上 下
39 / 59
sunny day

1

しおりを挟む
 良くも悪くも恋愛の力というのは、こういうものなのだろう。
 俺は蒼汰と体で結ばれて以来、今までより明らかに違うテンションで毎日を過ごしていた。早起きも苦にならず、料理にもいつになく気合が入り、父さんと武虎の前でもよく笑う。面倒なことも進んでやったし、一人の夜でも不安になんてならなかった。
 俺には蒼汰がいる。心の支えがある。それを思えば何でも頑張れた。まるで思春期の中学生女子みたいだ。今が楽しくて仕方ない。この幸せが一生涯続くと、根拠もないのについ思い込んでは含み笑いしてしまう。
 今までは考えたくなかった自分の将来も、傍に蒼汰がいてくれるかと思うと何もかもが薔薇色に輝き出す。それは妄想に近い想像だけれど、俺を奮い立たせるには充分な力を持っていた。気付けば俺は、あれほど日課としていた深夜の公園へ行かなくなっていたのだ。
「つばさって、変。最近ずーっとニコニコしてる」
「そうかな。でも、ニコニコしてた方が武虎も嬉しいだろ?」
「うん。そう思う」
 今日は日曜。天気は良好。たまたま武虎のサッカークラブが休みで、前から行ってみたいと言っていた動物園に来ている。武虎はお気に入りの青いキャップと緑色の小さなリュックを背負っていて、それはもう見るからに愛らしかった。
「ゾウ凄かったな」
「凄かった! リンゴ食べてるとこ初めて見た」
「後は何が良かった?」
「パンダと、白クマ。可愛かった」
 色々な種類の猿やリスなども見たし、ヤギに餌もやったし、ウサギも抱いた。今は昼飯の途中だ。作ってきた弁当を広げて芝生に座り、遠目にキリンを眺めている。
「なぐも。キリンって、恐竜から生まれた?」
 シャケのおにぎりを齧りながら、武虎が俺を見上げて言った。
「え、何で?」
「キリンみたいな恐竜見たよ、テレビで」
「ブラキオサウルスか。確かに似てるけど、多分違うんじゃないかな」
「ヘビって、どうやって歩いてるの?」
「う、うーん……」
 思った疑問をそのまま口にする武虎に、俺は困りっ放しだ。こんなことなら、動物園に行くと決まった昨夜のうちに色々と勉強しておけば良かった。
「お待たせ」
 困っているところに、ようやく戻って来た救世主。彼の手には缶ジュースが三本と、首には、園内で人気の動物型バケツに入ったポップコーンがぶら下がっている。
「蒼汰先生!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので

こじらせた処女
BL
 大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。  とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

無理やりお仕置きされちゃうsubの話(短編集)

みたらし団子
BL
Dom/subユニバース ★が多くなるほどえろ重視の作品になっていきます。 ぼちぼち更新

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...