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#5 エロス&インテリジェンス
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「今回は被害者も少ないだろうけど、他のユーザーの為にも攻略サイトを作ってあげたらいいんじゃない?」
面倒だけど、真相を知っている俺にしかできないことだ。これ以上の被害者を出さないようにゲームそのものを抹消したいけれど、サバラ曰くそれは時間の問題らしい。悪徳業者と同じように、目的の物を回収できるだけしたらさっさと姿を消すからだそうだ。
「だけどいきなりトンズラされたら、クリアできなかった被害者の視力は戻らないんじゃないのか?」
「ゲームにかかってる呪いがどの程度か分からないけど……。多分、今回のは向こうも遊び心でやってることだと思うからそれはないんじゃないかな。救済処置として、呪いを解除したゲームだけポツンと残るのかもね。とにかくクリアできればいいんだよ」
「奪った視力も結果的に全部元に戻されるなら、ますます何のためにやってるんだか」
「試作段階のテストみたいなモンなんじゃないかな。炎樽くん含め運悪く波長が合ってゲームを見つけちゃった人間が、勝手にテストプレイヤーにされてるんだよ」
めちゃくちゃ迷惑な話だ。俺にはたまたまマカロやサバラのような味方がいたから対処できたけど、一般のプレイヤーは恐らく原因も知らずに泣き寝入りするしかないじゃないか。
「……攻略サイト作って、絶対に全プレイヤーの呪いを解いてやる」
決意を固めたその時、四時限目終了のチャイムが鳴った。
「……昼休みだね。結界を張ったらマカロの防御魔力も発動しなくなっちゃうけど、どうする?」
どこか楽しそうにサバラが言って、俺は眉間に皺を寄せながらしぶしぶ眼鏡をかけた。
「マカ、他の生徒が来るかもしれないからどこか別の場所に移動しよう」
「んー、あとちょっとだけ……」
うつ伏せになってゲームをやりながら、短い足をぶらつかせるマカロ。取り敢えずベッドに散らばったお菓子の残骸を片付けてからもう一度声をかけると、再び「あとちょっとだから」と言われた。俺のためにやってくれていることは分かっているが、いつ生徒が来るとも限らない。子供にゲームを止めさせたい親の気分だ。
「そんな恰好で転がってゲームしてたら風邪ひくぞ」
「おれ、服着てるよ」
「あ、そうか……。もう、面倒臭せぇ眼鏡だな!」
ゲームを操作し続けるマカロを抱えて、保健室のドアからそっと廊下へ出る。昼休みのくだけた風景の中で生徒は全員全裸だけど、ここが一年校舎だからか、近くに三年生はいないみたいだ。
今では魔力を消費しすぎて、マカロは子供どころかぬいぐるみのようなサイズになっている。その小さな手でのゲーム操作は相当大変そうだが、万が一誰かに見られてもこうして抱えていれば、キャラクターのぬいぐるみと思ってもらえるかもしれない。
「ほたる、揺らさないで」
「ご、ごめん」
愛らしく整った顔の、アイドルみたいな一年生たち。きゃっきゃと騒ぎながら全裸で廊下を歩いているその姿は、まるで絵画の中の天使の子供みたいだ。幸いにも俺のゾーンには入らないタイプだから、まだこうして落ち着いていられるけれど……
「ここでもし彰良先輩と遭遇したら、今度こそ鼻血噴くだろうな……」
「ほたる、あと1ステージでラスボス面だぞ!」
「ほ、ほんとか! マカ、凄い!」
とにかく人が来ない所へ。全裸の生徒達の間を縫うようにして通り抜け、何処か良い場所がないかと辺りを見回す。──結局、今日も昼飯は食べられそうにない。
「あっ、可愛い!」
丁度すれ違った一年生の集団が俺を振り返って言った。
「先輩、その人形何ていうやつですか?」
「え? こ、これのことか?」
胸に抱いたマカロは無言でゲームに集中している。一年生たちからは画面が見えてないせいで、変わったデカめのスマホアクセサリーと思われているらしい……が、このままだとマカロが生き物だとバレてしまう可能性の方が高い。
──いや、そんなことよりも。
「わ、可愛い。こういうキャラクター好き」
「バンドのグッズみたい。羽と尻尾が悪魔っぽいし」
「いいな。先輩、どこで買ったんですか?」
「あ、いや、……その、……」
素っ裸の一年生たちに囲まれ、ぐいぐいと迫られ、俺はその迫力につい後ずさってしまった。年下は好みではないといえど、手入れされた艶々の肌は彰良先輩のそれと同じくらい眩しい。というかこの一年達、下の毛も手入れしてるのか……
「先輩っ」
「先輩、先輩っ」
「や、やめろ……くるなっ……」
じりじりと悪意のない彼らが距離をつめてくる。マカロはちゃんと無反応を決めてくれているが、こういう時にこそ「透明の香水」でも出してくれたらいいのに。
「何やってんだ、お前ら!」
「えっ……」
廊下の奥から駆けてきた全裸の男を目にした瞬間、俺は危うく卒倒しそうになった。
「あっ! 天和先輩だ!」
「天和先輩!」
「先輩先輩っ、お昼ご飯一緒に食べませんかっ?」
手のひらを返したかのように、目の色を変えて天和に群がって行く一年生たち。彼らも天和も全裸なせいか、見てはいけないものを見ているようで顔が真っ赤になってしまう。
「炎樽? 何してんだお前!」
俺が堂々とマカロを抱いているのを見て、天和が目を丸くさせている。それから群がってきた一年達をかき分けるようにしてこちらへ来て、眼鏡をかけた俺をじっと見つめ──
