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第18話 会長と頼寿と覚悟の夜
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それから会長と頼寿が本格的に飲み始めてしまい、俺はうとうとしながらプリンケーキを食べていた。大好きな甘さだが、ほんの少しだけスポンジ部分に酒が入っているからか余計に眠くなってくる。
「……旦那、そろそろ玉雪は限界みたいですよ」
「おお、眠くなってしまったか。半開きの目が色っぽいな」
上機嫌な二人に「へ、あ」と間抜けな返事をして、俺はフォークをテーブルに置いた。
「すいません、会長。色々緊張してたのが解けて、ホッとしたら眠気が……」
「ベッドまで運ぼう、玉雪」
席を立った頼寿が俺の体を抱き上げ、そのまま部屋に向かって歩き出す。頼寿の匂いと心地好い眠気でうっとりしてしまいそうだ。会長が来てくれてるのに。明日は時間とって、会長と楽しいことたくさんできるかな……。
「タマ」
ベッドに寝かせた俺の額に、頼寿が軽くキスをした。
「言えて良かったな、安心したか」
「……頼寿は、最初から分かってたのか」
「ああ。そういうつもりだと旦那に言われてお前と会ったが、世間知らずのハナタレ小僧に惹かれるつもりはなかった。覆したのはお前の持っていた強さ、だな」
そこでだ、と頼寿が俺の頭を撫でて言った。
「初めてお前を抱いた時に言ったこと、覚えてるか。──お前の傍にいるために、旦那に切られねえように考える、と」
何となくそんな会話をした気がする。あの時は会長が俺達をくっつけたがっていると知らなかったから、頼寿が会長を騙したりするんじゃないかと焦ったけれど……。
「今後は『依頼を受けたら出向いてステージに上がる』というやり方を変えて行くつもりだ。俺達が正式に仕事上のパートナーであることを表に出して、俺達自身がステージを考えて、俺達だけのパフォーマンスをする方向性で行く」
「……よく分かんない」
「旦那は俺達のスポンサーだ。旦那に切られないようにするには、これまで以上に金を生み出し続けなければならねえ。それこそ引退後も暮らしていけるようなデカい額をな」
何だか凄く大事なことを言われている気がするけれど、眠くて頭が回らない。
「いや、引退後も金が入るような事業をしなきゃならねえんだな。タマ、本気で覚悟はできてるか」
「うん……。頼寿と一緒なら何でもできるよ」
半開きの目でそう言うと、いつの間にそこにいたのか、頼寿の背後で三上会長が「素晴らしい」と手を叩いた。
「やはり頼寿に託して良かった。玉雪をよろしく頼むぞ」
それから、寝ている俺の頬を撫でて会長が続けた。
「立派なSMスターになれ、玉雪」
「……う、……は、はい……」
最後にもう一度俺の頭をポンポンとしてから、頼寿が会長と部屋を出て行った。
「それじゃあ旦那、明日のことですが──」
「ああ、楽しみにしてるよ頼寿」
明日。何かあるんだっけ。
眠過ぎて何も考えられないけど、会長が喜んでくれるなら俺も嬉しい。
きっと、何があっても頑張れる。
「……旦那、そろそろ玉雪は限界みたいですよ」
「おお、眠くなってしまったか。半開きの目が色っぽいな」
上機嫌な二人に「へ、あ」と間抜けな返事をして、俺はフォークをテーブルに置いた。
「すいません、会長。色々緊張してたのが解けて、ホッとしたら眠気が……」
「ベッドまで運ぼう、玉雪」
席を立った頼寿が俺の体を抱き上げ、そのまま部屋に向かって歩き出す。頼寿の匂いと心地好い眠気でうっとりしてしまいそうだ。会長が来てくれてるのに。明日は時間とって、会長と楽しいことたくさんできるかな……。
「タマ」
ベッドに寝かせた俺の額に、頼寿が軽くキスをした。
「言えて良かったな、安心したか」
「……頼寿は、最初から分かってたのか」
「ああ。そういうつもりだと旦那に言われてお前と会ったが、世間知らずのハナタレ小僧に惹かれるつもりはなかった。覆したのはお前の持っていた強さ、だな」
そこでだ、と頼寿が俺の頭を撫でて言った。
「初めてお前を抱いた時に言ったこと、覚えてるか。──お前の傍にいるために、旦那に切られねえように考える、と」
何となくそんな会話をした気がする。あの時は会長が俺達をくっつけたがっていると知らなかったから、頼寿が会長を騙したりするんじゃないかと焦ったけれど……。
「今後は『依頼を受けたら出向いてステージに上がる』というやり方を変えて行くつもりだ。俺達が正式に仕事上のパートナーであることを表に出して、俺達自身がステージを考えて、俺達だけのパフォーマンスをする方向性で行く」
「……よく分かんない」
「旦那は俺達のスポンサーだ。旦那に切られないようにするには、これまで以上に金を生み出し続けなければならねえ。それこそ引退後も暮らしていけるようなデカい額をな」
何だか凄く大事なことを言われている気がするけれど、眠くて頭が回らない。
「いや、引退後も金が入るような事業をしなきゃならねえんだな。タマ、本気で覚悟はできてるか」
「うん……。頼寿と一緒なら何でもできるよ」
半開きの目でそう言うと、いつの間にそこにいたのか、頼寿の背後で三上会長が「素晴らしい」と手を叩いた。
「やはり頼寿に託して良かった。玉雪をよろしく頼むぞ」
それから、寝ている俺の頬を撫でて会長が続けた。
「立派なSMスターになれ、玉雪」
「……う、……は、はい……」
最後にもう一度俺の頭をポンポンとしてから、頼寿が会長と部屋を出て行った。
「それじゃあ旦那、明日のことですが──」
「ああ、楽しみにしてるよ頼寿」
明日。何かあるんだっけ。
眠過ぎて何も考えられないけど、会長が喜んでくれるなら俺も嬉しい。
きっと、何があっても頑張れる。
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