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第11話 木曜日のウサギ
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「やめろっ、……こんなの絶対、許されない……!」
「許されるんだよ、俺はね」
尻から手が離れたと思ったら、すぐに背後でベルトを外す音がした。身を捩っても良若から逃れられず、恐怖と屈辱からいよいよ涙が溢れてくる。
それでも現状は何一つ変わらない。無慈悲にあてがわれた凶悪な形のそれは、今しも俺を貫こうとしている。
「ウサギ君、力抜いて。抵抗するだけ痛いと思うよ」
「嫌だ! 嫌だ嫌だ! お前のなんか死んでも嫌だっ──!」
「面倒臭せぇガキだな。ヤッた後なら死のうが生きようが構わねえぞ」
溢れ出る涙を拭うこともできず、俺はガクガク震えながら必死で全身に力を入れ続けた。
体が熱いのは怒りと焦り、そして圧倒的な恐怖と嫌悪のためだ。
たすけて。誰か助けて。
「たすけて……」
助けて。
「頼寿あぁっ──!」
「玉雪!」
瞬間、焼けるほど熱かった体にふっと風が当たった。俺を貫く寸前だった良若のそれと、前を握っていた手。強く押し付けられていた体。瞬間、その全てが消失したかのように周りの空気が軽くなる。
「ぐぅっ……!」
背後で潰れたカエルのような声をあげる良若。振り返ると、そこには……
「よ、り……ひさ」
そこには、物凄い形相をして肩で息をする頼寿が立っていた。見開かれた獣の目は俺を真っ直ぐに見つめている。その足元には、尋常でない力で俺から引き剥がされた良若が倒れていた。
「てめぇ……調教師風情が何してくれてんだコラァッ!」
「玉雪っ!」
「坊ちゃん!」
「どうした、何があった?」
良若が吼えたと同時にトイレに人が押し寄せてきた。会長、それから快晴にロッソ君、他の人達も──震えながら泣いている俺の姿で全てを悟ったのだろう。皆が良若を見る目は鋭く、中には怒りすら滲ませている人もいた。
「良若っ!」
やがて騒ぎに気付いた秋津源五郎が入ってきて、叱り付けるように良若の名前を叫んだ。
「良若っ……。何てことをしているんだ、お前は!」
「あ、あ……秋津さん……」
……良かった。やっぱり皆、三上会長の味方だ。
安心感から膝の力が抜けて行く。へなへなとその場に腰を下ろして頬を拭っていると、俺の前にやって来た頼寿が屈んで両腕を伸ばしてきた。
「玉雪」
「だ、大丈夫……。間一髪、何もされてな──」
そして、伸ばされた両腕がしっかりと俺の体を抱きしめる。
「より……ひさあぁ……」
真新しいスーツと頼寿の匂い……俺は頼寿の胸に顔を埋め、情けない声をあげながら泣きじゃくった。
「会長。今夜はもう玉雪を休ませたいんですが」
俺を抱きしめながら、頼寿がはっきりと告げる。
「……頼んだぞ頼寿。付き添えなくて悪いが、お前なら玉雪を任せられる」
そう言った会長の声は、今まで聞いたことがないほど感情が篭っていなかった。
「──俺はこの男と話があるからな」
会長が青ざめた良若を見下ろしている。ついさっきにこやかに話していた相手を「この男」と呼ぶ会長の目は、やはり今まで見たこともないほど冷たかった。
つづく…
「許されるんだよ、俺はね」
尻から手が離れたと思ったら、すぐに背後でベルトを外す音がした。身を捩っても良若から逃れられず、恐怖と屈辱からいよいよ涙が溢れてくる。
それでも現状は何一つ変わらない。無慈悲にあてがわれた凶悪な形のそれは、今しも俺を貫こうとしている。
「ウサギ君、力抜いて。抵抗するだけ痛いと思うよ」
「嫌だ! 嫌だ嫌だ! お前のなんか死んでも嫌だっ──!」
「面倒臭せぇガキだな。ヤッた後なら死のうが生きようが構わねえぞ」
溢れ出る涙を拭うこともできず、俺はガクガク震えながら必死で全身に力を入れ続けた。
体が熱いのは怒りと焦り、そして圧倒的な恐怖と嫌悪のためだ。
たすけて。誰か助けて。
「たすけて……」
助けて。
「頼寿あぁっ──!」
「玉雪!」
瞬間、焼けるほど熱かった体にふっと風が当たった。俺を貫く寸前だった良若のそれと、前を握っていた手。強く押し付けられていた体。瞬間、その全てが消失したかのように周りの空気が軽くなる。
「ぐぅっ……!」
背後で潰れたカエルのような声をあげる良若。振り返ると、そこには……
「よ、り……ひさ」
そこには、物凄い形相をして肩で息をする頼寿が立っていた。見開かれた獣の目は俺を真っ直ぐに見つめている。その足元には、尋常でない力で俺から引き剥がされた良若が倒れていた。
「てめぇ……調教師風情が何してくれてんだコラァッ!」
「玉雪っ!」
「坊ちゃん!」
「どうした、何があった?」
良若が吼えたと同時にトイレに人が押し寄せてきた。会長、それから快晴にロッソ君、他の人達も──震えながら泣いている俺の姿で全てを悟ったのだろう。皆が良若を見る目は鋭く、中には怒りすら滲ませている人もいた。
「良若っ!」
やがて騒ぎに気付いた秋津源五郎が入ってきて、叱り付けるように良若の名前を叫んだ。
「良若っ……。何てことをしているんだ、お前は!」
「あ、あ……秋津さん……」
……良かった。やっぱり皆、三上会長の味方だ。
安心感から膝の力が抜けて行く。へなへなとその場に腰を下ろして頬を拭っていると、俺の前にやって来た頼寿が屈んで両腕を伸ばしてきた。
「玉雪」
「だ、大丈夫……。間一髪、何もされてな──」
そして、伸ばされた両腕がしっかりと俺の体を抱きしめる。
「より……ひさあぁ……」
真新しいスーツと頼寿の匂い……俺は頼寿の胸に顔を埋め、情けない声をあげながら泣きじゃくった。
「会長。今夜はもう玉雪を休ませたいんですが」
俺を抱きしめながら、頼寿がはっきりと告げる。
「……頼んだぞ頼寿。付き添えなくて悪いが、お前なら玉雪を任せられる」
そう言った会長の声は、今まで聞いたことがないほど感情が篭っていなかった。
「──俺はこの男と話があるからな」
会長が青ざめた良若を見下ろしている。ついさっきにこやかに話していた相手を「この男」と呼ぶ会長の目は、やはり今まで見たこともないほど冷たかった。
つづく…
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