【BL】ヘルムートのおもちゃ箱!

狗嵜ネムリ

文字の大きさ
上 下
36 / 74
第6話 静かな青の世界へと

2

しおりを挟む
「えーと、便利屋やってた時の稼ぎを円に換えて、今の地球での仕事の給料も合わせれば……うん、赤ちゃん産まれても地球でのIDくらいは用意できると思うんだよね。教育のために日本国籍が必要ならそれも取得しないとだし」
「金でどうにかなる問題なのか?」
「地球のお偉いさん達の中にも異星人はいるから。ボクお金はそんな必要ないってタイプだし、ヘルちゃんと千代晴ちんに遣ってあげるよ」

 一体どれほどの大金がその通帳に記されているのか知らないが、お偉方を動かすほどの金額が入った預金通帳をポケットに入れているとは、ナハト──何て奴だ。

「て、ていうかお前からそんな大金受け取れる訳ねえだろ。俺だってもし『その時』がきたら、男として自分の力で……」
 あぁ~ん馬鹿、としなを作りながらナハトが俺の額を人差し指でツンと押した。

「五千万とか、一億とかの話じゃないよ。異星人が地球人に溶け込んで一生生活するってのは……そうだね、だいたい一人当たり百億は必要なんじゃないかな。まずIDだけでその半分は持ってかれるし」
「ひ、ひゃくおく……!」
「それもこれも、地球のお偉いさん達がボク達異星人の存在をトップシークレットにしてるからだね。ボクの故郷なんて色んな星の子達がご近所感覚で星々の間を行き来してるよ」

 そういう話を聞いていると、地球はだいぶ遅れているんだなと実感する。国によっての貧富の差や同族同士での差別や戦争なんて、きっとヘルムートやナハトからしてみれば謎でしかないだろう。

 黙り込んだ俺を見て、ナハトがにんまりと笑う。
「さてとさてと、ボクは仕事があるから出掛けるよん。千代晴ちん、今日は休みなんでしょ? 早いとこヘルちゃんを不安から解放してあげなよ」
「……不安?」

 思わず呟くと、ナハトが素肌の上にパーカを羽織いながらヘルムートの声真似をした。
「千代晴、おれのこと嫌いだから抱いてくれないのかもしれません……。自分の都合ばかり優先して、赤ちゃん欲しいおれの気持ち、考えてくれてません……」
「………」
「なんてね。でも悠長に考えてる暇がないってことだけは事実だからさぁ。子供作る気ないんだったら、冷たい態度で部屋から追い出した方がまだヘルちゃんの為になるよ。期待させるだけさせといて『やっぱ無理です』なんて……ボクだったら相手のことぶっ殺しちゃうかも」

 俺はベッドの上にあぐらをかき、「確かに」と心の中で呟いた。
 後先のことを考えなければ保留にするのは簡単だし、それと同じくらいヘルムートを抱くのも簡単だ。ヘルムートにとって一番良くない結果というのは、俺が先延ばしにしたせいで人生一度の繁殖期を逃し、子供が産めなくなること。

 王子だから子孫を残さねばという理由じゃない。ヘルムートは自分の子供を欲しがっているのだ。

 今もソファの上で寝転がり、俺が買ってやったクラゲのぬいぐるみを抱いているヘルムート。その無防備な寝顔は俺を信頼しきっている証拠だ。

「取り敢えず子供のことは抜きにしても、少しでもその気があるなら『好き』って言ってあげてもいいんじゃない? その上で、千代晴ちんのマグナムで一発ハメればいいんだぽ」
「ばっ、馬鹿なこと言ってんじゃねえ、マジで下品な奴だな!」
「にゃはは。それじゃボク仕事行くね。今日帰って来るか分かんないし、番号置いとくから何かあったら連絡してよ」
「お前、地球で何の仕事してるんだ」
 ふふん、とナハトがあぐらをかいた俺の股間を指で押す。

「あ?」
「ココとお尻使うお仕事。今日は大事なお客様が、ボクの大好きなブランドのスーツ買ってくれるって言うからさぁ。めんどいけど行かなきゃ」
「ホストか」
「ホストっていうよりは超高級コールボーイってとこかな? これでもボク、リッチなおじ様&お兄様に大人気なのよ。SもMもできるし、お客様の前ではサービス満点ヨイコちゃんだから」

 両手の人差し指を頬にあてて笑うナハトに溜息をついて、俺はベッドから床に降りた。宇宙人のホスト、ましてやこんなデンジャラスボーイが大人気だなんて……地球の男達はどうしちまったんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

続きは第一図書室で

蒼キるり
BL
高校生になったばかりの佐武直斗は図書室で出会った同級生の東原浩也とひょんなことからキスの練習をする仲になる。 友人と恋の狭間で揺れる青春ラブストーリー。

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

旦那様と僕・番外編

三冬月マヨ
BL
『旦那様と僕』の番外編。 基本的にぽかぽか。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...