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亜利馬、AVモデルになる
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そうして四月十日。あの番号だけを頼りに再び、今度はたった一人で渋谷駅に降り立ったのだ。
Inhell Co Ltd. ──株式会社インヘル。
電話で教えてもらったビルの五階、表札には確かにその名前がある。緊張しながら事務所のインターホンを鳴らすと、中から出てきたのは俺に声をかけてきたあの男──岡崎雄二さんだった。
「連絡ありがとう、待ってたよ!」
綺麗なオフィス。白い壁に天井で回るファン、パソコンが並んだデスク、あちこちで鳴る電話、忙しそうに動く人達。芸能事務所ってこんな感じなんだろうか。
「こっちで話そう。ついて来てくれるかな」
オフィスから出てきた岡崎さんが、隣の部屋のドアを開ける。そこは長い机と椅子が並んだ会議室みたいな広い部屋だった。
そこで俺は岡崎さんから仕事内容についての説明をされた。
イメージビデオ撮影。雑誌撮影。テレビ出演。写真集、DVDの販売。動画チャンネル開設。イベントでのファン交流など。全部俺がやるわけではないが、人気が出れば色々なことに挑戦できると岡崎さんは言う。
「若ければ若いうちに始めた方が人気も出やすいからね。不安なこととか悩みとかあれば、全然相談してくれればいつでも聞けるし。仲間もいるから楽しいよ」
「仲間ですか?」
「うん。君に入ってもらいたいグループがあるんだ」
「そ、そんな、いきなり?」
「実はそれ前提で君をスカウトしたんだよ。全部で五人、あと一人足りなくてね」
嬉しい話ではあるけれど、何だか話が上手すぎるような。馬鹿な俺でも流石に思った。
「だって、こういうのって、普通はオーディションがあるんじゃ……」
「大丈夫。君はそのルックスだけで採用だよ。すごくカッコいい。男前だし、今風の可愛さもあるっていうか、人気出ると思うよ」
べた褒めされて何だかむず痒くなったが、結局、俺は納得し契約書にサインしてしまった。
「それじゃあ、君が加入するグループのメンバーを紹介するね。連れてくるから、少しだけ待っててね」
会議室に残された俺はテーブルの上に身を伏せて、妙なテンションに騒ぎ出したくなるのを唇を噛んで耐えた。
上京していきなりアイドルグループに加入だなんて、そんなことってあるんだろうか。もちろんドームや武道館が埋まるくらいの超人気アイドルになれるかどうかの保証なんてないけれど、それでも地元でくすぶっているよりはずっといい。
華やかなデビュー。辛いこともあるだろうけど、きっとそれ以上に素晴らしいものに違いない。俺は自分のこれからの人生が楽しみで仕方なかった。
それから約数分後、唐突に会議室のドアがノックされた。ハッとして上体を起こした俺が椅子から立ち上がるより前にドアが開き、入ってきたのは──
「あ……」
「こんにちは。新人の子だね、よろしく」
入ってきたのは、王子様だった。
Inhell Co Ltd. ──株式会社インヘル。
電話で教えてもらったビルの五階、表札には確かにその名前がある。緊張しながら事務所のインターホンを鳴らすと、中から出てきたのは俺に声をかけてきたあの男──岡崎雄二さんだった。
「連絡ありがとう、待ってたよ!」
綺麗なオフィス。白い壁に天井で回るファン、パソコンが並んだデスク、あちこちで鳴る電話、忙しそうに動く人達。芸能事務所ってこんな感じなんだろうか。
「こっちで話そう。ついて来てくれるかな」
オフィスから出てきた岡崎さんが、隣の部屋のドアを開ける。そこは長い机と椅子が並んだ会議室みたいな広い部屋だった。
そこで俺は岡崎さんから仕事内容についての説明をされた。
イメージビデオ撮影。雑誌撮影。テレビ出演。写真集、DVDの販売。動画チャンネル開設。イベントでのファン交流など。全部俺がやるわけではないが、人気が出れば色々なことに挑戦できると岡崎さんは言う。
「若ければ若いうちに始めた方が人気も出やすいからね。不安なこととか悩みとかあれば、全然相談してくれればいつでも聞けるし。仲間もいるから楽しいよ」
「仲間ですか?」
「うん。君に入ってもらいたいグループがあるんだ」
「そ、そんな、いきなり?」
「実はそれ前提で君をスカウトしたんだよ。全部で五人、あと一人足りなくてね」
嬉しい話ではあるけれど、何だか話が上手すぎるような。馬鹿な俺でも流石に思った。
「だって、こういうのって、普通はオーディションがあるんじゃ……」
「大丈夫。君はそのルックスだけで採用だよ。すごくカッコいい。男前だし、今風の可愛さもあるっていうか、人気出ると思うよ」
べた褒めされて何だかむず痒くなったが、結局、俺は納得し契約書にサインしてしまった。
「それじゃあ、君が加入するグループのメンバーを紹介するね。連れてくるから、少しだけ待っててね」
会議室に残された俺はテーブルの上に身を伏せて、妙なテンションに騒ぎ出したくなるのを唇を噛んで耐えた。
上京していきなりアイドルグループに加入だなんて、そんなことってあるんだろうか。もちろんドームや武道館が埋まるくらいの超人気アイドルになれるかどうかの保証なんてないけれど、それでも地元でくすぶっているよりはずっといい。
華やかなデビュー。辛いこともあるだろうけど、きっとそれ以上に素晴らしいものに違いない。俺は自分のこれからの人生が楽しみで仕方なかった。
それから約数分後、唐突に会議室のドアがノックされた。ハッとして上体を起こした俺が椅子から立ち上がるより前にドアが開き、入ってきたのは──
「あ……」
「こんにちは。新人の子だね、よろしく」
入ってきたのは、王子様だった。
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