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第19話 ミツバチと透明人間のお兄さん

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 一日の中でも好きな時間、それはシャワータイムだ。
 疲れた体に熱いお湯が気持ち良いし、体育で汗をかいた日などは体を洗うと本当にさっぱりする。

 部屋のユニットバスを使うのも良いけれど、この寮には生徒が誰でも利用できる大浴場がある。
 本当なら毎日ここでお風呂に入りたい。だけど前に俺が行った時、そこにいた生徒達と大変なアレコレになってしまって全然ゆっくりできなかった。

 俺が大浴場を使うのは早朝、皆がまだ寝静まっている時。
 熱いお湯と、天窓から入ってくる爽やかな朝の陽射し。早朝のお風呂は、それはそれは気持ち良いんだ。


「はあぁ、朝だけど生き返る~」
 今日も朝風呂でリフレッシュ。大きな浴槽に肩まで浸かった俺は、高い天井を見上げて心からの溜息をついた。

 と、――

「……ん?」

 ガラガラとドアが開き誰かが入って来た音がして、顔を向ける。……だけど、そこには誰もいない。
 気のせいかと思って再びお湯の中で目を閉じると、ちゃぽんとお湯が跳ねる音がした。

「ん? んんっ?」

 透明なお湯の中で、何だか体がもぞもぞするのを感じた。誰かの手で肌に触れられているような、撫でられているような不思議な感覚。

 確認しても、もちろん誰もいない。お湯は普段通りさらさらで、実はいつかのスライムでしたという訳でもなさそうだ。
「……わ、……?」
 ふいに、浴槽の中で座っていた俺の脚がパカッと開かれた。何もしていないのに突然、まるで誰かの手で割られたかのように……

「へ、……? あっ! あ、何っ……? だ、誰っ……!」
 開いた俺の脚の間に何かがある。透明で見えないけれど、確かに何かがある。現に俺の脚はソイツに当たるせいで、閉じることができないのだ。

「――や、あぁっ!」
 そして次の瞬間、お湯の中で俺のそれに強烈な刺激が走った。
「な、何なの、……あっ、あぁっ……!」
 この感覚を知っている。これは絶対にあれだ、……誰かが俺のペニスをしゃぶっている感覚だ。

「やだ、……やっ、誰だよ、ぉ……! あ、あぁ……」
 見れば俺のそこは恥ずかしいくらいに反応していた。
 強引に脚を開かされて、お湯の中でエッチなことをされている――こんなの、どう対処していいのか分からない。
「んんっ……!」
 俺は浴槽縁に手をかけ、思い切ってお湯から上がった。変な刺激から解放され、混乱した頭でシャワーがある洗い場の方へと向かう。

 お湯の中は危険だ。今日の所はもう入らないでおこう……。


 *****


 透明になれる薬をとあるルートから入手したは良いが、蜜羽がなかなか一人にならないからこの一か月はずっとやきもきしていた。

 そして一か月という長い時間を経て手に入れたチャンス。運良く蜜羽が一人で朝風呂に入るという場面に遭遇することができたのだった。

 思わず興奮してお湯の中でフェラしてしまったが、当然のことながら蜜羽を怯えさせてしまったみたいだ。
 ちゃんと丁寧に優しく、安心させながら触れてあげないと。

 洗い場に移動し、立ったままシャワーを浴びている蜜羽。全裸の妖精はさっきの怪現象をすっかり忘れているのか、調子っぱずれな鼻歌を歌っている。

 俺はその背後からそっと近付き、できるだけ優しい手付きで脇腹から入れた両手で蜜羽の胸を撫でた。
「うわっ、また……?」
 濡れた体は熱い。触れた胸も、摘まんだ乳首も。
「や、何……乳首、やだっ……」


 *****

 湯船の中で感じた変な刺激と同じものが、今度は俺の乳首に起きている。どう考えても誰かの指で摘ままれて、くりくりされている。
 俺の大好きな刺激だけど、誰もいないのに感覚だけがあるというのは怖すぎる。

「も、もしかして幽霊……あぁっ、あ……つねらないで、……やぁっ!」

 そういえば聞いたことがある。花見が丘学園の七不思議。
 大浴場に一人でいると、お風呂が好きな幽霊にイタズラされる――とか、何とか。

「い、今まで全然大丈夫だったのに、何で急に……あぁっ、や、ちょっと……!」
 ぬるぬるの感触が乳首にまとわりつく。舐められている……。
「あんっ、……あ、エッチな幽霊、ってこと……? や、あ……、吸わ、ないでっ……」

