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第5話 黎人19歳、おもらしをする
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「霊感があると、そんじょそこらのホラー作品ではビビらねえか」
「え? 何ですか、いきなり」
午後三時、先生の執筆のキリの良いところでのお茶の時間。大好きなショコラモンブランを食べていたら、先生がフォークを咥えたまま遠い目をして言った。
「スプラッタはリアリティがねえし、創作の幽霊だって日頃からホンモノを見てる奴にしてみたらへそが茶を沸かすレベルだろ」
「そんなことないですよ、先生が前に書いた『指ちょうだい』の幽霊は怖かったですよ」
「あれもお前の話が元ネタだ。評判は良かったけどな」
モンブランの表面にまぶしてあるチョコレートの粉がほろ苦くてほろ甘くて美味し過ぎる。先生も口の周りにチョコを付けているが、その真剣な横顔は相変わらずカッコ良かった。
「霊感があっても、幽霊を見慣れてても、やっぱり怖いものは怖いですよ」
「黎人は何が怖いんだ?」
ベッドの上に腰掛けていた俺は、フォークを持つ手を額にあてて「うーん」と唸った。
「先生がいなくなることが怖いです」
「オカルト的な意味で頼む」
「うーん……例えば、先生とか、母親とか兄ちゃんとかが、見た目はそのままだけど中身が全然違う人になっちゃってたら……とかですかね」
「ややこしいな」
「えー、これって怖くないですか? 悪意のあるナニカが、しれっと、完全に先生のフリをしてたら……とか思うと……ゾワーッとします」
言い換えれば多分、当たり前にあると思っていた存在がある日突然フッとなくなってしまうこと──それが怖いのだと思う。
もしくは、長年それが正しいと信じていたことが実は間違っていた、とか。
「もっと分かりやすい怖さを求む」
「えー……じゃあ、金縛りとか……怖いですけど」
「ナメてんのかっ!」
「ええぇっ?」
「いまさら金縛りなんて怖くもなんともねえだろう。お前ともあろう者が何を言ってる!」
怒られているのか持ち上げられているのかよく分からないが、なかなか先生の望む答えが出せない。先生は今日も明日も風任せで生きてるようなタイプなのに、怪談──というか仕事のことになるとめちゃくちゃ厳しくなるのだ。
「えっとじゃあ、……金縛りの怖さを説明してもいいですか?」
「いいだろう」
先生が椅子ごと俺に向き直り、モンブランをばくばく食べながら頷いた。
「金縛りって科学的に証明されていて、殆どが霊障じゃないのは先生も知ってますよね」
「体が寝ていて、脳が起きてるってヤツだろ」
「はい、でも中にはマジの霊障で起こる金縛りも勿論あります。先生は科学的根拠のある金縛りと、霊的な原因で起こる金縛り、見分け方って分かりますか?」
「ううむ……」
実は色々と見分け方はあるのだが、一番分かりやすい物だと「時間」というものがある。
不規則な生活やストレスが原因で起こる金縛りはいつ起こるか分からないし実際起こる時間もまちまちだが、霊的な金縛りはほぼ必ず決まった時間に起こる。
また、命の危険を感じるほど「恐ろしい」という感情が湧き上がった場合も要注意だ。殆どの無害な霊は見れば怖いかもしれないが、命の危険を感じるほどまではいかない。
命の危険──すなわちそれだけの「怨念」を霊が向けてきた時に起こる金縛りは、間違いなく霊的な金縛りだということ。
「そういう金縛りは怖いじゃないですか。死んじゃうかもしれないんですよ?」
「ううむ……金縛り、侮れねえな」
*
その夜、その夜その夜──。
「んん……せんせ……」
久しぶりに一緒に寝れるのが嬉しくて、俺は先生の腕にしがみついて最高の眠りについていた。
先生はいびきをかいて眠っている。今夜のセックスも最高だったし、寝る前に温かいミルクも飲んだし、最高の夜だ。
「れいと……ケツをだせ……」
先生もどうやら良い夢を見ているらしい。
俺は眠りが浅い時に限り、こうして寝ながら周囲の様子を伺う「癖」がある。よくうとうとしている時に周りで話している人やテレビの音なんかが夢に出てくるが、それと似たようなものだ。
夢現の中をぼんやり揺蕩っていた、その時。
「……じわじわと、苦しめたいのです」
──ん?
