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亜利馬、恋愛について少し考える
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「あ、いた。夕兎さん!」
「……ブレイズの亜利馬。せ、先日は悪かったな。飯代だろ、返す」
「え? ああ、そんなの気にしないでください。今日はちゃんとご飯食べてるんですね、良かった。そうだ、今度またゆっくり恋愛の話聞かせてくださいよ!」
「う、うるさい。その話は無しだ、馬鹿め……!」
今日の夕兎は倉庫──ではなく、ちゃんと始めから社食で食事をしていた。隣には怜王、正面には秋常もいる。そういえば今日は三人一緒でフリーズの写真撮影をしていると海原さんが言っていたっけ。
「何、夕兎ってば亜利馬くんに食事ご馳走になった上に恋バナしたの? しかもお金払ってないとか、処刑レベルの大罪なんだけど。今夜はお仕置きだからね」
「う、……」
「違いますよ秋常さん。俺が無理に誘ったんです」
「そ、そうだったんですか? 亜利馬くん、次は俺のことも誘ってくださいよ!」
「あはは。──それより皆さん、次の企画のこと聞きましたっ?」
「あ、ああ……少しだけな。会場を貸し切ってショーみたいなことをやるとか……」
「お客さん入るんですって! 緊張するけど、めちゃくちゃ面白そうじゃないですかっ?」
三人が食事の手を止め、唖然とした顔で俺を見ている。
「衣装も色んなの着れるみたいだし、スポット浴びて演技して、……もしかして舞台みたいな演劇なんですかね? 俺、王子様の役がいいなぁ……あ、でもチビだから無理か。うわあでもわくわくするっ!」
今朝聞いたばかりの、獅琉が山野さんから仕入れてきたこの情報。今回もブレイズとフリーズの合同撮影で、仮のタイトルは「Burning Ice」というまさにコラボっぽいものらしい。豪華なセットが組まれたステージ上で、大勢の観客に見られて……。
「ああぁ、配役とか早く知りたいなぁ。台詞も覚えないといけないし、みんなで稽古も必要ですもんね。お客さんも全員エキストラみたいですけど、本当のファンの人が応募して来るみたいですし……ファンイベントみたいなのもあったらいいなあ……」
うっとりと目を閉じて妄想に耽る俺に対し、申し訳なさそうに言ったのは秋常だった。
「あの、……亜利馬くん。その企画って、演劇じゃないみたいだよ」
「え、……そ、そうなんですか?」
うどんを啜っていた怜王が頷き、秋常と同じようにバツの悪そうな顔で言う。
「俺達もまだ触りだけしか聞いていないが、その……俺達三人は『ブレイズの亜利馬をめちゃくちゃにしてやれ』と……」
「え……ええぇっ?」
*
「し、しりゅうさん……!」
「はーい。……って、亜利馬っ? どうしたのっ?」
全力疾走でマンションへ戻ってきた俺は、膝に手をつき肩で息をしながら獅琉の部屋を訪ねた。汗もやばいし心臓がはち切れそうだ。……だけど、そんなのどうでもいい。
取り敢えず冷たいお茶をグラスでもらって、俺は獅琉に勧められるままダイニングの椅子に腰を下ろした。
「あ、あの……今朝俺が出勤する前に言ってた『企画』の話ですけど……あれの詳細、もう一度教えてもらっていいですか?」
「え? うん。まだ全部決まってないみたいだから俺も少ししか知らないんだけど。えっと、撮影用のステージに観客を入れてショーをやるんだって。色々衣装チェンジして……イメージとしてはストリップみたいな?」
「……ストリップ」
「要は普通のセックスじゃなくて、ショー向けのセックスってことだよね。面白いと思うよ、いつもと違った感じでさ」
流石に獅琉はあっけらかんとしている。性に対して好奇心旺盛な彼の場合はどんな企画だって「面白いと思える」のだ。
