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第1話 俺と先生のこと
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「夜城先生、また寝不足ですか? 目が死んでますよ」
「……何か冷たくて甘いモン飲ませてくれ」
「いつものアイスココアでしょ」
俺の「先生」──黒川夜城の職業は怪談作家である。特に小説家を目指している訳ではなかったが昔からホラー映画が好きで、サラリーマン時代、見様見真似でホラー小説を書いたらそれが奇跡的に世に出ることとなったらしい。
本人は小説なんて少しも読まない。漫画も実用書も、とにかく本という物を全く読まない。本当は映画監督になりたくてホラー映画ばかり見ていたら、なぜか怪談作家になっていたという謎の道を通って今現在に至る。
基本的に無気力で、面倒なことは大嫌い。怠け者だし、生活も不規則だ。
それでも怪談作家らしく「怖い話・怪談」が大好きで、そういう話になると目の色が変わる。ファミレスでの食事中、隣の席のカップルが怪談を始めたら勝手にカップルの間に割って入って行ったくらいだ。
そんな夜城先生のアシスタント兼コイビト、それが俺──坂巻黎人。
レンタルビデオ店でホラーのコーナーをうろついていたら、先生にナンパされたのが始まりだった。その時の先生は髪がボサボサで目の下にはクマがあり、徹夜明けと不摂生な生活から肌は不健康に青白くて、正直言ってヤク中かと思った。
怪談作家であることが判明してから俺は夜城先生の家に転がり込み、何かとだらしない彼のお世話をすることとなって……その日のうちにカラダの関係を持ったのだ。
アシスタントとしての給料はお小遣い程度だけど、夜城先生との生活は何だかんだで楽しい。
俺にとってはもちろん、夜城先生にとっても俺との生活はきっと楽しい。俺と夜城先生は、一般的なゲイカップルとはひと味違うカップルだった。
何故なら俺は生まれつき「先生が喉から手が出るほど欲しくて堪らないもの」を持っているのだ。
「黎人。昨晩は何も無かったか?」
「……う、うん。昨夜は平気でしたけど」
「ううむ、今日はネタ無しか」
夜城先生にはなく、俺だけにあるもの──。
そう、俺は人には見えないモノがたまに視える、いわゆる「霊感持ち」なのだった。
*
「夜城先生、たまにはちゃんとベッドで寝た方がいいですよ。昨日も床で寝てたでしょ」
「夏だし、一日くらい床で寝ても風邪ひかねえよ」
「そういう問題かなぁ……」
夜城先生は基本、どこででも寝れる。放っておけば立ったまま寝ることもある。昨日も怪談を一本書き終えてすぐに椅子から転げ落ち、そのまま気絶するように床に倒れて眠ってしまったのだ。普通の人間なら落ちた衝撃で眠気が吹き飛びそうなものだが。
「で、仕事は終わったんですか?」
「ああ、最後の一本を昨日書き終わった」
「じゃあ今日はゆっくりできるんですね!」
「ん」
ソファにだらりと座ってアイスココアを飲む夜城先生。俺は「うへへ」と笑って彼の方へ身を倒し、その膝の上に自分の頭を乗せた。
最近の先生は忙しかったから、こうして甘えるのも久し振りだ。パソコンに向き合わなくて良いのなら、今日はじっくりゆっくり俺に向き合って欲しい。寝不足なのは分かっているから一日寝かせてあげたい気持ちもあるが、ちょっとだけ……俺に構って欲しい。
無気力でもだらしなくても一切の掃除や片付けができなくても、俺は夜城先生に惚れ抜いているのだ。
「先生、お腹空いてないですか?」
「夜食で冷蔵庫の中のモンを適当に食ったから平気だ」