先生の寝言にしては変だった。喋り方も、その内容も。
「僕がそうされたように、それはもう地獄の苦しみを味わって頂きたいのです。八回死んで九回目に生き返り、十回目の正午にまた殺された僕の苦しみを、どうか知って欲しいのです」
「……先生……?」
先生は目を閉じている。だけどその口はペラペラと早口で動いていた。
「じわじわと苦しめたいのです。どうか知って欲しいのです。どうか知って欲しいのです。──もう、誰でもいいから」
ゾク、と背筋に冷たいものが走った。耳鳴りがする。先生にしがみついた状態ではあるが、体がピクリとも動かない。
「苦しめたいのです……誰でもいいから、……じわじわと苦しんで、死ね」
──わ。ヤバいやつだこれ。しかも無差別タイプか。
先生の口が喋るのを止め、変わりに俺の耳に何かの息がかかった。視線を向ければ正体が見れるが、そんなものわざわざ見たくない。寝たふりが妥当か。
──ごめん。俺は何もできないよ。成仏した方があんたのためだ。
「嘘つき」
はっきりと耳元で声がした。
俺は霊感もあるし霊も見慣れているけれど、だからといって怖いもの無しな訳じゃない。怖いものは怖いのだ。特にこういう「無差別に怨みを拡散させたいタイプ」の霊は。こういう手合いは話が通じないから、怖い。
昼間、金縛りの話なんてしなきゃ良かった。こんなに近くに先生がいるのに、俺は闇の中で冷や汗をかきながら……たった一人だ。
「………」
しかもめちゃくちゃトイレに行きたくなってきた。そうだ。セックスの後で水をがぶ飲みしてから更に温めた牛乳なんてモンを飲んでしもうたのだ。
寝る前にトイレ行きなさい、という子供の頃の母ちゃんの言葉を思い出す。あの頃はよくおねしょしてたっけ。
「……じわじわと、苦しめたいのです」
まだいたのか彼は。もう充分尿意に苦しんでるのに、これ以上何をどうしろというんだ。
早いところ金縛りを抜け出して、トイレ行かないと。
「誰でもいいから」
恐怖と尿意を天秤にかけながら、俺は少しずつ体を動かす努力を始めた。力を抜いてリラックス、悪い夢を見た時に目を覚ます方法に似ているアレだ。
「……どこにも行かせない」
駄目だ、そう簡単にはいかないか。しかしこのままじゃコイツに意識を持って行かれるかもしれない。明日の朝まで気絶するくらいなら良いけれど、最悪の場合は──
「黎人?」
「っ……!」
いきなり全身の力が抜け、俺はハッとして寝たまま顔を上げた。
「先生……?」
「どうした、うなされてたぞ」
良かった、と心底安堵する。……何とか戻って来れた。
「起こしてごめんなさい先生、ちょっと怖い夢を──」
「八回死んで九回目に生き返る夢か」
「あっ、……」
先生の顔がみるみる溶けて行く。目と鼻が落ち、肌が黒ずんで行く。
「……ここは冷たい……。暗くて、苦しいんだ……」
「うわっ、あ、あ……!」
騙された──。クソ、クソ。よりによって先生のフリをするなんて……!
