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第14話 サルベージの一夜
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酔っているせいで、頼寿は王子様の衣装にそれほど違和感を抱いていないようだ。俺としては好都合だけれど、少しだけ頼寿にも恥ずかしい思いをさせたいという企みがあったから複雑な気分でもあった。
「どうだ、似合うか」
「似合うよ~頼寿、カッコいい~」
手を叩くロッソ君の横では、ローゼオさんも満足気に頷いている。普段なら絶対に「こんなふざけたモン着れるか」的な流れになっていただろう……お酒って怖い。
「良かったなローゼオ、お前の考えたキャラクターのコスプレしてもらえて」
「ああ、ロッソは着てくれないからな……」
俺の方は単純に学生服だ。高校も行ってない俺がニセモノDKって、確かにこれはステージ衣装というよりコスプレなのかもしれない。
妖艶なサルベージのイメージには不釣り合いだけど、やることは一緒──いや、違う。
──今回は本番もするんだ。皆が見ている前で、頼寿と最後までセックスするんだ。
「それじゃ、出番が来たら呼ぶからよろしくね!」
「玉雪くん、これが俺の力作『ハイパワード・マックス』だ。王子とのシーンをぜひ参考にしてくれ」
「ど、どうもです」
そうして二人がスタッフルームを出て行った後で、頼寿王子が大きな溜息をついてソファに腰を下ろした。やる気が湧いてきたと言っていた割には随分と気だるそうだ。
「なあ、大丈夫? 水もらってこようか?」
「大丈夫だっての。それよりタマちゃん、今日の流れはローゼオが言っていた通りでいいのか?」
「うん。ステージ用のベッドも用意してくれるって言うし、立ったままよりラクだよ。盆が回転するから、昔のラブホのベッドみたいにクルクルするんだってロッソ君も言ってた」
「センスねえな」
「そうか?」
衣装のせいで、肘掛けに頬杖をついているだけでサマになっている頼寿。赤と金のゴージャスカラーが凄く眩しいけれど、恐らく今後一生見られないであろうこの姿を、いま目に焼き付けておかないと。
「好色王子を誘惑する青年スパイか……。タマちゃんがスパイってのは全然ハマってねえが、ステージでどう俺を誘惑するのかは興味あるな」
「え? あ、そういえばローゼオさんの漫画を読ませてもらうんだった」
俺はローゼオさんに手渡されたA4サイズの大学ノートを捲った。ノートにボールペンで漫画なんて、何だか子供みたいで可愛い……
「──げぇっ!」
……と思ったのも束の間、内容は全然可愛くなかった!
「どうだ、参考にできそうなのか?」
「ちょ、ちょちょ待って。今俺の中で一旦このシーンを冷静に分析してるからっ……」
ノートに落とした視線を左右に動かしながら、俺は衣装より前にこの漫画を見せてもらうべきだったと激しく後悔した。
「よ、頼寿。これ見てくれる……?」
「ん」
頼寿がぼんやりした顔でノートを受け取り、開いたページに目を通す。
俺はその前に立ち、機嫌を伺うように恐る恐る言った。
「そのシーンさ、流石にそのままってのは俺にはハードル高いから……頼寿なりにアレンジしてくれるよな? だって俺達がやるのは『ステージ』だもん。それじゃマニア向けの『AV』になっちゃうよね」
「………」
じっと目を細めて漫画を読んでいた頼寿が、ノートを閉じると同時に俺の方へと顔を向けた。
嬉しそうな顔……嫌な予感。
「このまま行くぞ。台詞と流れをよく覚えとけ」
「嫌だあぁ──ッ!」
「どうだ、似合うか」
「似合うよ~頼寿、カッコいい~」
手を叩くロッソ君の横では、ローゼオさんも満足気に頷いている。普段なら絶対に「こんなふざけたモン着れるか」的な流れになっていただろう……お酒って怖い。
「良かったなローゼオ、お前の考えたキャラクターのコスプレしてもらえて」
「ああ、ロッソは着てくれないからな……」
俺の方は単純に学生服だ。高校も行ってない俺がニセモノDKって、確かにこれはステージ衣装というよりコスプレなのかもしれない。
妖艶なサルベージのイメージには不釣り合いだけど、やることは一緒──いや、違う。
──今回は本番もするんだ。皆が見ている前で、頼寿と最後までセックスするんだ。
「それじゃ、出番が来たら呼ぶからよろしくね!」
「玉雪くん、これが俺の力作『ハイパワード・マックス』だ。王子とのシーンをぜひ参考にしてくれ」
「ど、どうもです」
そうして二人がスタッフルームを出て行った後で、頼寿王子が大きな溜息をついてソファに腰を下ろした。やる気が湧いてきたと言っていた割には随分と気だるそうだ。
「なあ、大丈夫? 水もらってこようか?」
「大丈夫だっての。それよりタマちゃん、今日の流れはローゼオが言っていた通りでいいのか?」
「うん。ステージ用のベッドも用意してくれるって言うし、立ったままよりラクだよ。盆が回転するから、昔のラブホのベッドみたいにクルクルするんだってロッソ君も言ってた」
「センスねえな」
「そうか?」
衣装のせいで、肘掛けに頬杖をついているだけでサマになっている頼寿。赤と金のゴージャスカラーが凄く眩しいけれど、恐らく今後一生見られないであろうこの姿を、いま目に焼き付けておかないと。
「好色王子を誘惑する青年スパイか……。タマちゃんがスパイってのは全然ハマってねえが、ステージでどう俺を誘惑するのかは興味あるな」
「え? あ、そういえばローゼオさんの漫画を読ませてもらうんだった」
俺はローゼオさんに手渡されたA4サイズの大学ノートを捲った。ノートにボールペンで漫画なんて、何だか子供みたいで可愛い……
「──げぇっ!」
……と思ったのも束の間、内容は全然可愛くなかった!
「どうだ、参考にできそうなのか?」
「ちょ、ちょちょ待って。今俺の中で一旦このシーンを冷静に分析してるからっ……」
ノートに落とした視線を左右に動かしながら、俺は衣装より前にこの漫画を見せてもらうべきだったと激しく後悔した。
「よ、頼寿。これ見てくれる……?」
「ん」
頼寿がぼんやりした顔でノートを受け取り、開いたページに目を通す。
俺はその前に立ち、機嫌を伺うように恐る恐る言った。
「そのシーンさ、流石にそのままってのは俺にはハードル高いから……頼寿なりにアレンジしてくれるよな? だって俺達がやるのは『ステージ』だもん。それじゃマニア向けの『AV』になっちゃうよね」
「………」
じっと目を細めて漫画を読んでいた頼寿が、ノートを閉じると同時に俺の方へと顔を向けた。
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「このまま行くぞ。台詞と流れをよく覚えとけ」
「嫌だあぁ──ッ!」
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次作も頑張って書きます。
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