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#4 ナイトメア・トラップ

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 身長計と体重計があって、名前は知らないけれど背骨が曲がっていないかを測定する板があって、……俺の手には、「春の身体測定」と書かれた二つ折りの紙が握られている。いつの間に着替えたのか学ランではなく体育着姿だ。

「あれ、俺さっきまで英語の授業で旧校舎に向かってて……」
「炎樽、なに寝ぼけてんだよ。絶対去年より身長デカくなってる、ってついさっき宣言してたじゃねえか」
 俺の背後に並んでいた幸之助が笑った。

「まあ、幾ら背が伸びても俺よりチビなのは変わらないけどな!」
「ムカつく。いつか絶対追い抜くし」

 そうだ。今日は身体測定があるんだった。どうして忘れていたんだろう。身長も体重も絶対に増えてるはずだって、凄く楽しみにしていた……気が、するのに……。


「では次、比良坂炎樽くん」
「はい」
 砂原先生。これは今朝赴任の挨拶をしていた先生だ。美人で若くて人気者の、新しい保健の先生。俺の診断表を受け取って、ニコニコと笑っている。

「それではまず、身長を測ります。そこの台に立って、足をマークの所に合わせてください」
 裸足の裏に感じる、ひやりとした金属の感触。先生の手が測定器のバーを下げ、俺の頭頂部に当てた。
「うーん、一六七センチ」
「や、やった! 去年より二センチ伸びてる」
「良かったね。今の時期でもまだまだ伸びるから、規則正しい生活をしないといけないよ」

 それから体重を測り、握力を測り、視力と聴力を見てもらってから、先生がメジャーを取り出して俺に言った。

「胸囲を測るから、上を脱いでね」
「は、はい」
 体育着の上を脱いで上半身を晒すと、砂原先生が俺の胸周りにメジャーを巻き付けながら「ぺたんこで可愛いね」と言った。恥ずかしさに笑って誤魔化し、そうして──周囲から他の生徒達がいなくなっていることに気付く。

「あ、あれ。先生、みんなは……」
「始めから君一人だったよ? 確か君は身体測定の日に病欠したから、こうして今日改めて一人で測定しに来てもらったんだ」

 ──そうだったっけ。いや、そうだった気もする。

「名前は、比良坂炎樽くん。三月三日生まれのO型。間違いないよね? ……それじゃあ次は心音を確かめようか」
「は、はい……」
 耳に聴診器を付けた先生が、俺の胸に丸いチェストピースを当てる。冷たくて一瞬だけ体が強張ってしまったが、先生の「ゆっくり息を吸って、吐いて」という優しい声を聞いて少しだけ緊張が解れた気がした。

 だけど──

「わっ、先生っ……」
「どうしたのかな?」
「な、何で直接胸に耳を付けるんですか?」

 聴診器を外した砂原先生が、俺の胸にぴったりと耳をあてて言った。

「こうやって直接心音を聞くと、医学では分からないことも伝わってきたりするんだよ。……炎樽くん、凄くドキドキしてる。正常な反応だ」
「ほ、本当ですか……?」
「ああ。次は短パンを脱いで、大事な所を測るよ」

 そう言って、先生が俺の体育着のパンツに指を引っかけた。大事な所を測るって、そんなの聞いたこともないし。そもそも何を測るのかも分からない。

 頭では分かっているのに、どうして俺は「そういうモンだから仕方ない」なんて思ってしまうんだろう。──何だか、悪い夢を見ているみたいだ。

「あは、可愛い。……なんて笑ったら駄目だね。ちゃんと測れないから、背筋をピンとして胸を張ってるんだよ」
「はい」

 先生の前でほぼ全裸になった俺は、気を付けの姿勢を取って目をつぶった。ペニスにメジャーがあてられている感触があり、しばらくしてから先生が俺のそれを握り、笑った。

「次は勃起した時のサイズ測定だね。手っ取り早く僕が大きくさせるから、じっとしててね」
「ん、……は、はい……」

 身体測定ってこういう物だったっけ。いや、間違いない。毎年これが恥ずかしくて、皆の前で測るのが嫌でよくズル休みしたじゃないか。

「あっ、う……先生、声……出したら、駄目なんでしたっけ……?」
「いいよ、声は。その代わり射精したら駄目だよ。いや……射精してもいいんだけど、その分測定が長引くからね」
 言いながら、先生の手が俺のそれを激しく擦る。先端から零れた体液を更に塗り込むようにして揉まれ、ぬるぬるとした感触に俺は堪らず声を張り上げた。

「ひゃ、あぁっ……。せんせ、……もっと、ゆっくりして欲し、です……!」
「これは愛撫じゃなくて測定だからね。そんな甘いことを言ってたらいけないよ。測り終わったらちゃんと射精させるから、もう少し頑張って」

 膝に力が入らず、俺は背後の壁に背を預けて歯を食いしばった。唇の端から涎が垂れる。先生が扱きながら俺のそれを見ていると思うと、恥ずかしいのと同じくらい妙な高揚感に心がくすぐられるのを感じた。

「このくらいかな? ……ええと、九センチ」
「えぇっ、……う、うそ……そんな小さいですか、俺……? 十もないのっ……?」
「落胆することはないよ。ちゃんと種を出せるなら、立派に役目を果たせるんだから」

 別に俺が女性にペニスを使うことなんて一生ないんだけど、やっぱり小さいよりは大きい方が断然良い。現実を叩きつけられて落胆していると、砂原先生がくすくすと笑いながら俺のそれにキスをした。
「わっ!」
「それじゃあ、頑張った炎樽くんを射精させてあげよう。ついでに僕も催してきたから、一緒に発散しようね」

 立ち上がった先生がファスナーを下ろし、自身のそれを抜き出した。

「………!」
「ちなみに僕は十五センチ。炎樽くんの好みのサイズかな?」
「わ、分からな……」

 へろへろのまま壁にもたれる俺の股間に、先生のそれがぴったりとくっ付けられる。

「行くよ、炎樽くん」
「あぁっ──!」
 擦れ合う感触。ぬるついた体液と精の匂い、学校の先生とこんなことをしているという罪悪感。俺はなすすべなく腰を震わせ、先生の裏面が俺のそこを激しく擦っているのを潤んだ目で見つめていた。

「や、あぁっ……先生、熱い……あついです……!」
「炎樽くん……。はぁ、……僕の十五センチが君の九センチに求愛してるよ。擦る度に涎を垂らして悦んで、何て可愛いんだ」
「先生っ、イ、イく……! イっちゃいそ、です……!」
「ああ、いいよ。その代わり炎樽くん、今後も僕の言うことを聞いて、ちゃんと定期的に身体測定を受けに来るんだ。分かったか?」
「は、はいっ……、先生……ああぁっ、もう……!」

「分かってんじゃ、ねええぇ──ッ!」

 今にも達しそうだったその時、突然目の前の砂原先生が吹っ飛んで消えた。

「え、……?」
 代わりに俺の視界を塞いだのは、……

「炎樽! てめぇ、こんな奴にいい様にされてんじゃねえぞ! さっさと目を覚ませ、このエロガキがっ!」
「ひっ、──た、天和っ?」
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