「なるほどな。なかなかエロいじゃねえか」
悪巧みを企む鬼の顔で、ニヤリと笑った。
面倒だけど、真相を知っている俺にしかできないことだ。これ以上の被害者を出さないようにゲームそのものを抹消したいけれど、サバラ曰くそれは時間の問題らしい。悪徳業者と同じように、目的の物を回収できるだけしたらさっさと姿を消すからだそうだ。
「だけどいきなりトンズラされたら、クリアできなかった被害者の視力は戻らないんじゃないのか?」
「ゲームにかかってる呪いがどの程度か分からないけど……。多分、今回のは向こうも遊び心でやってることだと思うからそれはないんじゃないかな。救済処置として、呪いを解除したゲームだけポツンと残るのかもね。とにかくクリアできればいいんだよ」
「奪った視力も結果的に全部元に戻されるなら、ますます何のためにやってるんだか」
「試作段階のテストみたいなモンなんじゃないかな。炎樽くん含め運悪く波長が合ってゲームを見つけちゃった人間が、勝手にテストプレイヤーにされてるんだよ」
めちゃくちゃ迷惑な話だ。俺にはたまたまマカロやサバラのような味方がいたから対処できたけど、一般のプレイヤーは恐らく原因も知らずに泣き寝入りするしかないじゃないか。
「……攻略サイト作って、絶対に全プレイヤーの呪いを解いてやる」
決意を固めたその時、四時限目終了のチャイムが鳴った。
「……昼休みだね。結界を張ったらマカロの防御魔力も発動しなくなっちゃうけど、どうする?」
どこか楽しそうにサバラが言って、俺は眉間に皺を寄せながらしぶしぶ眼鏡をかけた。
「マカ、他の生徒が来るかもしれないからどこか別の場所に移動しよう」
「んー、あとちょっとだけ……」
うつ伏せになってゲームをやりながら、短い足をぶらつかせるマカロ。取り敢えずベッドに散らばったお菓子の残骸を片付けてからもう一度声をかけると、再び「あとちょっとだから」と言われた。俺のためにやってくれていることは分かっているが、いつ生徒が来るとも限らない。子供にゲームを止めさせたい親の気分だ。
「そんな恰好で転がってゲームしてたら風邪ひくぞ」
「おれ、服着てるよ」
「あ、そうか……。もう、面倒臭せぇ眼鏡だな!」
ゲームを操作し続けるマカロを抱えて、保健室のドアからそっと廊下へ出る。昼休みのくだけた風景の中で生徒は全員全裸だけど、ここが一年校舎だからか、近くに三年生はいないみたいだ。
今では魔力を消費しすぎて、マカロは子供どころかぬいぐるみのようなサイズになっている。その小さな手でのゲーム操作は相当大変そうだが、万が一誰かに見られてもこうして抱えていれば、キャラクターのぬいぐるみと思ってもらえるかもしれない。
「ほたる、揺らさないで」
「ご、ごめん」
愛らしく整った顔の、アイドルみたいな一年生たち。きゃっきゃと騒ぎながら全裸で廊下を歩いているその姿は、まるで絵画の中の天使の子供みたいだ。幸いにも俺のゾーンには入らないタイプだから、まだこうして落ち着いていられるけれど……
「ここでもし彰良先輩と遭遇したら、今度こそ鼻血噴くだろうな……」
「ほたる、あと1ステージでラスボス面だぞ!」
「ほ、ほんとか! マカ、凄い!」
とにかく人が来ない所へ。全裸の生徒達の間を縫うようにして通り抜け、何処か良い場所がないかと辺りを見回す。──結局、今日も昼飯は食べられそうにない。
「あっ、可愛い!」
丁度すれ違った一年生の集団が俺を振り返って言った。
「先輩、その人形何ていうやつですか?」
「え? こ、これのことか?」
胸に抱いたマカロは無言でゲームに集中している。一年生たちからは画面が見えてないせいで、変わったデカめのスマホアクセサリーと思われているらしい……が、このままだとマカロが生き物だとバレてしまう可能性の方が高い。
──いや、そんなことよりも。
「わ、可愛い。こういうキャラクター好き」
「バンドのグッズみたい。羽と尻尾が悪魔っぽいし」
「いいな。先輩、どこで買ったんですか?」
「あ、いや、……その、……」
素っ裸の一年生たちに囲まれ、ぐいぐいと迫られ、俺はその迫力につい後ずさってしまった。年下は好みではないといえど、手入れされた艶々の肌は彰良先輩のそれと同じくらい眩しい。というかこの一年達、下の毛も手入れしてるのか……
「先輩っ」
「先輩、先輩っ」
「や、やめろ……くるなっ……」
じりじりと悪意のない彼らが距離をつめてくる。マカロはちゃんと無反応を決めてくれているが、こういう時にこそ「透明の香水」でも出してくれたらいいのに。
「何やってんだ、お前ら!」
「えっ……」
廊下の奥から駆けてきた全裸の男を目にした瞬間、俺は危うく卒倒しそうになった。
「あっ! 天和先輩だ!」
「天和先輩!」
「先輩先輩っ、お昼ご飯一緒に食べませんかっ?」
手のひらを返したかのように、目の色を変えて天和に群がって行く一年生たち。彼らも天和も全裸なせいか、見てはいけないものを見ているようで顔が真っ赤になってしまう。
「炎樽? 何してんだお前!」
俺が堂々とマカロを抱いているのを見て、天和が目を丸くさせている。それから群がってきた一年達をかき分けるようにしてこちらへ来て、眼鏡をかけた俺をじっと見つめ──
「なるほどな。なかなかエロいじゃねえか」
悪巧みを企む鬼の顔で、ニヤリと笑った。
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