「……だ、だから今朝、冷蔵庫の中スカスカだったのか……」
でも仕事終わりで、食事の必要もないとなったら、後はもうやることは一つ。
「先生、……」
俺はソファの上にうつぶせになり、上目に彼を見上げながら頬を熱くさせた。
「何だ」
……けど、全然伝わっていない。分かってる。仕事明けの先生は普段の半分も頭が回らないんだ。
「先生の頭がシャキッとするのって、怖い話のネタ聞いてる時だけですもんね」
「何の話だ?」
「俺が沖縄の離島で幽霊を見た話、しましたっけ?」
「なに?」
瞬時にして夜城先生の目の色が変わる。鋭い目がもっと鋭くなった先生の顔は大好きだけど、俺よりも怖い話の方が好きなのかなぁと思うと若干やるせない。
「聞いてねえぞその話は」
「去年、友達と旅行したんです。そんで夜の八時くらいに商店でお菓子とか買って、ドミトリーに帰ろうとしたら道が真っ暗で、電柱の影から白装束のお婆さんが俺に手招きしてたんです。終わりです」
「なるほど、ありがちなネタだが臨場感を描写すればそれなりのシーンにはなるな……。しかし黎人、どうにもお前の話し方は怖さが伝わらなくて良くねえ」
「日常で当たり前にそういうモノが見えると、怖く話そうって気にもならなくなるんですよ」
「ううむ、その力が俺にもあれば……」
「そしたら俺なんて必要ないですか?」
少し拗ねたような表情を作ってみせると、夜城先生がようやく俺に興味を向けてくれたのか優しく頭を撫でてくれた。大きな手。心地好くて大好きだ。
「お前は俺に必要だ。もう手放せねえさ」
「怖い話の提供と、掃除と、料理もしてますもんね」
「それだけじゃねえだろ」
先生の手が俺の頭をグッと押す。ジャージ越しに先生の盛り上がった股間に頬を押し付ける形になり、思わずうっとりと目を細めてしまった。
「先生、硬くなってる。……口でしますか?」
「ああ、頼む」
先生がジャージをずらすと、ぶるんと凄まじくデッカいソレが飛び出した。
「はあぁ……」
俺の大好きな先生の、無気力でだらしない先生の、恐らく体の部位で一番元気な部分。徹夜明けで昨夜は風呂に入っていないせいか、普段より雄の匂いが強い。
「んっ……」
俺は口の中いっぱいに唾液を溜めて、愛しい先生のペニスに真上からむしゃぶりついた。
「うぉ、っふ……」
先生が声を漏らして俺の頭を撫でる。
「あー、凄げぇ。黎人のフェラ久々過ぎてマジでチンポとろけそ……」
久々に感じる先生の匂いと味に、俺は頭の中がとろけそうだ。もちろん先生のペニスも、どんなに舌を絡ませても吸い上げても溶けてなくなったりはしない。だからずっとこうしていられる。
「は、ふ……先生、大好き……」
「そういう台詞は股間でなく本人の顔を見て言って欲しいモンだな」
そう言って先生が俺の顎を軽く揺すった。「放して良い」の合図だ。もう少し咥えていたかったけれど、次は俺の番だと思うとそれはそれで期待してしまう。
「パンツ脱いで上に乗れ」
「は、はいっ……」
恥ずかしいくらい興奮しながらハーフパンツと下着を脱ぎ捨て、先生の上に向かい合うようにして跨る。すぐに唇を塞がれて、先生のココア味の舌が入ってきた。
「ん、ん……」
たっぷりと舌を絡めた後で俺の唇を解放した先生が、真正面から俺を見つめて柔らかく笑う。いつもは俺がやる気のない先生の世話をしているのに、こういう時だけ先生は「大人の余裕」を発揮するのだ。
「せ、先生……」
「どうされたい」
先生の余裕ある柔らかい微笑みは、何だか眠そうな時の表情にも似ている。間違っても先生が寝てしまわないよう、俺は自分でTシャツを捲り、先生の前に思い切り肌を晒しておねだりした。
「舐めて……」
「このスケベ小僧」
