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#4 ナイトメア・トラップ
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突然現れ、強烈なタックルで砂原先生を吹っ飛ばした天和。
彼は何やら大激怒している様子で、俺に向かってぎゃんぎゃん吠えながら唾を飛ばしている。その背後には床に大の字になった砂原先生がいて、先生の傍らにしゃがんだマカロが「おーい、大丈夫か」と言っていた。
「ど、どういうこと? 何で天和とマカロがここに……?」
「まだ気付いてねえのか。無理矢理殴って起こすぞ、コラ!」
「意味分かんないって。ていうかマカロ、お前どこにいたんだよっ?」
ピンクの髪を揺らしながらマカロが俺を振り返り、「話すとややこしいけど」と前置きをして説明し始める。
……砂原先生こと夢魔のサバラは、落ちこぼれマカロの種集めの手伝いをするようマカロの父親から言われ、この学校へと送り込まれたらしい。
サバラ本人は種集めの「仕事」よりも自分の欲を優先させる目的でやってきたとのことで、始めからマカロと協力するつもりはなかったそうだ。
俺を狙ったのはたまたま「超いい匂い」がしたから。
これは上玉だと感じたサバラは取り敢えず邪魔になりそうなマカロを小型のまま捕まえて結界を張った棚に隠し、罠に嵌めるために俺を眠らせ、自分で作った「夢」の空間に俺を閉じ込めた。
サバラ自身もその空間へ入ったため現実から一時的に結界の力が消え、それを機に脱出したマカロが天和を連れて眠り、俺の匂いを辿ってここまで来たのだという。
「……よく分かんないけど」
頬をかいて目を細めると、天和が俺の胸倉を掴み、また唾を飛ばした。
「細けえ話はどうだっていい。こっちが死ぬ覚悟で助けに来たってのに、てめぇはこの変態教師と呑気にコキ合ってんのはどういうことだ、って言ってんだろうがァ……!」
「し、知らないって! マジで分かんない!」
マカロが天和の腕を叩いて、俺の胸倉から手を離させる。
「炎樽も眠らされてたんだ。夢の中だと意味不明なことも当たり前になって、明らかにおかしいのに疑問を持たない時ってあるだろ。それに加えて夢魔は自在に夢を作れるんだから、抗うことなんてできないよ」
「そんじゃ、ぶっ飛ばすのは炎樽じゃなくてそこの変態ってことか」
うーん、と意識を取り戻したサバラが床から頭を持ち上げる。
「いってぇ……何が起きたんだ、クソ……」
「おい、てめぇ」
「あ? 誰だお前」
天和が上履きの底でサバラの肩を押し、再びその頭を床に戻す。そうして顔面騎乗さながらのマウントポジションでサバラの上にしゃがみ込んだ天和が、口元をニヤつかせながら鬼の声で低く囁いた。
「誰の物に手出したか分かってんだろうな、サバラ先生よォ」
「何だお前……! お前こそ誰に口を利いているか分かってるのか! 俺はお前なんかよりずっと高次元の存在で──」
「俺は十八だけどな」
「えっ、……え?」
「十五センチ風情が調子に乗ってんじゃねえぞクソガキがァッ!」
ある意味での勝利宣言と共に振り下ろされた天和の拳が、サバラの整った顔面にめり込んだ。
「わ、……揺れてる。地震か?」
目の周りに星を散らすサバラが今度こそ完全に気を失ったと同時に──周りの風景が崩れ出し、空間が壊れ始めた。並んだ机が浮き、本棚が倒れ、カーテンがばたばたとはためく。
「あ、危ねえっ……!」
どこからくるのかも分からない強風を浴びながら、マカロが俺達に叫んだ。
「炎樽、天和。そろそろ目が覚めるぞ。起きたら恨みっこ無しだ、夢の中に全部置いてけ!」
「マカ!」
「炎樽。夢の中なら素直になれるだろ。俺は一足早くコイツ連れて起きるからな」
「あ、ありがとう! マカ、助けに来てくれてありがとうな!」
目を回しているサバラを担いで、俺にガッツポーズを送るマカロ。その姿が空間に溶け、消えて行く。
「た、天和!」
「炎樽、上! 危ねえぞ!」