「ふざけんな……せ、先生から離れろッ――!」
あ。
「黎人……? どうした、うるせえぞ……」
「あ、あ……ああぁ……」
じょろろろろ。そんな擬音が頭に響く。
いきんで大声を出したせいで漏らしてしまった。十九歳にもなって。しかも先生の腕にしがみついたまま。
俺はさっきまでの恐怖と怒りと情けなさで目に涙を溜めながら、ただポカンとしている先生(今度こそ本物の先生だ)の顔を見つめ続けた。
「……せんせ……俺、……」
「……手が濡れてるんだが?」
腕にしがみついて先生の手を股に挟んでいたせいで、思いっきり先生の手に。
「ごめんなさ、……おしっこ、出ちゃった……」
「何っ?」
先生が飛び起きて掛け布団を捲る。そして自分の濡れた手と俺の濡れたパジャマのズボン、シーツを見て……
「黎人ォ……」
めちゃくちゃ意地悪な笑顔を浮かべた。
「そういうプレイが好きならいつでも付き合ってやるぜ。ほれ、パンツ脱いでもう一回漏らせ」
「なな、何言ってるんですか! 違いますよ、やめてくださいっ!」
「黎人の寝小便……あぁやべえ……すっげえ興奮してきた……」
「せ、先生……? これは違うんです、プレイとかじゃなくてこれはその……!」
「責任取ってもらうぞ黎人……!」
「いやああぁぁ──ッ!」
さっきの八回死んだ霊も、俺のおもらしで興奮する先生も、話が通じないのは一緒──こうしてこの夜、俺の「怖いものリスト」に新たな項目が加わったのだった。
ちなみに例の八回死んだ霊は、俺が漏らしたのと同時に消えていた。チッ、と舌打ちするのが聞こえたから、きっと寝小便野郎の俺に呆れて怨みをぶつける価値もないと諦めたのだろう。
不浄なものを嫌う幽霊もいる。
覚えておいた方がいいことの一つだ。
*
朝。
さんさんと太陽の光が降り注ぐ庭で布団を干しながら、俺は昨夜の霊について考えていた。
八回死んで九回目に生を授かったのに、十回目にまた殺された。
恐らくあれは、水子霊の集合体だったのだろう。それも、とても残酷な理由で消されてしまった類の。
世界を憎んでいるであろう彼らに、俺は心からの祈りを捧げる。
十一回目にはどうか、温かな母親の元へ宿れますように、と。
第5話・終
「え? 何ですか、いきなり」
午後三時、先生の執筆のキリの良いところでのお茶の時間。大好きなショコラモンブランを食べていたら、先生がフォークを咥えたまま遠い目をして言った。
「スプラッタはリアリティがねえし、創作の幽霊だって日頃からホンモノを見てる奴にしてみたらへそが茶を沸かすレベルだろ」
「そんなことないですよ、先生が前に書いた『指ちょうだい』の幽霊は怖かったですよ」
「あれもお前の話が元ネタだ。評判は良かったけどな」
モンブランの表面にまぶしてあるチョコレートの粉がほろ苦くてほろ甘くて美味し過ぎる。先生も口の周りにチョコを付けているが、その真剣な横顔は相変わらずカッコ良かった。
「霊感があっても、幽霊を見慣れてても、やっぱり怖いものは怖いですよ」
「黎人は何が怖いんだ?」
ベッドの上に腰掛けていた俺は、フォークを持つ手を額にあてて「うーん」と唸った。
「先生がいなくなることが怖いです」
「オカルト的な意味で頼む」
「うーん……例えば、先生とか、母親とか兄ちゃんとかが、見た目はそのままだけど中身が全然違う人になっちゃってたら……とかですかね」
「ややこしいな」
「えー、これって怖くないですか? 悪意のあるナニカが、しれっと、完全に先生のフリをしてたら……とか思うと……ゾワーッとします」
言い換えれば多分、当たり前にあると思っていた存在がある日突然フッとなくなってしまうこと──それが怖いのだと思う。
もしくは、長年それが正しいと信じていたことが実は間違っていた、とか。
「もっと分かりやすい怖さを求む」
「えー……じゃあ、金縛りとか……怖いですけど」
