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第6話 発情期なんかじゃありません!
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しおりを挟む「……あれ。何だか那由太、顔赤いね」
買い物を済ませて待ち合わせ場所にやってきた炎珠さんが、俺を見るなりそう言った。
「色々連れ回しちゃったし、疲れたかな? 夏風邪とかひいてないといいんだけど」
「だ、大丈夫ですよ炎珠さん。全然元気です」
「それなら良いんだけど……ごめんね、具合悪かったらすぐ言うんだよ」
「すいません、でも本当に元気ですよ!」
俺の頭を撫でる炎珠さんの不安げな顔を見ていると、つくづく申し訳ない気持ちになる。俺が勝手に赤くなったり焦ったりしていただけで、彼には何の落ち度もないのだ。
「それじゃあ、ぼちぼち帰ろうか。那由太、夕飯何が食べたいか考えといてね」
来た時と同じように刹の車でモールを出る。
後部席から窓の外を見ていると、ぽつぽつと雨が降り始めているのに気付いた。梅雨特有のにわか雨だ。一度思い切り降ってくれれば、この蒸し暑さも少しは解消されるだろう。
「眠くなってきたぁ……」
助手席で船を漕ぎだした炎珠さんのこめかみに、刹がデコピンを喰らわせる。
「いだっ!」
「助手席で寝るな。運転中に隣でイビキをかかれると腹が立つって、いつも言ってんだろ」
「眠いし湿気でベタついてるからシャワーも浴びたいし、お菓子も食べたい!」
「どれか一つにしろや」
二人の変なやり取りを聞きながら俺もうとうとしていると、ふいに助手席から炎珠さんがこちらを振り返って言った。
「那由太も同じ気持ちだよね?」
「え? ……はい、多分そうです」
「やっぱりね!」
よく聞いていなくて適当な返事をしてしまったが、炎珠さんは俺の答えを聞き上機嫌になっている。そうしてハンドルを握る刹の肩を人差し指でつつき、「ゴーゴー」と何かを煽り始めた。
「飯はどうするんだ」
「ルームサービス頼もうよ。俺、肉食べたいし。那由太は何がいい?」
「お、俺は何でも良いですけれど……」
「決まり!」
炎珠さんが声をあげると同時に、刹が右へハンドルを切った。
「あっ……」
入ったのは大三元町のベイサイド・シティホテル駐車場。
「今夜は三人でゆっくりしよう!」
「………」
落ち着け。まだそういう展開になると決まった訳じゃない。ラブホテルじゃないんだし、単純に疲れたから休みたいだけかもしれないじゃないか。
「フラグ回収かもな、にゃん太」
「っ……!」
エンジンを切った刹が運転席から俺を振り返り、不敵に笑う。
「フラグって何のこと?」
「こっちの話」
何も知らない炎珠さんが目を丸くさせる。
俺は今夜何が起こっても気持ちだけはしっかり持っておこうと心に決め、慣れた様子でエントランスに向かう二人の後を追いかけた。
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