頭上で激しく割れた蛍光灯。降り注ぐガラスが突風に煽られ、細かな凶器となって俺の方へ飛んでくる。
「っ……!」
彼は何やら大激怒している様子で、俺に向かってぎゃんぎゃん吠えながら唾を飛ばしている。その背後には床に大の字になった砂原先生がいて、先生の傍らにしゃがんだマカロが「おーい、大丈夫か」と言っていた。
「ど、どういうこと? 何で天和とマカロがここに……?」
「まだ気付いてねえのか。無理矢理殴って起こすぞ、コラ!」
「意味分かんないって。ていうかマカロ、お前どこにいたんだよっ?」
ピンクの髪を揺らしながらマカロが俺を振り返り、「話すとややこしいけど」と前置きをして説明し始める。
……砂原先生こと夢魔のサバラは、落ちこぼれマカロの種集めの手伝いをするようマカロの父親から言われ、この学校へと送り込まれたらしい。
サバラ本人は種集めの「仕事」よりも自分の欲を優先させる目的でやってきたとのことで、始めからマカロと協力するつもりはなかったそうだ。
俺を狙ったのはたまたま「超いい匂い」がしたから。
これは上玉だと感じたサバラは取り敢えず邪魔になりそうなマカロを小型のまま捕まえて結界を張った棚に隠し、罠に嵌めるために俺を眠らせ、自分で作った「夢」の空間に俺を閉じ込めた。
サバラ自身もその空間へ入ったため現実から一時的に結界の力が消え、それを機に脱出したマカロが天和を連れて眠り、俺の匂いを辿ってここまで来たのだという。
「……よく分かんないけど」
頬をかいて目を細めると、天和が俺の胸倉を掴み、また唾を飛ばした。
「細けえ話はどうだっていい。こっちが死ぬ覚悟で助けに来たってのに、てめぇはこの変態教師と呑気にコキ合ってんのはどういうことだ、って言ってんだろうがァ……!」
「し、知らないって! マジで分かんない!」
マカロが天和の腕を叩いて、俺の胸倉から手を離させる。
「炎樽も眠らされてたんだ。夢の中だと意味不明なことも当たり前になって、明らかにおかしいのに疑問を持たない時ってあるだろ。それに加えて夢魔は自在に夢を作れるんだから、抗うことなんてできないよ」
「そんじゃ、ぶっ飛ばすのは炎樽じゃなくてそこの変態ってことか」
うーん、と意識を取り戻したサバラが床から頭を持ち上げる。
「いってぇ……何が起きたんだ、クソ……」
「おい、てめぇ」
「あ? 誰だお前」
天和が上履きの底でサバラの肩を押し、再びその頭を床に戻す。そうして顔面騎乗さながらのマウントポジションでサバラの上にしゃがみ込んだ天和が、口元をニヤつかせながら鬼の声で低く囁いた。
「誰の物に手出したか分かってんだろうな、サバラ先生よォ」
「何だお前……! お前こそ誰に口を利いているか分かってるのか! 俺はお前なんかよりずっと高次元の存在で──」
「俺は十八だけどな」
「えっ、……え?」
「十五センチ風情が調子に乗ってんじゃねえぞクソガキがァッ!」
ある意味での勝利宣言と共に振り下ろされた天和の拳が、サバラの整った顔面にめり込んだ。
「わ、……揺れてる。地震か?」
目の周りに星を散らすサバラが今度こそ完全に気を失ったと同時に──周りの風景が崩れ出し、空間が壊れ始めた。並んだ机が浮き、本棚が倒れ、カーテンがばたばたとはためく。
「あ、危ねえっ……!」
どこからくるのかも分からない強風を浴びながら、マカロが俺達に叫んだ。
「炎樽、天和。そろそろ目が覚めるぞ。起きたら恨みっこ無しだ、夢の中に全部置いてけ!」
「マカ!」
「炎樽。夢の中なら素直になれるだろ。俺は一足早くコイツ連れて起きるからな」
「あ、ありがとう! マカ、助けに来てくれてありがとうな!」
目を回しているサバラを担いで、俺にガッツポーズを送るマカロ。その姿が空間に溶け、消えて行く。
「た、天和!」
「炎樽、上! 危ねえぞ!」
頭上で激しく割れた蛍光灯。降り注ぐガラスが突風に煽られ、細かな凶器となって俺の方へ飛んでくる。
「っ……!」
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