舌をチロチロさせながら嬉しそうに笑う先生が、俺の背中と腰を自分の方へ引き寄せる。
「──ん、あっ」
熱い舌で乳首を転がされる感触──この感じが大好きだ。ピリピリと細かい電流が乳首からペニスに伝わって行くのが分かり、自然と腰が揺れてしまう。
そうして腰が揺れるたびに、俺と先生の上向きになったペニス同士が擦れ合って……もう堪らないほど気持ち良い。もっともっと欲しくて、俺は先生の頭を抱きしめながら濡れた声を迸らせた。
「せんせっ、……あっ、あぁ……!」
軽く引っ張られて吸われる乳首への刺激。ペニスが擦れ合う快感。これだけでも最高に気持ち良いけれど、もう一つ俺が欲しいのは──
「せん、せ……! いれ……挿れてっ……」
「指か?」
「ち、違っ……先生の、……!」
わざと俺に言わせようとしているのは分かっている。先生は俺に恥ずかしいことを言わせたりさせたりするのが大好きなのだ。
先生がそれを望むなら、俺は何だって言う通りにする。だから俺は思いっきり小さな声で、先生の耳元に囁いた。
「夜城先生のおちんちん、挿れて……」
満足いく台詞を引き出した先生の口が、ニィ、と笑う形になる。
そして──
「ふ、あぁっ! あ、あぁ……んっ!」
下から突き刺す形で、先生のペニスが俺の中を貫いた。激しいのに甘くて強烈なのに心地好い極上の快感……。何度も何度も欲しくって、俺は先生の上で夢中になって尻を振る。
「せんせ、気持ちい……? 俺の中、気持ちいいですかっ……?」
「ああ、最高だ……中ですっげえ吸い付いてくる。よっぽど俺のチンポが好きなんだな」
「好きっ、大好き……! あっ、う、……せんせえのこともすき……んぁっ」
「黎人……」
先生が例の余裕のある微笑みで俺を見つめている。俺の大好きな笑い方だ。優しげで、眠そうで、……眠そうで。
「……先生?」
「………」
「ま、まじか……」
眠そうなんじゃない。寝てた。
「~~~……」
仕方なく先生の上から降りて、俺は(手早く自分で処理してから)パンツを穿いた。
ここ最近、寝てなかったから仕方ない。一番気持ち良い時に寝てもらえたなら、それでいい。
「……はぁ」
先生のコイビトになるって決めたのは俺だ。こんなことでヘコんでいたらキリがない。
*
「悪かったな、寝ちまって」
「全然! 先生は疲れてるんですから、寝れる時に寝た方がいいんですよ!」
結局その日の夕飯の時間まで眠ってしまった夜城先生は、それはそれは申し訳なさそうな顔をしていた。
「セックスの最中でタチが寝るなんて男じゃねえ。悪かった、黎人」
「いいんですってば。それよりほら、今日は先生の好きなエビフライですよ! いっぱい食べて下さいね!」
「黎人……」
揚げたてアツアツの山盛りエビフライを皿に盛っていると、後ろから先生が俺を抱きしめてきた。
「せ、先生……?」
「いつも俺に合わせてくれてありがとうな。お前には本当に感謝している。俺がギリギリ人間らしさを保っていられるのはお前のお陰だ」
「夜城先生……」
時々こうして大袈裟な台詞を言う先生。それこそ小説の登場人物みたいに。
だけど俺は知っている。これは大袈裟でも何でもなく、先生の素直な気持ちなのだと。
その証拠に……
「愛してるぞ、黎人」
「お、俺も愛してますよ、先生」
「……めちゃくちゃ寝たからな、今夜はもう寝ずに済みそうだ」
「ん?」
「飯食ったらもう一回ヤるぞ。昼間、お前を放置した分時間かけて何度も愛してやるからな。一晩中ずっと、カラになるまでな」
「い、いや先生……そんな、そんなことしたらまた明日起きる時間が遅くなって、昼夜逆転が直りませんよ」
「構わねえさ」
「お、俺が構うんですっ──!」
