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亜利馬、大ピンチ!
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「失礼します……」
「お疲れ様です。亜利馬くん」
「あ、秋常さん……」
倉庫と言っても通販用DVDの在庫やポスターなどが綺麗に収納されていて、中は広く綺麗だった。
脚立に腰掛けていた秋常が、俺を見てにこやかに笑っている。
「あの、怜王さんが……話があるとかで」
ドアの前に立っていた怜王が、俺が倉庫内に入ったのを確認してから内鍵をかけた。……何だか嫌な空気だ。
「本当はここ使ったら駄目って言われてるんですけど……話をするのにここしか空いてなかったので、座る場所もないけど許してくださいね」
「……夕兎さんは?」
「夕兎は別のスタジオで撮影中ですよ」
秋常の目と口元が、笑う形にニィッと細くなる。それは綺麗であることに変わりはないが、何となく──人を化かしている時のキツネのような顔だった。
「それで、お話って何ですか?」
仕方なく立ったまま問いかけると、
「ブレイズさんとフリーズのコラボ撮影が来週に決まった話は、もう山野さんから行ってますか?」
「えっ?」
初耳だった。顔合わせの時だって「しばらく先になる」と言っていたから、早くても今年中とかそういう規模で考えていたのに。
「聞いてないです。本当ですか?」
「じゃあ、今日にでも行くかもしれないですね。口を滑らせちゃった可能性もあるので、一応山野さんから話があるまでは秘密でお願いします」
それは別に構わないのだけど、どうしてブレイズよりも先にフリーズに話が行っているのだろう。こういうのはまず初めに山野さんから獅琉に話が行くことになっている。または、両リーダーに同時に知らせるはずだ。こちらが何も聞いていないというのは、ありえない。
「………」
「ウチのリーダーが絡む相手はやっぱり、そちらのリーダーの獅琉さんみたいです。ただ俺と怜王の相手役がまだ分からないので、……恐らくどちらかは亜利馬くんだろうということで、申し訳ないですが相性の確認をさせて頂こうかなと」
「そ、そんなの勝手にやっていいんですか?」
「モデル同士の『相性』を知っておけば、今後お互いのためにもなるでしょう。そちらにとっても悪い話ではないと思いますよ」
秋常の言っている言葉の意味は分かるけれど、いきなりそんな提案をされて簡単に受け入れられる訳がない。
要はこの場で俺とセックスをするということだ。──そんなの、おかしい。
「すいませんけど、そういうのは止めましょう。……例え相性が悪くても撮影に支障をきたさないのがプロだと思いますし」
「亜利馬くん、新人の割には立派な意見を持ってるんですね」
「し、失礼します。俺、帰ります」
秋常に背を向け、倉庫の内鍵へと手をかける──が、それを上から怜王が制し、捻るようにして手首を掴まれてしまった。
「……離してください」
「無理だな」
手首を掴んだまま、怜王が空いた手で俺の体を背後の棚へ突き飛ばす。
「……いってぇ……!」
「可愛いね亜利馬くん、初めて会った時から思ってたよ。その仲間意識の高さっていうか、純粋で、何も疑わないお気楽さ、子供っぽさ、頭の悪さ、……すっごい、俺の好み」
「………」
打った背中が痛くて顔を顰めながら秋常を見ると、さっきまでのにこやかな目が大きく見開かれていた。……ホラー映画みたいだ。
「お疲れ様です。亜利馬くん」
「あ、秋常さん……」
倉庫と言っても通販用DVDの在庫やポスターなどが綺麗に収納されていて、中は広く綺麗だった。
脚立に腰掛けていた秋常が、俺を見てにこやかに笑っている。
「あの、怜王さんが……話があるとかで」
ドアの前に立っていた怜王が、俺が倉庫内に入ったのを確認してから内鍵をかけた。……何だか嫌な空気だ。
「本当はここ使ったら駄目って言われてるんですけど……話をするのにここしか空いてなかったので、座る場所もないけど許してくださいね」
「……夕兎さんは?」
「夕兎は別のスタジオで撮影中ですよ」
秋常の目と口元が、笑う形にニィッと細くなる。それは綺麗であることに変わりはないが、何となく──人を化かしている時のキツネのような顔だった。
「それで、お話って何ですか?」
仕方なく立ったまま問いかけると、
「ブレイズさんとフリーズのコラボ撮影が来週に決まった話は、もう山野さんから行ってますか?」
「えっ?」
初耳だった。顔合わせの時だって「しばらく先になる」と言っていたから、早くても今年中とかそういう規模で考えていたのに。
「聞いてないです。本当ですか?」
「じゃあ、今日にでも行くかもしれないですね。口を滑らせちゃった可能性もあるので、一応山野さんから話があるまでは秘密でお願いします」
それは別に構わないのだけど、どうしてブレイズよりも先にフリーズに話が行っているのだろう。こういうのはまず初めに山野さんから獅琉に話が行くことになっている。または、両リーダーに同時に知らせるはずだ。こちらが何も聞いていないというのは、ありえない。
「………」
「ウチのリーダーが絡む相手はやっぱり、そちらのリーダーの獅琉さんみたいです。ただ俺と怜王の相手役がまだ分からないので、……恐らくどちらかは亜利馬くんだろうということで、申し訳ないですが相性の確認をさせて頂こうかなと」
「そ、そんなの勝手にやっていいんですか?」
「モデル同士の『相性』を知っておけば、今後お互いのためにもなるでしょう。そちらにとっても悪い話ではないと思いますよ」
秋常の言っている言葉の意味は分かるけれど、いきなりそんな提案をされて簡単に受け入れられる訳がない。
要はこの場で俺とセックスをするということだ。──そんなの、おかしい。
「すいませんけど、そういうのは止めましょう。……例え相性が悪くても撮影に支障をきたさないのがプロだと思いますし」
「亜利馬くん、新人の割には立派な意見を持ってるんですね」
「し、失礼します。俺、帰ります」
秋常に背を向け、倉庫の内鍵へと手をかける──が、それを上から怜王が制し、捻るようにして手首を掴まれてしまった。
「……離してください」
「無理だな」
手首を掴んだまま、怜王が空いた手で俺の体を背後の棚へ突き飛ばす。
「……いってぇ……!」
「可愛いね亜利馬くん、初めて会った時から思ってたよ。その仲間意識の高さっていうか、純粋で、何も疑わないお気楽さ、子供っぽさ、頭の悪さ、……すっごい、俺の好み」
「………」
打った背中が痛くて顔を顰めながら秋常を見ると、さっきまでのにこやかな目が大きく見開かれていた。……ホラー映画みたいだ。
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