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正直言って、蒼汰は格好良かった。
ハロウィンについて語る楽しそうな笑顔も、友達同士みたいに子供とじゃれ合っているのも、低い声で発せられる流暢な英語も。
密かに生徒全員分のハロウィンカードを作っていたことも、それとなく引っ込み思案な子の隣に行って笑わせてやっているところも、絵が下手だと子供達にからかわれて照れ臭そうにしているところも。
「先生、先生。まだ帰りたくないよ」
「私も、ハロウィンの歌また歌いたい」
「蒼汰先生、もっと遊んで」
小さなモンスター達が蒼汰に群がっているのを見て、俺は苦笑した。体によじ登られるのを阻止したり女の子に腕を引っ張られて大袈裟に痛がったりする蒼汰は、あの夜、俺の体に触れていた蒼汰とは別人のようだった。
俺だって楽しいのだ、子供達はもっと楽しいだろう。蒼汰が慕われている理由がよく分かった。
……そして、俺自身が蒼汰に惹かれ始めていることも。
「つばさ、楽しいね!」
「良かったな、武虎」
最後にもう一度歌を歌ってから、午後六時、いつもより遅い時間にパーティーはお開きとなった。写真も沢山撮ったし、大量に作った俺のクッキーも全て捌けた。
「それじゃあ、また来週。暗いから気を付けて帰るんだぞ」
「蒼汰先生、バイバイ!」
「楽しかった、先生バイバイ! つばさもバイバイ!」
迎えに来た保護者の人達が、それぞれの我が子と手を繋いで教室を出て行く。蒼汰は若い母親からの熱っぽい視線を受けながら教室の出口で一人一人と握手をし、最後の生徒を見送った後で大きく溜息をついた。
「はあ、疲れた。けど問題なく終わって良かった。協力ありがとうな翼、お疲れ様」
「お疲れ。武虎も良かったな、楽しかっただろ」
「楽しかった! 蒼汰先生の話と、歌とゲームと、つばさがいてくれたのが楽しかった。あと、先生のゾンビかっこよかった!」
「武虎も翼も、最後まで残ってくれてありがとうな。何かお礼しないとな」
その言葉に俺は、武虎のミイラを褒めてくれた蒼汰の言葉を思い出した。
「お礼したいのは俺の方だよ。本当に助かった、ありがとう」
「先生、おれもありがとう!」
「いいって」
「あのさ、良かったらでいいんだけど……」
もしかしたら迷惑かもしれないと思いながらも、俺は意を決して蒼汰に訊いてみることにした。
「良かったら、うちで夕飯一緒にどうかな」
「え?」
「蒼汰先生、うちに来るの? やった!」
飛び跳ねる武虎の横で、俺は恥ずかしさに赤面する。感謝の気持ちを表したいのは事実だけど、これではまるで蒼汰を「誘っている」みたいだ。
「お邪魔しちゃっていいのかな」
案の定、蒼汰がどこか意味ありげな笑みを俺に向ける。
「戸締りもしたし、飾りの片付けは明日ゆっくりやればいいか」
「やったぁ! 蒼汰先生、早く! 早く!」
そうして武虎が右手に俺の手を、左手に蒼汰の手をしっかりと握りしめる。俺は陽の落ちた十月最後の金曜日の空を、どこか落ち着かない気持ちで見上げた。
ハロウィンについて語る楽しそうな笑顔も、友達同士みたいに子供とじゃれ合っているのも、低い声で発せられる流暢な英語も。
密かに生徒全員分のハロウィンカードを作っていたことも、それとなく引っ込み思案な子の隣に行って笑わせてやっているところも、絵が下手だと子供達にからかわれて照れ臭そうにしているところも。
「先生、先生。まだ帰りたくないよ」
「私も、ハロウィンの歌また歌いたい」
「蒼汰先生、もっと遊んで」
小さなモンスター達が蒼汰に群がっているのを見て、俺は苦笑した。体によじ登られるのを阻止したり女の子に腕を引っ張られて大袈裟に痛がったりする蒼汰は、あの夜、俺の体に触れていた蒼汰とは別人のようだった。
俺だって楽しいのだ、子供達はもっと楽しいだろう。蒼汰が慕われている理由がよく分かった。
……そして、俺自身が蒼汰に惹かれ始めていることも。
「つばさ、楽しいね!」
「良かったな、武虎」
最後にもう一度歌を歌ってから、午後六時、いつもより遅い時間にパーティーはお開きとなった。写真も沢山撮ったし、大量に作った俺のクッキーも全て捌けた。
「それじゃあ、また来週。暗いから気を付けて帰るんだぞ」
「蒼汰先生、バイバイ!」
「楽しかった、先生バイバイ! つばさもバイバイ!」
迎えに来た保護者の人達が、それぞれの我が子と手を繋いで教室を出て行く。蒼汰は若い母親からの熱っぽい視線を受けながら教室の出口で一人一人と握手をし、最後の生徒を見送った後で大きく溜息をついた。
「はあ、疲れた。けど問題なく終わって良かった。協力ありがとうな翼、お疲れ様」
「お疲れ。武虎も良かったな、楽しかっただろ」
「楽しかった! 蒼汰先生の話と、歌とゲームと、つばさがいてくれたのが楽しかった。あと、先生のゾンビかっこよかった!」
「武虎も翼も、最後まで残ってくれてありがとうな。何かお礼しないとな」
その言葉に俺は、武虎のミイラを褒めてくれた蒼汰の言葉を思い出した。
「お礼したいのは俺の方だよ。本当に助かった、ありがとう」
「先生、おれもありがとう!」
「いいって」
「あのさ、良かったらでいいんだけど……」
もしかしたら迷惑かもしれないと思いながらも、俺は意を決して蒼汰に訊いてみることにした。
「良かったら、うちで夕飯一緒にどうかな」
「え?」
「蒼汰先生、うちに来るの? やった!」
飛び跳ねる武虎の横で、俺は恥ずかしさに赤面する。感謝の気持ちを表したいのは事実だけど、これではまるで蒼汰を「誘っている」みたいだ。
「お邪魔しちゃっていいのかな」
案の定、蒼汰がどこか意味ありげな笑みを俺に向ける。
「戸締りもしたし、飾りの片付けは明日ゆっくりやればいいか」
「やったぁ! 蒼汰先生、早く! 早く!」
そうして武虎が右手に俺の手を、左手に蒼汰の手をしっかりと握りしめる。俺は陽の落ちた十月最後の金曜日の空を、どこか落ち着かない気持ちで見上げた。
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