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亜利馬、落ちた先はセクハラ大地獄
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家族の週末といえば遠出、遠出といえばドライブ。ということで翌日、俺達は竜介の車で都内にある近場のショッピングモールへと向かった。海でのコラボ撮影を終えたばかりだから、今日からほんの数日だけ五人揃っての休みをもらえたのだ。このチャンスを使わない手はない。
「何買おうかなぁ、夏物の服はもうあるし、秋物は早いし。服は取り敢えず必要ないかな?」
「亜利馬、ゲーム買えゲーム。そんで俺に貸せ」
「自分で買ってくださいよ、ゲームくらい……」
「それじゃあまずは、亜利馬の服を見に行こう!」
「えっ、いま『必要ない』って言ったのにですか?」
獅琉が俺の背中を押して、いいからいいから、とエレベーターへ導く。着いた先は四階、婦人服売り場だ。どうして女性物のフロアに連れて来られたのかまだ分からず、俺は獅琉の黒い笑顔を茫然と見上げて言った。
「あの、階間違ってませんか?」
「間違ってないよ。ほら、この店。可愛くて亜利馬にぴったりだと思うんだ」
「えぇっ!」
獅琉が指したのは、ピンクでフリルでリボンでレースで……いわゆるロリータブランドとして有名な服屋だった。
「い、嫌です! 俺、女装は嫌なんですっ!」
「女装じゃないよ、衣装だよっ」
絵描き歌みたいな節で歌って、獅琉が強引に俺の腕を引いて店内へと入る。ちなみに後の三人は当然付いて来ていなくて、四階の休憩スペースでくつろいでいる。
「嫌です獅琉さんっ、勘弁してくださいってばぁ!」
「亜利馬、大声出すと余計に目立つよ。彼女へのプレゼントっていう設定で堂々としてれば大丈夫だから」
「そういう問題じゃなくて、結果的に俺が着ることになるのが嫌なんですって!」
「じゃあ俺も一緒に着るから」
「そ……それはそれで怖いです」
結局獅琉の暴走モードを止めることはできず、俺は縮こまって俯きながら獅琉の後を付いて行った。──何だかいい匂いがする。目に映るもの全てがメルヘンでファンタジーで、そりゃあ俺だって見ている分には可愛いと思うけれど……
「あ、これなんか亜利馬に似合いそう。見て、ワンピース!」
ハンガーごと手に取って獅琉が見せてきたのは、キャミソールタイプのフリル盛りだくさんなワンピースだった。スカートの部分がヒラヒラで三段重ねになっていて、丈もかなり短い。ピンクと白のストライプ柄で、胸元には大きなリボンが付いていた。
「……何をどう見れば、俺にこれが似合うと思ったんです」
「うーん、流石に試着はできないもんね。亜利馬、ちゃんと背筋ピンして立ってみて」
「あ、あてがわないでくださいっ!」
「じゃああてなくていいから、ちょっとこれ持ってて」
それからヘッドドレス、イヤリング、ネックレス、サンダルまで……全てセットで押し付けられ、ついにはスカートの下に穿くフリフリの短いペチコートとかいう物まで持たされた。
「獅琉さん、あの……」
「すいません、これ全部ください!」
「獅琉さんッ?」
当然のこととして、店員のお姉さんに「プレゼント用ですか?」と訊かれた。お姉さんと同じくらいニコニコと笑いながら、獅琉が「はい、ここにいる彼に」と返す。
「………」
「……えっと、サイズは大丈夫ですか?」
「ええ、この子なら女性のLサイズで大丈夫だと思います」
俺はもう顔が真っ赤で、店内にいる他のお客さんの視線も浴びながら、いっそのこと消えてしまいたいと思った。こんなの公開処刑じゃないか。
「あんなに薄い生地なのに、意外と値段は高いんだねぇ。亜利馬のためとはいえびっくりしちゃったよ」
「……獅琉さんの馬鹿」
「何買おうかなぁ、夏物の服はもうあるし、秋物は早いし。服は取り敢えず必要ないかな?」
「亜利馬、ゲーム買えゲーム。そんで俺に貸せ」
「自分で買ってくださいよ、ゲームくらい……」
「それじゃあまずは、亜利馬の服を見に行こう!」
「えっ、いま『必要ない』って言ったのにですか?」
獅琉が俺の背中を押して、いいからいいから、とエレベーターへ導く。着いた先は四階、婦人服売り場だ。どうして女性物のフロアに連れて来られたのかまだ分からず、俺は獅琉の黒い笑顔を茫然と見上げて言った。
「あの、階間違ってませんか?」
「間違ってないよ。ほら、この店。可愛くて亜利馬にぴったりだと思うんだ」
「えぇっ!」
獅琉が指したのは、ピンクでフリルでリボンでレースで……いわゆるロリータブランドとして有名な服屋だった。
「い、嫌です! 俺、女装は嫌なんですっ!」
「女装じゃないよ、衣装だよっ」
絵描き歌みたいな節で歌って、獅琉が強引に俺の腕を引いて店内へと入る。ちなみに後の三人は当然付いて来ていなくて、四階の休憩スペースでくつろいでいる。
「嫌です獅琉さんっ、勘弁してくださいってばぁ!」
「亜利馬、大声出すと余計に目立つよ。彼女へのプレゼントっていう設定で堂々としてれば大丈夫だから」
「そういう問題じゃなくて、結果的に俺が着ることになるのが嫌なんですって!」
「じゃあ俺も一緒に着るから」
「そ……それはそれで怖いです」
結局獅琉の暴走モードを止めることはできず、俺は縮こまって俯きながら獅琉の後を付いて行った。──何だかいい匂いがする。目に映るもの全てがメルヘンでファンタジーで、そりゃあ俺だって見ている分には可愛いと思うけれど……
「あ、これなんか亜利馬に似合いそう。見て、ワンピース!」
ハンガーごと手に取って獅琉が見せてきたのは、キャミソールタイプのフリル盛りだくさんなワンピースだった。スカートの部分がヒラヒラで三段重ねになっていて、丈もかなり短い。ピンクと白のストライプ柄で、胸元には大きなリボンが付いていた。
「……何をどう見れば、俺にこれが似合うと思ったんです」
「うーん、流石に試着はできないもんね。亜利馬、ちゃんと背筋ピンして立ってみて」
「あ、あてがわないでくださいっ!」
「じゃああてなくていいから、ちょっとこれ持ってて」
それからヘッドドレス、イヤリング、ネックレス、サンダルまで……全てセットで押し付けられ、ついにはスカートの下に穿くフリフリの短いペチコートとかいう物まで持たされた。
「獅琉さん、あの……」
「すいません、これ全部ください!」
「獅琉さんッ?」
当然のこととして、店員のお姉さんに「プレゼント用ですか?」と訊かれた。お姉さんと同じくらいニコニコと笑いながら、獅琉が「はい、ここにいる彼に」と返す。
「………」
「……えっと、サイズは大丈夫ですか?」
「ええ、この子なら女性のLサイズで大丈夫だと思います」
俺はもう顔が真っ赤で、店内にいる他のお客さんの視線も浴びながら、いっそのこと消えてしまいたいと思った。こんなの公開処刑じゃないか。
「あんなに薄い生地なのに、意外と値段は高いんだねぇ。亜利馬のためとはいえびっくりしちゃったよ」
「……獅琉さんの馬鹿」
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