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第16話 ご主人への贈りもの
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「炎珠さん、今日の夕飯は何食べたいですか?」
「那由太が作ってくれるなら何でもいいよ。でも強いて言えば、ご飯系がいいかな?」
「俺が作れるご飯系っていったら……定番のカレーか、チャーハンか、オムライス……」
「あ、それじゃあオムライスがいい! 可愛いもんね」
オムライスが可愛いというのはよく分からないけれど、ペットの希望はご主人の義務。夕飯のメニューはそれに決まりだ。
それからしばらくして刹が目を覚まし、お昼は軽いインスタントで済ませることにした。焼きそばの皿が三つ、そのうち一つは刹の好きな一味トウガラシをたっぷりとふりかけてある。
「どこか出掛けるのもいいけど、こうやって三人でのんびり過ごすのもいいよね。那由太がいてくれるから家にいても充分楽しいし」
「ほぼ毎日のんびりしてるじゃねえか、お前は」
「刹ほどじゃないけど……」
食事を作って、一緒に遊んで、……こんな風に穏やかな時間を大好きな人達と一緒に過ごせるって、本当に幸せだ。
今なら俺が騙されて連帯保証人になったのも、風俗で働こうと決意したのも、全ては運命だったのだなと思うことができる。死にたいくらいに辛くて怖かった日々。誰にも相談できず暗闇の部屋で一人、取り立てのノックに怯えていた毎日。
突然目の前に開かれた光の扉──今の俺は、こんなにも幸せだ。
「二人には恩を返しても返しきれないって思ってるんですよ、俺。一生二人のために尽くしたってバチは当たらないのに、尽くすどころかこんな幸せな暮らしをさせてもらって」
「那由太」
「だから今日は、少しでも二人のワガママを聞いてあげられたらなって思ってます」
照れながら言うと、炎珠さんが俺の手をつんと指で押して笑った。
「俺達だって那由太が来てくれたことに感謝してるんだってば。ペットって基本は甘やかされるから、増長して高飛車な子になっちゃう場合もあるんだけど……那由太は一日一日、良い子になってくれたし」
「俺の躾けが上手かったからだな」
「っていうより、那由太が元々良い子だったからでしょ」
俺は照れ臭いようなむず痒いような気持ちになって、今俺の中で確かに存在している二人への愛情をぎこちなく口にした。
「炎珠さんも、刹も、凄く良い子ですよ!」
「あはは。照れるね」
「良い子へのご褒美、後でちゃんと用意しておけよ」
──もちろん!
「那由太が作ってくれるなら何でもいいよ。でも強いて言えば、ご飯系がいいかな?」
「俺が作れるご飯系っていったら……定番のカレーか、チャーハンか、オムライス……」
「あ、それじゃあオムライスがいい! 可愛いもんね」
オムライスが可愛いというのはよく分からないけれど、ペットの希望はご主人の義務。夕飯のメニューはそれに決まりだ。
それからしばらくして刹が目を覚まし、お昼は軽いインスタントで済ませることにした。焼きそばの皿が三つ、そのうち一つは刹の好きな一味トウガラシをたっぷりとふりかけてある。
「どこか出掛けるのもいいけど、こうやって三人でのんびり過ごすのもいいよね。那由太がいてくれるから家にいても充分楽しいし」
「ほぼ毎日のんびりしてるじゃねえか、お前は」
「刹ほどじゃないけど……」
食事を作って、一緒に遊んで、……こんな風に穏やかな時間を大好きな人達と一緒に過ごせるって、本当に幸せだ。
今なら俺が騙されて連帯保証人になったのも、風俗で働こうと決意したのも、全ては運命だったのだなと思うことができる。死にたいくらいに辛くて怖かった日々。誰にも相談できず暗闇の部屋で一人、取り立てのノックに怯えていた毎日。
突然目の前に開かれた光の扉──今の俺は、こんなにも幸せだ。
「二人には恩を返しても返しきれないって思ってるんですよ、俺。一生二人のために尽くしたってバチは当たらないのに、尽くすどころかこんな幸せな暮らしをさせてもらって」
「那由太」
「だから今日は、少しでも二人のワガママを聞いてあげられたらなって思ってます」
照れながら言うと、炎珠さんが俺の手をつんと指で押して笑った。
「俺達だって那由太が来てくれたことに感謝してるんだってば。ペットって基本は甘やかされるから、増長して高飛車な子になっちゃう場合もあるんだけど……那由太は一日一日、良い子になってくれたし」
「俺の躾けが上手かったからだな」
「っていうより、那由太が元々良い子だったからでしょ」
俺は照れ臭いようなむず痒いような気持ちになって、今俺の中で確かに存在している二人への愛情をぎこちなく口にした。
「炎珠さんも、刹も、凄く良い子ですよ!」
「あはは。照れるね」
「良い子へのご褒美、後でちゃんと用意しておけよ」
──もちろん!
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