夜城先生はやっぱりどこか人とは違う。
だけどそんな先生に、俺は心の底から惚れ抜いているのだ。
第1話・終
「……何か冷たくて甘いモン飲ませてくれ」
「いつものアイスココアでしょ」
俺の「先生」──黒川夜城の職業は怪談作家である。特に小説家を目指している訳ではなかったが昔からホラー映画が好きで、サラリーマン時代、見様見真似でホラー小説を書いたらそれが奇跡的に世に出ることとなったらしい。
本人は小説なんて少しも読まない。漫画も実用書も、とにかく本という物を全く読まない。本当は映画監督になりたくてホラー映画ばかり見ていたら、なぜか怪談作家になっていたという謎の道を通って今現在に至る。
基本的に無気力で、面倒なことは大嫌い。怠け者だし、生活も不規則だ。
それでも怪談作家らしく「怖い話・怪談」が大好きで、そういう話になると目の色が変わる。ファミレスでの食事中、隣の席のカップルが怪談を始めたら勝手にカップルの間に割って入って行ったくらいだ。
そんな夜城先生のアシスタント兼コイビト、それが俺──坂巻黎人。
レンタルビデオ店でホラーのコーナーをうろついていたら、先生にナンパされたのが始まりだった。その時の先生は髪がボサボサで目の下にはクマがあり、徹夜明けと不摂生な生活から肌は不健康に青白くて、正直言ってヤク中かと思った。
怪談作家であることが判明してから俺は夜城先生の家に転がり込み、何かとだらしない彼のお世話をすることとなって……その日のうちにカラダの関係を持ったのだ。
アシスタントとしての給料はお小遣い程度だけど、夜城先生との生活は何だかんだで楽しい。
俺にとってはもちろん、夜城先生にとっても俺との生活はきっと楽しい。俺と夜城先生は、一般的なゲイカップルとはひと味違うカップルだった。
何故なら俺は生まれつき「先生が喉から手が出るほど欲しくて堪らないもの」を持っているのだ。
「黎人。昨晩は何も無かったか?」
「……う、うん。昨夜は平気でしたけど」
「ううむ、今日はネタ無しか」
夜城先生にはなく、俺だけにあるもの──。
そう、俺は人には見えないモノがたまに視える、いわゆる「霊感持ち」なのだった。
*
「夜城先生、たまにはちゃんとベッドで寝た方がいいですよ。昨日も床で寝てたでしょ」
「夏だし、一日くらい床で寝ても風邪ひかねえよ」
「そういう問題かなぁ……」
夜城先生は基本、どこででも寝れる。放っておけば立ったまま寝ることもある。昨日も怪談を一本書き終えてすぐに椅子から転げ落ち、そのまま気絶するように床に倒れて眠ってしまったのだ。普通の人間なら落ちた衝撃で眠気が吹き飛びそうなものだが。
「で、仕事は終わったんですか?」
「ああ、最後の一本を昨日書き終わった」
「じゃあ今日はゆっくりできるんですね!」
「ん」
ソファにだらりと座ってアイスココアを飲む夜城先生。俺は「うへへ」と笑って彼の方へ身を倒し、その膝の上に自分の頭を乗せた。
最近の先生は忙しかったから、こうして甘えるのも久し振りだ。パソコンに向き合わなくて良いのなら、今日はじっくりゆっくり俺に向き合って欲しい。寝不足なのは分かっているから一日寝かせてあげたい気持ちもあるが、ちょっとだけ……俺に構って欲しい。
無気力でもだらしなくても一切の掃除や片付けができなくても、俺は夜城先生に惚れ抜いているのだ。
「先生、お腹空いてないですか?」
「夜食で冷蔵庫の中のモンを適当に食ったから平気だ」
「……だ、だから今朝、冷蔵庫の中スカスカだったのか……」
でも仕事終わりで、食事の必要もないとなったら、後はもうやることは一つ。
「先生、……」
俺はソファの上にうつぶせになり、上目に彼を見上げながら頬を熱くさせた。
