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第8話 夏の思い出、作ります!
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俺の休みの都合もあり、翌日。
もはやノリと勢いだけで、俺達はナハトの運転するゴツい車で仕事(ホストというのはまだ瑠偉に打ち明けていないが)の客が所有しているというI市の別荘にやって来た。
避暑地としても人気の高い場所で、別荘の近くにある町の商店街には土産物屋が多い。名産物や地酒の店も多く、走る車の窓からは観光客で賑わう洒落たカフェやレストランもいくつか見えた。
「うわぁ……緑がいっぱいです!」
「都会の空気とは全然違いますね……。こんな場所でなら、僕もどんどん外に出られそうだ」
「見て見て、かっちょいい虫ゲットした! 鳴き声もワイルド!」
「や、やめろナハト! セミ持って来んじゃねえっ!」
別荘は町から徒歩十分の静かな場所にあり、そよ風と木々のざわめき、セミの声という大自然に包まれていた。別荘そのものは小ぢんまりとした控えめな物だったが、敷地内にあるプールはかなりデカい。四人で入っても全く問題なさそうだ。
「う~ん、今すぐ水に飛び込みたいけど今回の目的はナイトプールだから……。先に町へ食料調達と腹ごしらえしに行こうよ~!」
持ってきた荷物を別荘の中に入れて鍵をかけ、ナハトの言葉に従い俺達は徒歩で町へ向かうことにした。
「千代晴! 見てください!」
「わはは。似合ってるぞヘルムート!」
自然が近い町ということで、要所要所に動物の顔出しパネルが設置されている。お気に入りのクラゲのリュックを背負ったヘルムートがタヌキのパネルから顔を出し、その絶妙な愛らしさに思わずスマホのシャッターを押した。
それから売店でフレッシュなフルーツジュースを買い、色々な土産物屋を見て回った。
「イヤーン、可愛い貝殻のブレスレット! 千代晴ちん、お土産に買って!」
「いや、これ女物じゃないのか? ナハトには違和感ねえけど、お前は普段からもう少し男らしくだな……」
「千代晴。おれもきらきらのブレスレット、欲しいです!」
「しょうがねえな、もう……」
「ヘルちゃんに激甘じゃない?」
宇宙人ズのために色違いのブレスレットを買っていると、後ろでヘルムートが「これもお願いします」と別のバングルを二つレジに乗せた。
「これも欲しいのか?」
「これは千代晴と瑠偉くんの分です。お揃いにすると友情の証になります!」
「ヘ、ヘルムート君……僕は別にいいんだよ……!」
慌てる瑠偉の横で、ナハトが「ボクもるいるいとお揃いが良かった」と愚痴っている。俺は仕方なく笑って、購入したバングルを瑠偉に渡してやった。
「中高生の女子みたく、お揃いで付けるのも悪くねえかもな。趣味に合わなかったら申し訳ねえけど」
「い、いえ……いえ、ありがとうございます……!」
腕にはめたバングルをじっと見つめる瑠偉は嬉しそうだった。友情の証。友達を作ったことがないと言っていたが、俺と瑠偉は──ついでにナハトとヘルムートも──もう友達だ。
もはやノリと勢いだけで、俺達はナハトの運転するゴツい車で仕事(ホストというのはまだ瑠偉に打ち明けていないが)の客が所有しているというI市の別荘にやって来た。
避暑地としても人気の高い場所で、別荘の近くにある町の商店街には土産物屋が多い。名産物や地酒の店も多く、走る車の窓からは観光客で賑わう洒落たカフェやレストランもいくつか見えた。
「うわぁ……緑がいっぱいです!」
「都会の空気とは全然違いますね……。こんな場所でなら、僕もどんどん外に出られそうだ」
「見て見て、かっちょいい虫ゲットした! 鳴き声もワイルド!」
「や、やめろナハト! セミ持って来んじゃねえっ!」
別荘は町から徒歩十分の静かな場所にあり、そよ風と木々のざわめき、セミの声という大自然に包まれていた。別荘そのものは小ぢんまりとした控えめな物だったが、敷地内にあるプールはかなりデカい。四人で入っても全く問題なさそうだ。
「う~ん、今すぐ水に飛び込みたいけど今回の目的はナイトプールだから……。先に町へ食料調達と腹ごしらえしに行こうよ~!」
持ってきた荷物を別荘の中に入れて鍵をかけ、ナハトの言葉に従い俺達は徒歩で町へ向かうことにした。
「千代晴! 見てください!」
「わはは。似合ってるぞヘルムート!」
自然が近い町ということで、要所要所に動物の顔出しパネルが設置されている。お気に入りのクラゲのリュックを背負ったヘルムートがタヌキのパネルから顔を出し、その絶妙な愛らしさに思わずスマホのシャッターを押した。
それから売店でフレッシュなフルーツジュースを買い、色々な土産物屋を見て回った。
「イヤーン、可愛い貝殻のブレスレット! 千代晴ちん、お土産に買って!」
「いや、これ女物じゃないのか? ナハトには違和感ねえけど、お前は普段からもう少し男らしくだな……」
「千代晴。おれもきらきらのブレスレット、欲しいです!」
「しょうがねえな、もう……」
「ヘルちゃんに激甘じゃない?」
宇宙人ズのために色違いのブレスレットを買っていると、後ろでヘルムートが「これもお願いします」と別のバングルを二つレジに乗せた。
「これも欲しいのか?」
「これは千代晴と瑠偉くんの分です。お揃いにすると友情の証になります!」
「ヘ、ヘルムート君……僕は別にいいんだよ……!」
慌てる瑠偉の横で、ナハトが「ボクもるいるいとお揃いが良かった」と愚痴っている。俺は仕方なく笑って、購入したバングルを瑠偉に渡してやった。
「中高生の女子みたく、お揃いで付けるのも悪くねえかもな。趣味に合わなかったら申し訳ねえけど」
「い、いえ……いえ、ありがとうございます……!」
腕にはめたバングルをじっと見つめる瑠偉は嬉しそうだった。友情の証。友達を作ったことがないと言っていたが、俺と瑠偉は──ついでにナハトとヘルムートも──もう友達だ。
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