「ナメてんのかっ!」
「ええぇっ?」
「いまさら金縛りなんて怖くもなんともねえだろう。お前ともあろう者が何を言ってる!」
怒られているのか持ち上げられているのかよく分からないが、なかなか先生の望む答えが出せない。先生は今日も明日も風任せで生きてるようなタイプなのに、怪談──というか仕事のことになるとめちゃくちゃ厳しくなるのだ。
「えっとじゃあ、……金縛りの怖さを説明してもいいですか?」
「いいだろう」
先生が椅子ごと俺に向き直り、モンブランをばくばく食べながら頷いた。
「金縛りって科学的に証明されていて、殆どが霊障じゃないのは先生も知ってますよね」
「体が寝ていて、脳が起きてるってヤツだろ」
「はい、でも中にはマジの霊障で起こる金縛りも勿論あります。先生は科学的根拠のある金縛りと、霊的な原因で起こる金縛り、見分け方って分かりますか?」
「ううむ……」
実は色々と見分け方はあるのだが、一番分かりやすい物だと「時間」というものがある。
不規則な生活やストレスが原因で起こる金縛りはいつ起こるか分からないし実際起こる時間もまちまちだが、霊的な金縛りはほぼ必ず決まった時間に起こる。
また、命の危険を感じるほど「恐ろしい」という感情が湧き上がった場合も要注意だ。殆どの無害な霊は見れば怖いかもしれないが、命の危険を感じるほどまではいかない。
命の危険──すなわちそれだけの「怨念」を霊が向けてきた時に起こる金縛りは、間違いなく霊的な金縛りだということ。
「そういう金縛りは怖いじゃないですか。死んじゃうかもしれないんですよ?」
「ううむ……金縛り、侮れねえな」
*
その夜、その夜その夜──。
「んん……せんせ……」
久しぶりに一緒に寝れるのが嬉しくて、俺は先生の腕にしがみついて最高の眠りについていた。
先生はいびきをかいて眠っている。今夜のセックスも最高だったし、寝る前に温かいミルクも飲んだし、最高の夜だ。
「れいと……ケツをだせ……」
先生もどうやら良い夢を見ているらしい。
俺は眠りが浅い時に限り、こうして寝ながら周囲の様子を伺う「癖」がある。よくうとうとしている時に周りで話している人やテレビの音なんかが夢に出てくるが、それと似たようなものだ。
夢現の中をぼんやり揺蕩っていた、その時。
「……じわじわと、苦しめたいのです」
──ん?
先生の寝言にしては変だった。喋り方も、その内容も。
「僕がそうされたように、それはもう地獄の苦しみを味わって頂きたいのです。八回死んで九回目に生き返り、十回目の正午にまた殺された僕の苦しみを、どうか知って欲しいのです」
「……先生……?」
先生は目を閉じている。だけどその口はペラペラと早口で動いていた。
「じわじわと苦しめたいのです。どうか知って欲しいのです。どうか知って欲しいのです。──もう、誰でもいいから」
ゾク、と背筋に冷たいものが走った。耳鳴りがする。先生にしがみついた状態ではあるが、体がピクリとも動かない。
「苦しめたいのです……誰でもいいから、……じわじわと苦しんで、死ね」
──わ。ヤバいやつだこれ。しかも無差別タイプか。
先生の口が喋るのを止め、変わりに俺の耳に何かの息がかかった。視線を向ければ正体が見れるが、そんなものわざわざ見たくない。寝たふりが妥当か。
──ごめん。俺は何もできないよ。成仏した方があんたのためだ。
「嘘つき」
はっきりと耳元で声がした。
俺は霊感もあるし霊も見慣れているけれど、だからといって怖いもの無しな訳じゃない。怖いものは怖いのだ。特にこういう「無差別に怨みを拡散させたいタイプ」の霊は。こういう手合いは話が通じないから、怖い。
昼間、金縛りの話なんてしなきゃ良かった。こんなに近くに先生がいるのに、俺は闇の中で冷や汗をかきながら……たった一人だ。
「………」