「何だ」
……けど、全然伝わっていない。分かってる。仕事明けの先生は普段の半分も頭が回らないんだ。
「先生の頭がシャキッとするのって、怖い話のネタ聞いてる時だけですもんね」
「何の話だ?」
「俺が沖縄の離島で幽霊を見た話、しましたっけ?」
「なに?」
瞬時にして夜城先生の目の色が変わる。鋭い目がもっと鋭くなった先生の顔は大好きだけど、俺よりも怖い話の方が好きなのかなぁと思うと若干やるせない。
「聞いてねえぞその話は」
「去年、友達と旅行したんです。そんで夜の八時くらいに商店でお菓子とか買って、ドミトリーに帰ろうとしたら道が真っ暗で、電柱の影から白装束のお婆さんが俺に手招きしてたんです。終わりです」
「なるほど、ありがちなネタだが臨場感を描写すればそれなりのシーンにはなるな……。しかし黎人、どうにもお前の話し方は怖さが伝わらなくて良くねえ」
「日常で当たり前にそういうモノが見えると、怖く話そうって気にもならなくなるんですよ」
「ううむ、その力が俺にもあれば……」
「そしたら俺なんて必要ないですか?」
少し拗ねたような表情を作ってみせると、夜城先生がようやく俺に興味を向けてくれたのか優しく頭を撫でてくれた。大きな手。心地好くて大好きだ。
「お前は俺に必要だ。もう手放せねえさ」
「怖い話の提供と、掃除と、料理もしてますもんね」
「それだけじゃねえだろ」
先生の手が俺の頭をグッと押す。ジャージ越しに先生の盛り上がった股間に頬を押し付ける形になり、思わずうっとりと目を細めてしまった。
「先生、硬くなってる。……口でしますか?」
「ああ、頼む」
先生がジャージをずらすと、ぶるんと凄まじくデッカいソレが飛び出した。
「はあぁ……」
俺の大好きな先生の、無気力でだらしない先生の、恐らく体の部位で一番元気な部分。徹夜明けで昨夜は風呂に入っていないせいか、普段より雄の匂いが強い。
「んっ……」
俺は口の中いっぱいに唾液を溜めて、愛しい先生のペニスに真上からむしゃぶりついた。
「うぉ、っふ……」
先生が声を漏らして俺の頭を撫でる。
「あー、凄げぇ。黎人のフェラ久々過ぎてマジでチンポとろけそ……」
久々に感じる先生の匂いと味に、俺は頭の中がとろけそうだ。もちろん先生のペニスも、どんなに舌を絡ませても吸い上げても溶けてなくなったりはしない。だからずっとこうしていられる。
「は、ふ……先生、大好き……」
「そういう台詞は股間でなく本人の顔を見て言って欲しいモンだな」
そう言って先生が俺の顎を軽く揺すった。「放して良い」の合図だ。もう少し咥えていたかったけれど、次は俺の番だと思うとそれはそれで期待してしまう。
「パンツ脱いで上に乗れ」
「は、はいっ……」
恥ずかしいくらい興奮しながらハーフパンツと下着を脱ぎ捨て、先生の上に向かい合うようにして跨る。すぐに唇を塞がれて、先生のココア味の舌が入ってきた。
「ん、ん……」
たっぷりと舌を絡めた後で俺の唇を解放した先生が、真正面から俺を見つめて柔らかく笑う。いつもは俺がやる気のない先生の世話をしているのに、こういう時だけ先生は「大人の余裕」を発揮するのだ。
「せ、先生……」
「どうされたい」
先生の余裕ある柔らかい微笑みは、何だか眠そうな時の表情にも似ている。間違っても先生が寝てしまわないよう、俺は自分でTシャツを捲り、先生の前に思い切り肌を晒しておねだりした。
「舐めて……」
「このスケベ小僧」
舌をチロチロさせながら嬉しそうに笑う先生が、俺の背中と腰を自分の方へ引き寄せる。
「──ん、あっ」
熱い舌で乳首を転がされる感触──この感じが大好きだ。ピリピリと細かい電流が乳首からペニスに伝わって行くのが分かり、自然と腰が揺れてしまう。
