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第22話 SIESTA
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控え室のドアを閉じると若干フロアの音が遮断される。ほんの少し静かになった室内で、俺は大きく深呼吸をした。
「玉ちゃん店長!」
控え室の中では、ミチルとヒロヤがヘアメイクを受けていた。二人とも顔色は良く、睡眠も食事もしっかりとってきたと言う。あまり店ではヒロヤのプレイを見られなかったが、その自信に満ちた顔を見れば何も心配なさそうだ。
「頑張れよヒロヤ、ミチル」
「頼寿社長、任せてください。ミチルと俺でシエスタのオープンを飾ってやりますよ!」
「もうイェンちゃんとロウが先に飾ってるけどね」
自信満々のヒロヤにミチルがツッコミを入れ、二人が笑う。緊張していないのは流石にプロといった感じで頼もしく、俺はミチルに嫉妬していたことさえ忘れて尊敬の眼差しを送っていた。
「玉雪、お前も衣装の準備をしろ」
「うん!」
今日の俺の衣装は、それほど過激でもない普通のボンテージ。Tバックに近いパンツと首輪にハーネス、──これを「過激でない」と言えるようになった辺り、俺もだいぶこの世界に馴染んできたみたいだ。
ちなみに頼寿もシエスタのオーナーとして、今日は珍しく俺とお揃いに作られたトップ用衣装を着ることになっている。体のラインを強調したレザーのボディスーツはシンプルなデザインながらめちゃくちゃエロく、早くも体が熱くなってきてしまった。
「流れは頭に入ってるな。タマ、緊張してるか」
控え室の隅で向かい合って立ち、お互い呼吸を合わせて視線を繋げる。
「してる。……緊張してるけど、大丈夫!」
引き締めようとしても頬が緩んでしまうのは、わくわくが止められないからだ。散々言われ、散々自分に言い聞かせてきた──「楽しむ」こと。
今の俺ははっきり、この瞬間を楽しんでいた。頼寿と上がるステージが待ち切れなかった。初めて頼寿と会ったあの夜の俺には到底想像できなかった未来。
俺と頼寿は今、同じ道に立っている。
そして今夜俺達は、新たな同じ道を歩き始める。
「ミチル、ヒロヤ! 出番だぞ、頼んだ!」
控え室にスタッフが顔を出し、二人を呼んだ。ヘアメイクを終えて立ち上がったミチルとヒロヤが互いに額をくっ付けて気合いを入れ合い、控え室を出て行く。凛とした横顔はカッコ良かった。
「頑張って、二人とも」
「玉ちゃん店長が練習付き合ってくれたんだ、絶対成功させるよ」
「店長、ミチルの世話してくれてありがとうございます。今日から俺が責任持って手綱握りますんで!」
「手網って何だよ! 俺がタチなんですけど!」
控え室を出る時も喧しいミチルと、俺を振り返って親指を立てるヒロヤ。彼らとの出会いもまた、俺の人生に必要なものだったんだなと実感する。
「………」
「良かったな、玉ちゃん店長」
「そ、その呼び方するなってば!」
頼寿にからかわれたけど、嬉しかった。
ステージは予定通りのタイムスケジュールで進行している。
午前零時まで、あと少し。
「玉ちゃん店長!」
控え室の中では、ミチルとヒロヤがヘアメイクを受けていた。二人とも顔色は良く、睡眠も食事もしっかりとってきたと言う。あまり店ではヒロヤのプレイを見られなかったが、その自信に満ちた顔を見れば何も心配なさそうだ。
「頑張れよヒロヤ、ミチル」
「頼寿社長、任せてください。ミチルと俺でシエスタのオープンを飾ってやりますよ!」
「もうイェンちゃんとロウが先に飾ってるけどね」
自信満々のヒロヤにミチルがツッコミを入れ、二人が笑う。緊張していないのは流石にプロといった感じで頼もしく、俺はミチルに嫉妬していたことさえ忘れて尊敬の眼差しを送っていた。
「玉雪、お前も衣装の準備をしろ」
「うん!」
今日の俺の衣装は、それほど過激でもない普通のボンテージ。Tバックに近いパンツと首輪にハーネス、──これを「過激でない」と言えるようになった辺り、俺もだいぶこの世界に馴染んできたみたいだ。
ちなみに頼寿もシエスタのオーナーとして、今日は珍しく俺とお揃いに作られたトップ用衣装を着ることになっている。体のラインを強調したレザーのボディスーツはシンプルなデザインながらめちゃくちゃエロく、早くも体が熱くなってきてしまった。
「流れは頭に入ってるな。タマ、緊張してるか」
控え室の隅で向かい合って立ち、お互い呼吸を合わせて視線を繋げる。
「してる。……緊張してるけど、大丈夫!」
引き締めようとしても頬が緩んでしまうのは、わくわくが止められないからだ。散々言われ、散々自分に言い聞かせてきた──「楽しむ」こと。
今の俺ははっきり、この瞬間を楽しんでいた。頼寿と上がるステージが待ち切れなかった。初めて頼寿と会ったあの夜の俺には到底想像できなかった未来。
俺と頼寿は今、同じ道に立っている。
そして今夜俺達は、新たな同じ道を歩き始める。
「ミチル、ヒロヤ! 出番だぞ、頼んだ!」
控え室にスタッフが顔を出し、二人を呼んだ。ヘアメイクを終えて立ち上がったミチルとヒロヤが互いに額をくっ付けて気合いを入れ合い、控え室を出て行く。凛とした横顔はカッコ良かった。
「頑張って、二人とも」
「玉ちゃん店長が練習付き合ってくれたんだ、絶対成功させるよ」
「店長、ミチルの世話してくれてありがとうございます。今日から俺が責任持って手綱握りますんで!」
「手網って何だよ! 俺がタチなんですけど!」
控え室を出る時も喧しいミチルと、俺を振り返って親指を立てるヒロヤ。彼らとの出会いもまた、俺の人生に必要なものだったんだなと実感する。
「………」
「良かったな、玉ちゃん店長」
「そ、その呼び方するなってば!」
頼寿にからかわれたけど、嬉しかった。
ステージは予定通りのタイムスケジュールで進行している。
午前零時まで、あと少し。
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引き続き宜しくお願いします。
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