Chain Stripper

狗嵜ネムリ

文字の大きさ
上 下
19 / 60

5-2

しおりを挟む
「………」
 立ち上がり、二人の元へと近付いて行く。
「やらせてくれ」
 ポールから降りたステラが、俺のために場所を開けた。

 ポールを握って少しよじ登り、適当な高さで右膝を絡ませる。膝から下──脛とつま先でしっかりポールをホールドし太股の裏に力を込め、もう片方の脚も膝を折る。
「……股が痛てぇ……」
 ポールを握った腕を伸ばして上半身をゆっくりと横に倒し、……後はこの手を離して体を水平に保つだけ。頭では分かっているのに、手が放せない。

「だ、大丈夫か、亜蓮……体がプルプルしてるぞ?」
 不安げに俺を見つめるニコラの横で、ステラが抑揚のない声で言った。
「君は腕の力には自信があるみたいだけど、太股の筋肉をもっと鍛えた方がいいよ。……多分、その手を離した瞬間に落下する」
「……くっ、……」
「昨日のブラスモンキーの時も、手を離せなかったもんね」
「……クソッ!」
 自棄になってポールから手を離し、太股に思い切り力を込める。

「お、おお……凄い、亜蓮! 出来てるよ!」
「う、……う、く──駄目だっ!」
 慌てて絡めていた脚を戻し、両手を床のマットについてポールから飛び降りた。ステラの言う通り、俺は昨日のブラスモンキーも腕の力に頼っていただけだ。見様見真似でやったものだし、ちゃんと練習して身に着けた技じゃない。
 本当は新聞に取り上げられるような、大層な仕事をした訳じゃないんだ。

「後で太股の鍛え方、教えてあげる。初めてであれだけ出来れば大したものだよ」
 ステラが背伸びをして俺の頭を撫でた。よしよし、と少し嬉しそうに笑いながら。
「へへ。ステラは俺の自慢の兄貴なんだ。兄貴に出来ない技はないんだよ。また俺に教えてよ」
「うん、いいよ。ニコラにならいつでも教える」
 本当に誇らしげに、ニコラがステラの肩を抱いてニッと笑う。二人は基本的な性格は似ていないがやはり双子というのは本当で、同時に互いの頭を撫でて「大好き」と笑った。息ぴったりだ。

「ステラ、俺にもトリック技教えてくれ。あんまり凄いのは無理だけど、ダンスの繋ぎになるようなものなら何でも覚えたい」
「いいよ。亜蓮は飲み込み早そうだし」
「それって、俺は飲み込みが遅いってこと?」
「ふふ。……それじゃあ僕は、ちょっとだけキッチンで飲んで来ようかな」
 ニコラの頬にキスをして、ステラがスタッフルームを出て行った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

フルチン魔王と雄っぱい勇者

ミクリ21
BL
フルチンの魔王と、雄っぱいが素晴らしい勇者の話。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

処理中です...