「でもさっきフリーズのメンバーに会ってきましたけど、俺はそこでフリーズの皆さんからめちゃくちゃにされるって……」
「亜利馬はいつもめちゃくちゃにされてるじゃん」
「で、でも、怖いですよ」
「大丈夫だよ、ちゃんと全部台本通りにやるんだから。……それに、亜利馬をめちゃくちゃにするのはフリーズの彼らだけじゃなくて、もちろん俺達もだし」
「え? ブレイズのみんなも」
「……まだ決定事項じゃないから山野さんには口止めされてるんだけど……」
勿体ぶったような口調で言って、獅琉が笑った。ちょいちょいと手招きされ、体ごと獅琉の方へと傾ける。
「亜利馬は首輪つけて、お客さんの見てる前で俺達に連続イキさせられるかもしれないって……あはっ!」
「っ~~~~!」
首輪。連続イキ。大勢の見ている前で。ショー向けのセックス──めちゃくちゃに。
「……ど、……」
もはや恋人とか恋愛とか、そんなモンどうでもいい。
「どうしていつも俺は、そういうウケ役ばっかりなんだあぁ──ッ!」
「可愛いから仕方ないよね」
「獅琉さんのバカバカ! 少しは選んで仕事受けてくださいよっ!」
「えー、いいじゃん面白そうだし。それにブレイズの場合こっちが仕事選んでるんじゃなくて、向こうが俺達に合った仕事を作ってくれてるんだよ」
「……はあぁ……七人にめちゃくちゃされるなんて、もう絶対……絶対に風邪ひく。筋肉痛にもなるし、また顔に精液とかおしっこかけられるんだ……」
「まだ決まりじゃないから大丈夫だって。内容も出来るだけ亜利馬に負担かからないように、山野さんに相談してあげるからさ。当然メーカーだってモデルのこと考えてくれるんだから、亜利馬が嫌なことはされないよ」
ね、と獅琉が笑って、テーブルに顔を伏せた俺の背中を優しく撫でる。
「ほ、本当ですか獅琉さん……」
「うん。亜利馬の体を大事にするよ。……家族企画の撮影も、明日に控えてることだし」
「……わ、忘れてた……!」
何だか急にどっと疲れて、俺は仕方なく引き攣った笑みを浮かべた。
「……ブレイズの亜利馬。せ、先日は悪かったな。飯代だろ、返す」
「え? ああ、そんなの気にしないでください。今日はちゃんとご飯食べてるんですね、良かった。そうだ、今度またゆっくり恋愛の話聞かせてくださいよ!」
「う、うるさい。その話は無しだ、馬鹿め……!」
今日の夕兎は倉庫──ではなく、ちゃんと始めから社食で食事をしていた。隣には怜王、正面には秋常もいる。そういえば今日は三人一緒でフリーズの写真撮影をしていると海原さんが言っていたっけ。
「何、夕兎ってば亜利馬くんに食事ご馳走になった上に恋バナしたの? しかもお金払ってないとか、処刑レベルの大罪なんだけど。今夜はお仕置きだからね」
「う、……」
「違いますよ秋常さん。俺が無理に誘ったんです」
「そ、そうだったんですか? 亜利馬くん、次は俺のことも誘ってくださいよ!」
「あはは。──それより皆さん、次の企画のこと聞きましたっ?」
「あ、ああ……少しだけな。会場を貸し切ってショーみたいなことをやるとか……」
「お客さん入るんですって! 緊張するけど、めちゃくちゃ面白そうじゃないですかっ?」
三人が食事の手を止め、唖然とした顔で俺を見ている。
「衣装も色んなの着れるみたいだし、スポット浴びて演技して、……もしかして舞台みたいな演劇なんですかね? 俺、王子様の役がいいなぁ……あ、でもチビだから無理か。うわあでもわくわくするっ!」
今朝聞いたばかりの、獅琉が山野さんから仕入れてきたこの情報。今回もブレイズとフリーズの合同撮影で、仮のタイトルは「Burning Ice」というまさにコラボっぽいものらしい。豪華なセットが組まれたステージ上で、大勢の観客に見られて……。