しかもめちゃくちゃトイレに行きたくなってきた。そうだ。セックスの後で水をがぶ飲みしてから更に温めた牛乳なんてモンを飲んでしもうたのだ。
寝る前にトイレ行きなさい、という子供の頃の母ちゃんの言葉を思い出す。あの頃はよくおねしょしてたっけ。
「……じわじわと、苦しめたいのです」
まだいたのか彼は。もう充分尿意に苦しんでるのに、これ以上何をどうしろというんだ。
早いところ金縛りを抜け出して、トイレ行かないと。
「誰でもいいから」
恐怖と尿意を天秤にかけながら、俺は少しずつ体を動かす努力を始めた。力を抜いてリラックス、悪い夢を見た時に目を覚ます方法に似ているアレだ。
「……どこにも行かせない」
駄目だ、そう簡単にはいかないか。しかしこのままじゃコイツに意識を持って行かれるかもしれない。明日の朝まで気絶するくらいなら良いけれど、最悪の場合は──
「黎人?」
「っ……!」
いきなり全身の力が抜け、俺はハッとして寝たまま顔を上げた。
「先生……?」
「どうした、うなされてたぞ」
良かった、と心底安堵する。……何とか戻って来れた。
「起こしてごめんなさい先生、ちょっと怖い夢を──」
「八回死んで九回目に生き返る夢か」
「あっ、……」
先生の顔がみるみる溶けて行く。目と鼻が落ち、肌が黒ずんで行く。
「……ここは冷たい……。暗くて、苦しいんだ……」
「うわっ、あ、あ……!」
騙された──。クソ、クソ。よりによって先生のフリをするなんて……!
「ふざけんな……せ、先生から離れろッ――!」
あ。
「黎人……? どうした、うるせえぞ……」
「あ、あ……ああぁ……」
じょろろろろ。そんな擬音が頭に響く。
いきんで大声を出したせいで漏らしてしまった。十九歳にもなって。しかも先生の腕にしがみついたまま。
俺はさっきまでの恐怖と怒りと情けなさで目に涙を溜めながら、ただポカンとしている先生(今度こそ本物の先生だ)の顔を見つめ続けた。
「……せんせ……俺、……」
「……手が濡れてるんだが?」
腕にしがみついて先生の手を股に挟んでいたせいで、思いっきり先生の手に。
「ごめんなさ、……おしっこ、出ちゃった……」
「何っ?」
先生が飛び起きて掛け布団を捲る。そして自分の濡れた手と俺の濡れたパジャマのズボン、シーツを見て……
「黎人ォ……」
めちゃくちゃ意地悪な笑顔を浮かべた。
「そういうプレイが好きならいつでも付き合ってやるぜ。ほれ、パンツ脱いでもう一回漏らせ」
「なな、何言ってるんですか! 違いますよ、やめてくださいっ!」
「黎人の寝小便……あぁやべえ……すっげえ興奮してきた……」
「せ、先生……? これは違うんです、プレイとかじゃなくてこれはその……!」
「責任取ってもらうぞ黎人……!」
「いやああぁぁ──ッ!」
さっきの八回死んだ霊も、俺のおもらしで興奮する先生も、話が通じないのは一緒──こうしてこの夜、俺の「怖いものリスト」に新たな項目が加わったのだった。
ちなみに例の八回死んだ霊は、俺が漏らしたのと同時に消えていた。チッ、と舌打ちするのが聞こえたから、きっと寝小便野郎の俺に呆れて怨みをぶつける価値もないと諦めたのだろう。
不浄なものを嫌う幽霊もいる。
覚えておいた方がいいことの一つだ。
*
朝。
さんさんと太陽の光が降り注ぐ庭で布団を干しながら、俺は昨夜の霊について考えていた。
八回死んで九回目に生を授かったのに、十回目にまた殺された。
恐らくあれは、水子霊の集合体だったのだろう。それも、とても残酷な理由で消されてしまった類の。
世界を憎んでいるであろう彼らに、俺は心からの祈りを捧げる。
十一回目にはどうか、温かな母親の元へ宿れますように、と。
第5話・終
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