そうして腰が揺れるたびに、俺と先生の上向きになったペニス同士が擦れ合って……もう堪らないほど気持ち良い。もっともっと欲しくて、俺は先生の頭を抱きしめながら濡れた声を迸らせた。
「せんせっ、……あっ、あぁ……!」
軽く引っ張られて吸われる乳首への刺激。ペニスが擦れ合う快感。これだけでも最高に気持ち良いけれど、もう一つ俺が欲しいのは──
「せん、せ……! いれ……挿れてっ……」
「指か?」
「ち、違っ……先生の、……!」
わざと俺に言わせようとしているのは分かっている。先生は俺に恥ずかしいことを言わせたりさせたりするのが大好きなのだ。
先生がそれを望むなら、俺は何だって言う通りにする。だから俺は思いっきり小さな声で、先生の耳元に囁いた。
「夜城先生のおちんちん、挿れて……」
満足いく台詞を引き出した先生の口が、ニィ、と笑う形になる。
そして──
「ふ、あぁっ! あ、あぁ……んっ!」
下から突き刺す形で、先生のペニスが俺の中を貫いた。激しいのに甘くて強烈なのに心地好い極上の快感……。何度も何度も欲しくって、俺は先生の上で夢中になって尻を振る。
「せんせ、気持ちい……? 俺の中、気持ちいいですかっ……?」
「ああ、最高だ……中ですっげえ吸い付いてくる。よっぽど俺のチンポが好きなんだな」
「好きっ、大好き……! あっ、う、……せんせえのこともすき……んぁっ」
「黎人……」
先生が例の余裕のある微笑みで俺を見つめている。俺の大好きな笑い方だ。優しげで、眠そうで、……眠そうで。
「……先生?」
「………」
「ま、まじか……」
眠そうなんじゃない。寝てた。
「~~~……」
仕方なく先生の上から降りて、俺は(手早く自分で処理してから)パンツを穿いた。
ここ最近、寝てなかったから仕方ない。一番気持ち良い時に寝てもらえたなら、それでいい。
「……はぁ」
先生のコイビトになるって決めたのは俺だ。こんなことでヘコんでいたらキリがない。
*
「悪かったな、寝ちまって」
「全然! 先生は疲れてるんですから、寝れる時に寝た方がいいんですよ!」
結局その日の夕飯の時間まで眠ってしまった夜城先生は、それはそれは申し訳なさそうな顔をしていた。
「セックスの最中でタチが寝るなんて男じゃねえ。悪かった、黎人」
「いいんですってば。それよりほら、今日は先生の好きなエビフライですよ! いっぱい食べて下さいね!」
「黎人……」
揚げたてアツアツの山盛りエビフライを皿に盛っていると、後ろから先生が俺を抱きしめてきた。
「せ、先生……?」
「いつも俺に合わせてくれてありがとうな。お前には本当に感謝している。俺がギリギリ人間らしさを保っていられるのはお前のお陰だ」
「夜城先生……」
時々こうして大袈裟な台詞を言う先生。それこそ小説の登場人物みたいに。
だけど俺は知っている。これは大袈裟でも何でもなく、先生の素直な気持ちなのだと。
その証拠に……
「愛してるぞ、黎人」
「お、俺も愛してますよ、先生」
「……めちゃくちゃ寝たからな、今夜はもう寝ずに済みそうだ」
「ん?」
「飯食ったらもう一回ヤるぞ。昼間、お前を放置した分時間かけて何度も愛してやるからな。一晩中ずっと、カラになるまでな」
「い、いや先生……そんな、そんなことしたらまた明日起きる時間が遅くなって、昼夜逆転が直りませんよ」
「構わねえさ」
「お、俺が構うんですっ──!」
夜城先生はやっぱりどこか人とは違う。
だけどそんな先生に、俺は心の底から惚れ抜いているのだ。
第1話・終
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