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第8話 夏の思い出、作ります!
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そうして、午後八時。
月と星が輝く、美しい夜空の下──
「うわああぁ! 広いお風呂です!」
「にゃはは、これがプールっていうんだよ。水だから泳いだら気持ちいいよ~」
別荘庭の馬鹿デカい円形プールは、ライトアップされてきらきらと輝いている。
「お、泳いでもいいですか? 入ってもいいですか?」
「いいよ~!」
「うわあぁぁ!」
水着を穿いたヘルムートがプールサイドから思い切りジャンプし、頭からざぶんとダイブする。水飛沫がライトに光り、たちまちプールの底へ沈んだヘルムートの姿が見えなくなった。
「喜んでもらえて良かった~。クラゲちゃん、たまには水に入らないとね」
ナハトが頭の後ろで手を組み笑う横で、真剣な顔の瑠偉が足のつま先を伸ばしチョンチョンと水面に触れている。
「ほ、本当に入っても大丈夫ですか? 夜のプールって、何だかモンスターが潜んでそうで怖いというか……」
「想像するならモンスターよりも、サメとかの方が怖いけどなぁ」
夕飯を兼ねた水遊びだ。プールサイドのテーブルにはジャンクフードを中心としたホットスナックやドリンクがずらりと並んでいる。
俺はホットドックに思い切りかぶり付いて、満天の星空を仰いだ──最高の夜だ。
「あの……全然上がって来ませんけど、ヘルムート君は大丈夫でしょうか?」
しばらくして瑠偉が不安そうに膝を付き、プールの中を覗き込んだ。言われてみればかれこれ三分は潜ったままだ。
「確かにね。ちょっと様子見てみようか~」
「ぼ、僕も入ります!」
ナハトに借りた水中メガネを装着し、各々プールの中へと飛び込む。プール内の明かりを頼りにヘルムートを探すと、俺の真横を何かが猛スピードで通り過ぎて行った。
「っ……!」
慌てて目で追いかける。水中メガネも無しにプールの中を泳ぎ回るヘルムートは本当に嬉しそうに笑っていた。
まるで空を飛ぶように、自由自在にプールの底を泳いでいるヘルムート。再び俺の横を通り過ぎ、瑠偉の股下をくぐり、ナハトの頭にタッチして更に勢いを加速させる──そうしてライトアップされた気泡の中を上昇して行くヘルムートが、水面から勢いよく飛び上がった。
「───」
月光に輝く白い体。濡れた金色の髪に水色のメッシュ。イルカのように頭から飛び出し、そのまま背中を反らして再び頭からプールの中へと消えて行く。水飛沫。揺れる水面。夜空に夏の星座。
俺はその瞬間、息をするのも忘れてヘルムートに見入っていた。
「──ぷはっ。プール気持ちいいです!」
「すっごいです! ヘルムート君、水泳選手になれるんじゃないですかっ?」
「へへ、おれ小さい頃はずっと海で暮らしてましたから……」
「なるほど、母なる海は偉大だね~……」
ナハトと瑠偉に挟まれたヘルムートが俺の視線に気付き、にっこりと笑う。
「………」
無視できない胸の高鳴りに動揺しながら、俺もヘルムートに微笑み返した。
月と星が輝く、美しい夜空の下──
「うわああぁ! 広いお風呂です!」
「にゃはは、これがプールっていうんだよ。水だから泳いだら気持ちいいよ~」
別荘庭の馬鹿デカい円形プールは、ライトアップされてきらきらと輝いている。
「お、泳いでもいいですか? 入ってもいいですか?」
「いいよ~!」
「うわあぁぁ!」
水着を穿いたヘルムートがプールサイドから思い切りジャンプし、頭からざぶんとダイブする。水飛沫がライトに光り、たちまちプールの底へ沈んだヘルムートの姿が見えなくなった。
「喜んでもらえて良かった~。クラゲちゃん、たまには水に入らないとね」
ナハトが頭の後ろで手を組み笑う横で、真剣な顔の瑠偉が足のつま先を伸ばしチョンチョンと水面に触れている。
「ほ、本当に入っても大丈夫ですか? 夜のプールって、何だかモンスターが潜んでそうで怖いというか……」
「想像するならモンスターよりも、サメとかの方が怖いけどなぁ」
夕飯を兼ねた水遊びだ。プールサイドのテーブルにはジャンクフードを中心としたホットスナックやドリンクがずらりと並んでいる。
俺はホットドックに思い切りかぶり付いて、満天の星空を仰いだ──最高の夜だ。
「あの……全然上がって来ませんけど、ヘルムート君は大丈夫でしょうか?」
しばらくして瑠偉が不安そうに膝を付き、プールの中を覗き込んだ。言われてみればかれこれ三分は潜ったままだ。
「確かにね。ちょっと様子見てみようか~」
「ぼ、僕も入ります!」
ナハトに借りた水中メガネを装着し、各々プールの中へと飛び込む。プール内の明かりを頼りにヘルムートを探すと、俺の真横を何かが猛スピードで通り過ぎて行った。
「っ……!」
慌てて目で追いかける。水中メガネも無しにプールの中を泳ぎ回るヘルムートは本当に嬉しそうに笑っていた。
まるで空を飛ぶように、自由自在にプールの底を泳いでいるヘルムート。再び俺の横を通り過ぎ、瑠偉の股下をくぐり、ナハトの頭にタッチして更に勢いを加速させる──そうしてライトアップされた気泡の中を上昇して行くヘルムートが、水面から勢いよく飛び上がった。
「───」
月光に輝く白い体。濡れた金色の髪に水色のメッシュ。イルカのように頭から飛び出し、そのまま背中を反らして再び頭からプールの中へと消えて行く。水飛沫。揺れる水面。夜空に夏の星座。
俺はその瞬間、息をするのも忘れてヘルムートに見入っていた。
「──ぷはっ。プール気持ちいいです!」
「すっごいです! ヘルムート君、水泳選手になれるんじゃないですかっ?」
「へへ、おれ小さい頃はずっと海で暮らしてましたから……」
「なるほど、母なる海は偉大だね~……」
ナハトと瑠偉に挟まれたヘルムートが俺の視線に気付き、にっこりと笑う。
「………」
無視できない胸の高鳴りに動揺しながら、俺もヘルムートに微笑み返した。
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