「ああぁ、配役とか早く知りたいなぁ。台詞も覚えないといけないし、みんなで稽古も必要ですもんね。お客さんも全員エキストラみたいですけど、本当のファンの人が応募して来るみたいですし……ファンイベントみたいなのもあったらいいなあ……」
うっとりと目を閉じて妄想に耽る俺に対し、申し訳なさそうに言ったのは秋常だった。
「あの、……亜利馬くん。その企画って、演劇じゃないみたいだよ」
「え、……そ、そうなんですか?」
うどんを啜っていた怜王が頷き、秋常と同じようにバツの悪そうな顔で言う。
「俺達もまだ触りだけしか聞いていないが、その……俺達三人は『ブレイズの亜利馬をめちゃくちゃにしてやれ』と……」
「え……ええぇっ?」
*
「し、しりゅうさん……!」
「はーい。……って、亜利馬っ? どうしたのっ?」
全力疾走でマンションへ戻ってきた俺は、膝に手をつき肩で息をしながら獅琉の部屋を訪ねた。汗もやばいし心臓がはち切れそうだ。……だけど、そんなのどうでもいい。
取り敢えず冷たいお茶をグラスでもらって、俺は獅琉に勧められるままダイニングの椅子に腰を下ろした。
「あ、あの……今朝俺が出勤する前に言ってた『企画』の話ですけど……あれの詳細、もう一度教えてもらっていいですか?」
「え? うん。まだ全部決まってないみたいだから俺も少ししか知らないんだけど。えっと、撮影用のステージに観客を入れてショーをやるんだって。色々衣装チェンジして……イメージとしてはストリップみたいな?」
「……ストリップ」
「要は普通のセックスじゃなくて、ショー向けのセックスってことだよね。面白いと思うよ、いつもと違った感じでさ」
流石に獅琉はあっけらかんとしている。性に対して好奇心旺盛な彼の場合はどんな企画だって「面白いと思える」のだ。
「でもさっきフリーズのメンバーに会ってきましたけど、俺はそこでフリーズの皆さんからめちゃくちゃにされるって……」
「亜利馬はいつもめちゃくちゃにされてるじゃん」
「で、でも、怖いですよ」
「大丈夫だよ、ちゃんと全部台本通りにやるんだから。……それに、亜利馬をめちゃくちゃにするのはフリーズの彼らだけじゃなくて、もちろん俺達もだし」
「え? ブレイズのみんなも」
「……まだ決定事項じゃないから山野さんには口止めされてるんだけど……」
勿体ぶったような口調で言って、獅琉が笑った。ちょいちょいと手招きされ、体ごと獅琉の方へと傾ける。
「亜利馬は首輪つけて、お客さんの見てる前で俺達に連続イキさせられるかもしれないって……あはっ!」
「っ~~~~!」
首輪。連続イキ。大勢の見ている前で。ショー向けのセックス──めちゃくちゃに。
「……ど、……」
もはや恋人とか恋愛とか、そんなモンどうでもいい。
「どうしていつも俺は、そういうウケ役ばっかりなんだあぁ──ッ!」
「可愛いから仕方ないよね」
「獅琉さんのバカバカ! 少しは選んで仕事受けてくださいよっ!」
「えー、いいじゃん面白そうだし。それにブレイズの場合こっちが仕事選んでるんじゃなくて、向こうが俺達に合った仕事を作ってくれてるんだよ」
「……はあぁ……七人にめちゃくちゃされるなんて、もう絶対……絶対に風邪ひく。筋肉痛にもなるし、また顔に精液とかおしっこかけられるんだ……」
「まだ決まりじゃないから大丈夫だって。内容も出来るだけ亜利馬に負担かからないように、山野さんに相談してあげるからさ。当然メーカーだってモデルのこと考えてくれるんだから、亜利馬が嫌なことはされないよ」
ね、と獅琉が笑って、テーブルに顔を伏せた俺の背中を優しく撫でる。
「ほ、本当ですか獅琉さん……」
「うん。亜利馬の体を大事にするよ。……家族企画の撮影も、明日に控えてることだし」
「……わ、忘れてた……!」
何だか急にどっと疲れて、俺は仕方なく引き攣った笑みを浮かべた。
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