま呟いた。
「……子供の頃から、憧れてたからです」
「はぁ?」
「ずっと俺も、……才能なんてないけど、やってみたいって思ってて。大変なこと沢山あると思うけど、簡単な気持ちでやろうと思ったわけじゃありません。俺は俺なりに考えて、親とも相談して、絶対に頑張るって決めて、上京してきました」
「………」
 獅琉と潤歩が茫然と俺を見ている。二人とも口が開いていた。
「頑張ります。何もかも初めてだから、上手くできるか不安ですけど……。皆さんの足を引っ張らないように努力します。なので一緒にやらせてください。何でもします……お願いしますっ!」
 二人に向かって勢いよく頭を下げ、きつく目を瞑る。精一杯の気持ちをぶつけたつもりだった。すると──
 ふいに、「ぷっ」と獅琉が噴き出して笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...