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第5話 お客さんが来る!

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「それに幸嶋さんと俺達は、昔からPdMCの外でも親しくしてる旧知の仲だ。途中で居眠りするレベルの気楽な気持ちでいれば良い」
「……う、うん。分かった」

 刹の言葉に多少励まされた俺は、濡れた手を拭いてからリビングへ戻った。

「那由太、お客さん来ても固くならなくていいよ。変に良く見せようとしなくてもいいから、自然にね」
 同じことを炎珠さんからも言われて、思わず苦笑してしまう。俺の緊張はやっぱり周りにも伝わっているみたいだ。


「よし、準備完了! 後は皆を迎えるだけだ」
 炎珠さんがエプロンを外したその時、リビングにインターホンの音が鳴り響いた。いよいよ来たのだ。「ペット」を連れた「ご主人」が。

「はいはい、空いてるからどうぞ入って!」
 モニターで炎珠さんが対応したと同時に、玄関の方が騒がしくなる。二人分の足音。お喋りの声──心臓が爆発しそうだ。


「炎珠さん、刹っちゃん!」
「わっ、華深カフカ。よく来てくれたね、元気?」
 リビングに入って来るなり満面の笑みで炎珠さんに抱き付いた美青年。ライトパープルの髪にドクロプリントの白いTシャツ。華深と呼ばれた彼のことは知っている──つい先日PdMCのサイト画像で見た美青年だ。

 そして、彼のご主人は。

「那由太、しっかりやってるか」
「ヒッ……!」
 突然背後から背中を叩かれて、驚いた俺はその場で軽く飛び上がってしまった。

 振り向いた先にいたのは忘れもしない、俺を炎珠さんと刹に引き合わせた張本人・幸嶋栄治だ。初めて会ったあの夜と同じようなスーツ姿で、相変わらず見上げるほど背が高い。

「……こ、幸嶋さん。その節はどうも、お世話になりまして」
「上手くやってるならいいってことさ。それより似合ってるな、その服」
「これは違いますっ、俺の趣味じゃなくて!」
 口元に軽く握った拳を添えて、クックと笑う幸嶋さん。誰の趣味であるのかは勿論分かっているようだ。

「幸嶋さん」
「おお、刹坊や元気か。炎珠も変わりなさそうだな」
 刹と炎珠さんの順で握手をした幸嶋さんが、華深を自分の隣に立たせて肩に腕を回した。

「華深。彼が那由太だ。炎珠と刹のペット……猫だったか?」
「よろしくな、那由太! 俺は華深、栄治さんのペットだよ」
「は、はい。よろしくお願いします、那由太です」
 差し出された華深の手をぎこちなく握る。サイトの画像で見た美しい笑顔が現実として目の前にあると思うと、何だか照れ臭い。

「炎珠、後は誰が来るんだ?」
「二人だけだよ。本当はもっと呼ぼうかと思ったけど、那由太が緊張しちゃうから今回は少人数で」
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