 透明な舌で転がされれば乳首が上下に揺れ、透明な唇で吸われれば乳首が引っ張られたように少しだけ伸びる。
 こんな風に愛撫されている最中の乳首をよく見るのは初めてだ。

「ひっ、あぁ……!」
 乳首に気を取られていたら、突然ペニスが握られた。
「あぁっ、あ……しごかれて、る、うぅ……!」
 体がビクビク痙攣し、俺は立っていられずバススツールに座り込んだ。


 *****

 座り込んでしまった蜜羽の脚を今一度大きく開かせて、可愛いペニスをぱくりと咥える。
「あぁ、っあ……!」
 ついでに乳首を指でぷにぷにし、何度も頭を上下させて蜜羽の甘い汁を啜る。
「が、がっつきすぎ……だよ……! もっと優しく、ぅ……!」

 蜜羽の言葉にはっとして、俺は彼から体を離した。
 丁寧にすると誓ったはずなのに、俺はまた思わず乱暴を……。

「ごめんよ蜜羽、優しくする」
「え? え、……そ、その声……誰? 幽霊?」
 しまった。つい声を出してしまった。

「ほ、本当に幽霊なの……? 何でこんなことを……」
「……ええと……。俺は、……そうだ、エッチなことをすれば成仏できる幽霊なんだ」
「本当に?」
 蜜羽が疑いの目で宙を見ている。ここまできたらもう、自棄だ。
「本当さ。だから蜜羽くん、俺のお願いを聞いてくれ……」


 ******

 エッチなことをすれば成仏できると聞いて、俺は仕方なく呟いた。
「別にいいけど、……」
 腕を引かれる感覚があって、俺は立ち上がった。
 後ろから抱きしめられたけれど、会話をして相手のことが分かったからかさっきよりは怖くない。
「や、優しくしてよ」

 すぐに俺のペニスが握られた。
「ふ、……う……」
 見えないから刺激がくるタイミングが分からない。分からないせいで、ちょっとドキドキしてしまう。

「――ひゃっ! あ、……お尻、急にっ……」
 指が入ってくる感覚。中でぐりぐりされている感覚。俺の弱いところを押されてくすぐられて、擦られて……
「んあっ、あ……! 気持ち、いいっ……!」

 お尻の中を弄られるのと同時にペニスも扱かれて、俺は壁に固定されているシャワーヘッドに両手をかけ震える体を支えた。

「はあぁ、……あ、ん……!」
 仰け反らせた背中にべろりと舌が這う。ペニスから離れた手が乳首を転がし、ツー、と指が下りて来て、俺のヘソを優しくくすぐる。
「ん、あ……もう、……ふあぁっ……、あ……」
 ぞくぞくした感覚がせり上がってきて、俺は背後の幽霊に訴えた。

「イかせて……、あっ、あ……めちゃくちゃにして、……!」

 ズン! とお尻に衝撃がきて、目の前に火花が散る。
「あ、……は……」
 幽霊とセックスしたなんて、誰が信じてくれるだろう。
「んやっ、あ……あ、気持ちいっ……お尻、もっと……! 透明のちんちんで、いっぱい突いてっ……!」
 がつがつと打ち付けられる腰。揺れる体、熱気に浮かぶ汗。あまりの気持ち良さに目が回りそうだ。

「あう、あ……イくっ……! 幽霊に犯されて、……あ、……んあぁっ……!」


 *****

 ぐったりと俺にもたれかかった蜜羽を抱え、体を流してから脱衣所に運んでタオルで拭いてやる。

「はあぁ……」
「ありがとう蜜羽、無事に成仏できそうだ」
「……ほ、本当に……? 良かった……」

 蜜羽が俺の声を頼りに、こちらへ両腕を伸ばした。しっかりと抱き合い、姿が見えなくても同じ時間を分かち合った絆を確かめ合う。

「元気でね……」
「蜜羽も」

 優しく口付け、また強く抱きしめ合った。

 この十秒後に透明時間が終了して蜜羽にボカボカ殴られる羽目になるのだが、……貴重な体験ができたから良しとしよう。



 第十九話・終
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