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第14話 ご主人との大切な思い出
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夕食は美味しい海の幸や、パスタにカレーにサラダにチキン、デザートのミニケーキにプリンにアイスと、五人そろって大変満足な時間を過ごすことができた。
俺は始めに張り切ったせいで中盤からギブアップしてしまったけれど、刹と幸次郎さんでだいぶ元は取れたのではと思う。
「も、もう何も食べられない……」
夜に皆で食べるお菓子を楽しみにしていたのに、この分だと明日に回した方が良さそうだ。涼真さんも口元を押さえて苦しそうにしているし、意気込んでいたはずの炎珠さんは多分俺よりも食べていないし。
けろっとしているのは刹と幸次郎さんだけだ。これから部屋で飲もうぜなんて言っている。
「ぷはっ……」
部屋に戻るなりソファに倒れ込んだ俺は、もう一歩も動きたくなくていっそこのまま眠ってやろうかとゆっくり目を閉じた。
「那由太、寝るならベッドの方がいいよ」
「……でも皆さん、まだ起きて宴会したりするんですよね。俺も起きたら加わりますから、炎珠さん、頃合いを見て声かけて下さい……」
「えぇっ、もし俺も寝ちゃったらごめん」
「責任重大だな、炎珠」
言いながら刹が俺の寝ているソファに座り、何と膝枕をしてくれた。枕よりはずっと硬い感触だけど、有難い……刹の爽やかな匂い大好きだし。
「おーい。炎珠と刹っちゃん、ビール飲む?」
「おう」
「飲みたい!」
「せっかくだから涼真も少し飲むか?」
「あ、ああ……少しだけ」
楽しそうで俺も混ざりたいのに、疲れて腹がいっぱいで、起きられなくて……閉じた目蓋はもう、しばらく経たないと開きそうにない。
まだまだ一日目の夜だし、明日もあるから。
今はちょっとだけゆっくり、眠ろう。
「──はっ!」
暑苦しさに目が覚めると、辺りはしんと静まり返っていた。床に転がっているのは幸次郎さんと炎珠さん。俺に膝を貸したまま涎を垂らして大いびきをかいているのは刹。
「み、皆寝ちゃってる……涼真さんは……寝室かな?」
テーブルの上には何本もの缶ビールとおつまみの袋、俺が楽しみにしていたお菓子の残骸も散らばっている。
刹の膝から頭を上げてソファを降りると、皆の寝息やいびきが響く中で赤ら顔の涼真さんがビールを飲んでいる姿が目に入った。
「涼真さん」
「ああ、那由太。起きたのか」
「皆寝ちゃってますね。涼真さんは眠くないんですか?」
「俺も那由太が寝てすぐに寝落ちしてしまったからな。ついさっき起きたばかりだ」
せっかく起きたのに周りがこんな状態ではあんまりだ。完全に目が覚めた俺はコップに少しだけビールを注いでもらい、念のため酔っ払わないように上からサイダーをつぎ足した。
「那由太、昼間は凄かったな。声がダダ漏れだったぞ」
「……そ、それは言わないで下さい」
「正直言って驚いたが、同時に俺は……お前が羨ましいと思った。お前は二人の主人から平等に愛されていると、声だけで伝わってきたぞ」
思い出して気まずいのに、俺は何も言えなかった。
アルコールで涼真さんの顔は赤くなっているが、目付きだけは真剣そのものだったからだ。
俺は始めに張り切ったせいで中盤からギブアップしてしまったけれど、刹と幸次郎さんでだいぶ元は取れたのではと思う。
「も、もう何も食べられない……」
夜に皆で食べるお菓子を楽しみにしていたのに、この分だと明日に回した方が良さそうだ。涼真さんも口元を押さえて苦しそうにしているし、意気込んでいたはずの炎珠さんは多分俺よりも食べていないし。
けろっとしているのは刹と幸次郎さんだけだ。これから部屋で飲もうぜなんて言っている。
「ぷはっ……」
部屋に戻るなりソファに倒れ込んだ俺は、もう一歩も動きたくなくていっそこのまま眠ってやろうかとゆっくり目を閉じた。
「那由太、寝るならベッドの方がいいよ」
「……でも皆さん、まだ起きて宴会したりするんですよね。俺も起きたら加わりますから、炎珠さん、頃合いを見て声かけて下さい……」
「えぇっ、もし俺も寝ちゃったらごめん」
「責任重大だな、炎珠」
言いながら刹が俺の寝ているソファに座り、何と膝枕をしてくれた。枕よりはずっと硬い感触だけど、有難い……刹の爽やかな匂い大好きだし。
「おーい。炎珠と刹っちゃん、ビール飲む?」
「おう」
「飲みたい!」
「せっかくだから涼真も少し飲むか?」
「あ、ああ……少しだけ」
楽しそうで俺も混ざりたいのに、疲れて腹がいっぱいで、起きられなくて……閉じた目蓋はもう、しばらく経たないと開きそうにない。
まだまだ一日目の夜だし、明日もあるから。
今はちょっとだけゆっくり、眠ろう。
「──はっ!」
暑苦しさに目が覚めると、辺りはしんと静まり返っていた。床に転がっているのは幸次郎さんと炎珠さん。俺に膝を貸したまま涎を垂らして大いびきをかいているのは刹。
「み、皆寝ちゃってる……涼真さんは……寝室かな?」
テーブルの上には何本もの缶ビールとおつまみの袋、俺が楽しみにしていたお菓子の残骸も散らばっている。
刹の膝から頭を上げてソファを降りると、皆の寝息やいびきが響く中で赤ら顔の涼真さんがビールを飲んでいる姿が目に入った。
「涼真さん」
「ああ、那由太。起きたのか」
「皆寝ちゃってますね。涼真さんは眠くないんですか?」
「俺も那由太が寝てすぐに寝落ちしてしまったからな。ついさっき起きたばかりだ」
せっかく起きたのに周りがこんな状態ではあんまりだ。完全に目が覚めた俺はコップに少しだけビールを注いでもらい、念のため酔っ払わないように上からサイダーをつぎ足した。
「那由太、昼間は凄かったな。声がダダ漏れだったぞ」
「……そ、それは言わないで下さい」
「正直言って驚いたが、同時に俺は……お前が羨ましいと思った。お前は二人の主人から平等に愛されていると、声だけで伝わってきたぞ」
思い出して気まずいのに、俺は何も言えなかった。
アルコールで涼真さんの顔は赤くなっているが、目付きだけは真剣そのものだったからだ。
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