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第6話 発情期なんかじゃありません!
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「ふおぉぉ……最強パラダイス」
クレープ専門店「ミラクルポップ・クレープ」本店。生クリームにチョコソースにアイスにフルーツ。色々な組み合わせの写真がずらりと並ぶメニューを手に、俺は口の中をヨダレでいっぱいにしながらさっきの炎珠さんのように目を輝かせた。
「ど、どれにしよう!」
「美味しそうだけど、お昼前に食べたらお腹いっぱいになりそうだね。俺はシンプルなやつでいいかな。刹はどうする? ツナサラダとかもあるよ」
「見てるだけで充分だわ。にゃん太の一口もらうからいい」
念のため、前に刹がくれた半額割引券を持ってきていて良かった。
「じゃあ俺は、チョコアイスと生クリームカスタードでお願いします!」
巨大クラッカーのような形をした、出来立てのクレープ。溢れそうなほどの生クリームにチョコソースとクラッシュナッツもまぶされていて、上機嫌になった俺は近くの休憩スペースに座って早速スプーンをそこへ埋めた。
「那由太って甘党なんだね。俺も嫌いじゃないけど、そこまでごってりしたのは食べられないなぁ」
「特別クレープが好きなんです。温かい生地と冷たいアイスのコラボが我慢ならないくらいに美味しくて……」
ホット&クールの組み合わせなら、アイスと良く合うフォンダンショコラやワッフル、トーストなどもあるけれど。クレープの場合はその他にも生クリームやカスタードなどがこれでもかというくらいに詰まっているから、余計に好きなのだ。
「あ、でも一番好きなのはシンプルにチョコケーキなんです。1ホール丸ごと抱えて食べるのが子供の頃の夢だったんですよ」
可愛い夢だなぁ、と炎珠さんが笑う。
「でもクレープ本当に美味しいです。久々に食べたから余計に」
「一口食わせろよ」
「え」
横から刹に言われ、俺は嫌な予感に駆られながらも彼の口元へとクレープを差し出した。
「……ああぁっ!」
ガブ。一口どころか続けて二度、ガブ、ガブ。第一層目の生クリームを殆ど削られ、しかもがさつな食べ方のせいで破れた生地の隙間から溶けたアイスやカスタードがだらだら溢れてきた。
「何するんですか、刹っ!」
「甘」
「………」
口周りに付いたクリームを舌で舐めながら、全く悪びれた様子もなく刹が顔を顰める。
「刹、それ人として絶対やっちゃいけないやつだよ。那由太に嫌われても知らないよ」
流石の炎珠さんも引いている様子だ。
半分近く持って行かれたクレープを手に意気消沈していると、刹が俺の肩に腕を回して低く笑った。
「後でお前専用のケーキ買ってやるから、子供の頃の夢を叶えろよ」
「……刹って、酷いんだか優しいんだかよく分からないです」
「優しいだろ?」
「っ……う、……」
俺の肩を抱いたままぐいぐいと顔を近付けてくる刹。そのクマ付きの三白眼に見つめられると、まるで催眠術にかかったように体が硬くなり何も言えなくなってしまう……。
クレープ専門店「ミラクルポップ・クレープ」本店。生クリームにチョコソースにアイスにフルーツ。色々な組み合わせの写真がずらりと並ぶメニューを手に、俺は口の中をヨダレでいっぱいにしながらさっきの炎珠さんのように目を輝かせた。
「ど、どれにしよう!」
「美味しそうだけど、お昼前に食べたらお腹いっぱいになりそうだね。俺はシンプルなやつでいいかな。刹はどうする? ツナサラダとかもあるよ」
「見てるだけで充分だわ。にゃん太の一口もらうからいい」
念のため、前に刹がくれた半額割引券を持ってきていて良かった。
「じゃあ俺は、チョコアイスと生クリームカスタードでお願いします!」
巨大クラッカーのような形をした、出来立てのクレープ。溢れそうなほどの生クリームにチョコソースとクラッシュナッツもまぶされていて、上機嫌になった俺は近くの休憩スペースに座って早速スプーンをそこへ埋めた。
「那由太って甘党なんだね。俺も嫌いじゃないけど、そこまでごってりしたのは食べられないなぁ」
「特別クレープが好きなんです。温かい生地と冷たいアイスのコラボが我慢ならないくらいに美味しくて……」
ホット&クールの組み合わせなら、アイスと良く合うフォンダンショコラやワッフル、トーストなどもあるけれど。クレープの場合はその他にも生クリームやカスタードなどがこれでもかというくらいに詰まっているから、余計に好きなのだ。
「あ、でも一番好きなのはシンプルにチョコケーキなんです。1ホール丸ごと抱えて食べるのが子供の頃の夢だったんですよ」
可愛い夢だなぁ、と炎珠さんが笑う。
「でもクレープ本当に美味しいです。久々に食べたから余計に」
「一口食わせろよ」
「え」
横から刹に言われ、俺は嫌な予感に駆られながらも彼の口元へとクレープを差し出した。
「……ああぁっ!」
ガブ。一口どころか続けて二度、ガブ、ガブ。第一層目の生クリームを殆ど削られ、しかもがさつな食べ方のせいで破れた生地の隙間から溶けたアイスやカスタードがだらだら溢れてきた。
「何するんですか、刹っ!」
「甘」
「………」
口周りに付いたクリームを舌で舐めながら、全く悪びれた様子もなく刹が顔を顰める。
「刹、それ人として絶対やっちゃいけないやつだよ。那由太に嫌われても知らないよ」
流石の炎珠さんも引いている様子だ。
半分近く持って行かれたクレープを手に意気消沈していると、刹が俺の肩に腕を回して低く笑った。
「後でお前専用のケーキ買ってやるから、子供の頃の夢を叶えろよ」
「……刹って、酷いんだか優しいんだかよく分からないです」
「優しいだろ?」
「っ……う、……」
俺の肩を抱いたままぐいぐいと顔を近付けてくる刹。そのクマ付きの三白眼に見つめられると、まるで催眠術にかかったように体が硬くなり何も言えなくなってしまう……。
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