東京ナイトピーチ

狗嵜ネムリ

文字の大きさ
上 下
21 / 23
バトルオブライブ――王者奪還戦

しおりを挟む
 おめでとう。感動! 燃えに萌えた! お幸せにです。桃陽泣いてる!
 ――もうパソコンが壊れるんじゃないかと思うほど、そんなコメントが猛スピードで流れて行く。画面が見えないのは文字が速いからだけではなく、俺の目が潤んでいるからだ。
「さ、雀夜……」
「泣いてんじゃねえぞ、汚ねえな」
 その冷たい台詞すらとろける程に甘くて刺激的で、真っ赤になった顔が涙と鼻水でぐしゃぐしゃになる。
「雀夜、……嬉し、俺……どう言ったらいいか分かんないけど……」
「………」
 テーブルに頬杖をついた雀夜は俺のことなんて気にしていない様子で、パソコン画面を見ながらコメントに対する回答を自分勝手に喋っている。
「コイツの性感帯は動画見てりゃ分かるだろうな。齢の差は……五、六くらいか。犯罪じゃねえよ、うるせえ馬鹿野郎」
「ちょ、ちょ、暴言は駄目だってば雀夜」
「きっかけは特にねえな。コイツがうるせえから折れてやった」
「そんなことまで言わなくていいんだってば!」
 ライブ担当のスタッフも、松岡さんも珍しく笑っている。
 俺の知らないところでこんな衝撃企画が持ち上がっていたなんて、俺は何て幸せな奴んだろう……。
 殴られ犯され続けてきた少年時代。裏切られ続けてきた学生時代。それでも体と心は男しか好きになれなくて、何度も泣いて叫んできた。
 雀夜に出会って人生丸ごと救われた俺は、雀夜によって最大の愛を知った。人を愛することの喜びと、人から愛される幸せを教えてもらった。こんなちっぽけな俺を、雀夜は一人の男として愛してくれた――
 それが嬉しくて、涙が止まらない。



「……いい加減にしろよお前。いつまで泣いてんだ、鬱陶しい」
 家に着いてからも俺の涙は止まらず、靴を脱ぐのにもたついていたらついに雀夜に言われてしまった。
「だ、だって俺、こんなに嬉しいの生まれて初めてで……。それに、見てた皆も……」
 雀夜のサプライズもそうだけど、それと同じくらいファンの人達に「祝福」してもらえたことが嬉しかった。絶対に叩かれると思ったし、雀夜のファンが怒ってアンチになってしまうんじゃないかとか、色々不安だったのに――あの時「おめでとう」で埋め尽くされたコメントを思い出すだけで、また涙腺が緩んでしまう。
「くだらねえ書き込みがあっても気にするな」
「……でも気になっちゃうし、雀夜の人気が落ちたら俺のせいで……」
「そんなモン見なくていい」
「でも、……」
「お前は俺だけを見ていろ」
「………」
 骨抜きのへろへろだ。俺は涙も拭わず玄関先で雀夜に抱き付き、濡れた頬をその胸に押し付けた。
「大好き。雀夜、大好き……!」
「知ってる」
 雀夜の両手が俺の尻を掴み、持ち上げる。久々に抱き上げられた俺は靴も履いたままで部屋の中へと運ばれ、大きくて柔らかなベッドへ押し倒された。
「抱いてくれるの」
「今ヤッとかなきゃ、寝た後でお前に襲われるだろうからな」
「……嬉し、……」
 塞がれた唇、絡む舌。雀夜の煙草の香りが俺の意識をとろけさせ、徐々に二人の息が上がって行く。俺は雀夜の頬を両手で包み込み、夢中でその香りを貪った。
「ん、……ん……」
 痛いほどに舌が触れ合い絡み合う。同時に雀夜が俺のベルトを外し、スニーカーを脱がせて床に放り投げ、ジーンズと下着を下ろして行く。俺は自分でシャツを脱ぎ捨ててから、再び雀夜を抱きしめ唇を合わせた。
 何度となくこうして抱き合ってきたのに、多分、今日が一番幸せ。本当の意味で雀夜と結ばれた今日この日を、俺は一生忘れられないだろう。
「あっ……う、雀夜……」
 無言のまま胸元に落とされた雀夜の唇が、愛撫を待ちわびていた乳首に被せられる。熱くてぴりぴりとした刺激が走り、俺は両手でシーツを握りしめながら身をくねらせ、喘いだ。
「は、ぁ……気持ちいい、乳首……あんっ……」
「既に勃ってんじゃねえかよ」
「もっとして、雀夜……。めちゃくちゃにして……」
 いっそのこと意識が飛ぶまで、この先絶対に雀夜以外の男に抱かれたいなんて思えなくなるほどに、俺の体から細胞の隅々みまでが雀夜の物になるように抱き潰して欲しい。
 ――俺の全部は、雀夜だけの物なんだ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

23時のプール 2

貴船きよの
BL
あらすじ 『23時のプール』の続編。 高級マンションの最上階にあるプールでの、恋人同士になった市守和哉と蓮見涼介の甘い時間。

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

待てって言われたから…

ふみ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。 //今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて… がっつり小スカです。 投稿不定期です🙇表紙は自筆です。 華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...