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第20話 しっかり玉雪と余裕の平日
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八月下旬、午前八時半。
「あら、坊ちゃん早起きですね。どうしたんですか?」
「おはよう快晴。朝飯作るの手伝おうと思ってさ」
どういう風の吹き回しなのかとか、今日は雪が降るかもとか、快晴はそんな意地悪は言わない。だからこそ平日の朝、久々に目覚まし時計で起きた俺は清々しい気分で一日をスタートすることができたのだ。
俺達の店がオープンしたら、俺は生まれて初めての「社会人」になる。初めて正社員として労働というものを経験し、初めてその対価にお給金をもらう。
社会人というものは大人で、しっかりしていることが前提なんだと思う。毎朝誰かに起こされて飯を出してもらうなんて、社会人とはいえない……多分。
自信満々に胸を張る俺を見て、快晴が幼稚園の先生みたいな笑顔と口調で言った。
「そうでしたか! それじゃあお手伝いしてもらいましょうか。坊ちゃん、テーブルにロールパンを置いて、お皿とフォークを並べてください」
死ぬほど簡単な作業だが、文句は言わない。言われたことを完璧にこなすのが社会人なのだ。
「それが終わったら、頼寿さんを起こしてきてください」
「朝飯の準備は?」
「もうあらかた終わってたんですよ」
ぬう。一体快晴は何時に起きてるんだ。
仕方なく頼寿の部屋へ行き、ベッドの上で横向きに寝ている頼寿の肩を揺さぶった。
「頼寿、起きろ。ごはんできてるって」
「ああ……」
目を閉じたまま返事をする頼寿。寝ている姿すら色っぽくて腹が立つ……俺なんか毎朝腹も涎も出しているというのに。
「起きろってば。オフだからって、もうすぐ九時になるぞ」
「……いつもは十時に起きてるくせに、なんだ」
ようやく頼寿が目を開けて起き上がり、うんと伸びをしてベッドを降りた。
今朝のメニューは快晴印のホカホカパンケーキ、フルーツヨーグルト、野菜ジュース。早起きして食べる朝ご飯は最高だ。
「坊ちゃん、今日からしっかりするみたいですよ。良かったですね頼寿さん」
洗顔やらを済ませてリビングに入ってきた頼寿が、快晴の言葉を鼻で笑った。
「よく分からねえが、長続きはしねえだろ。まだまだガキだからなタマちゃんは」
「そんなことねえし! 俺だって来年は二十歳だし、大人だし!」
「そうですよ頼寿さん。頼寿さんの恋人として恥ずかしくない大人の男になりたいという坊ちゃんの気持ちを分かってあげてください」
「そ、そういう理由でもないから!」
ダメだ、こんなことで怒ってたら大人の社会人にはなれない。もっとこう、頼寿や快晴のように余裕のある男にならないと。
「まあ、たまには甘いモンもいいかもな」
「どうぞ召し上がれ。坊ちゃんも、特別にチョコレートソース買ってありますからお好みで使ってくださいね」
「やった! ありがとう快晴!」
「生クリームも付けますか?」
「付ける付ける! よっしゃ、パンケーキおかわりしよっと!」
嬉しくて拳を握る俺を見て、頼寿が「ガキだな」と呟いた。
「あら、坊ちゃん早起きですね。どうしたんですか?」
「おはよう快晴。朝飯作るの手伝おうと思ってさ」
どういう風の吹き回しなのかとか、今日は雪が降るかもとか、快晴はそんな意地悪は言わない。だからこそ平日の朝、久々に目覚まし時計で起きた俺は清々しい気分で一日をスタートすることができたのだ。
俺達の店がオープンしたら、俺は生まれて初めての「社会人」になる。初めて正社員として労働というものを経験し、初めてその対価にお給金をもらう。
社会人というものは大人で、しっかりしていることが前提なんだと思う。毎朝誰かに起こされて飯を出してもらうなんて、社会人とはいえない……多分。
自信満々に胸を張る俺を見て、快晴が幼稚園の先生みたいな笑顔と口調で言った。
「そうでしたか! それじゃあお手伝いしてもらいましょうか。坊ちゃん、テーブルにロールパンを置いて、お皿とフォークを並べてください」
死ぬほど簡単な作業だが、文句は言わない。言われたことを完璧にこなすのが社会人なのだ。
「それが終わったら、頼寿さんを起こしてきてください」
「朝飯の準備は?」
「もうあらかた終わってたんですよ」
ぬう。一体快晴は何時に起きてるんだ。
仕方なく頼寿の部屋へ行き、ベッドの上で横向きに寝ている頼寿の肩を揺さぶった。
「頼寿、起きろ。ごはんできてるって」
「ああ……」
目を閉じたまま返事をする頼寿。寝ている姿すら色っぽくて腹が立つ……俺なんか毎朝腹も涎も出しているというのに。
「起きろってば。オフだからって、もうすぐ九時になるぞ」
「……いつもは十時に起きてるくせに、なんだ」
ようやく頼寿が目を開けて起き上がり、うんと伸びをしてベッドを降りた。
今朝のメニューは快晴印のホカホカパンケーキ、フルーツヨーグルト、野菜ジュース。早起きして食べる朝ご飯は最高だ。
「坊ちゃん、今日からしっかりするみたいですよ。良かったですね頼寿さん」
洗顔やらを済ませてリビングに入ってきた頼寿が、快晴の言葉を鼻で笑った。
「よく分からねえが、長続きはしねえだろ。まだまだガキだからなタマちゃんは」
「そんなことねえし! 俺だって来年は二十歳だし、大人だし!」
「そうですよ頼寿さん。頼寿さんの恋人として恥ずかしくない大人の男になりたいという坊ちゃんの気持ちを分かってあげてください」
「そ、そういう理由でもないから!」
ダメだ、こんなことで怒ってたら大人の社会人にはなれない。もっとこう、頼寿や快晴のように余裕のある男にならないと。
「まあ、たまには甘いモンもいいかもな」
「どうぞ召し上がれ。坊ちゃんも、特別にチョコレートソース買ってありますからお好みで使ってくださいね」
「やった! ありがとう快晴!」
「生クリームも付けますか?」
「付ける付ける! よっしゃ、パンケーキおかわりしよっと!」
嬉しくて拳を握る俺を見て、頼寿が「ガキだな」と呟いた。
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