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動物の森
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ゲームの話ではありません。
いつの時代のことだか分からない、混沌とした世界の話です。
広い陸地に、大きな大きな森がありました。
森の中には色々な動物が住んでいて、それぞれ自然の摂理に従って生きていました。
ところで、人間は他人との違いをもの凄く気にしますよね。
そして人の心の中には、しだいに嫉妬や虚栄心、邪な欲望の心が芽生えてきます。
それが悪い行いへと繋がりますね。
動物は弱肉強食の摂理で生きています。
ところがこの森には、「人」の悪い心が入ってしまいました。
そして、自分たちが一番優れていると思い込んで、他の動物を支配しようとするものが出てきたのです。
森の中で、そんな悪い心が入った動物は、まず獅子でした。
獅子は、体が大きくて牙が強く、豊かなたてがみを持ち、自分たちこそ森の主に相応しいと思い込んでしまいました。
熊は、獅子のそんな態度が気に入りませんでした。
それで、獅子がそんなことを言ってるが、熊こそが森の主に相応しいと言うようになりました。
熊は獅子よりもさらに体が大きく、爪がものすごく大きくて鋭くて、ひょっとして獅子より強いかも知れません。
熊は獅子に対して、『一つ勝負するか!』と強気で挑発してきました。
でもこの森の中で、本当に一番強い動物は、虎でした。
虎は獅子よりも体が大きく、牙も爪も鋭く、俊敏さでは誰よりも勝っていました。
ですので、間違いなく虎が一番強かったのです。
でも虎は、森の主になりたいなどとは、これっぽちも思っていませんでした。
虎は、自分が好きなように生きていければそれで良い、と思っていました。
でも、虎の邪魔をするようなものがいれば、必ず倒しました。
それで、獅子も熊も、虎には逆らわないようにしていました。
他にも密かに、森の主として一番相応しいのは、俺たちだと思っている動物がいました。
それは竜でした。
竜は、「俺様が本気を出せば、獅子も熊もあっという間に倒せるのだ。」と、吹聴していました。
そして、いつも弱い動物を虐めていました。
動物の中には、竜は空に昇れるので、一番強いのではないかと言うものもいました。
それで、熊がちょっと試してみようと、竜の顔を引っ叩いて見ると、竜は、
「すまん、すまん、俺が悪かった。助けてくれ!」
と、熊に泣きつきました。竜は実は、それほど強くなかったのです。
竜は弱い動物には強そうに威張りますが、相手が強いとだらしないのです。
森の動物たちは、もうすぐ獅子と熊が戦いを始めるのではないかと、その様子を伺っていました。
しかし何と、獅子と熊は、お互い森を半分ずつ支配しようと、協定をもちかけたのです。
獅子と熊は、動物ごとに縄張りを決めて、獅子と熊のそれぞれ縄張りに属する動物たちに、貢物を出すように命令しました。
ただし、虎には何も言いませんでした。
これに抵抗しようとする動物もいましたが、獅子や熊に脅されると、戦わずして降参してしまいました。
ただし、ひとりだけ、その命令に従わない動物がいました。
それは山犬でした。
『山犬族は、獅子に支配されるいわれはない。』と、抵抗しました。
山犬は頑として、獅子に貢物を出そうとしませんでした。
それを見て、山犬の近くに住んでいる、何だかよく分からない動物も貢物を出しませんでした。
その動物は熊の縄張りに属するのですが、熊はその動物の名前を付けるのが面倒くさくて、「ななし」と呼びました。
ななしは熊の縄張りに属する動物ですが、
「山犬さん、獅子に歯向かうのでしたら、私たちを熊から守ってくださいよ。」
と、筋の通らない勝手なことを言いました。
その一方で熊には、『山犬が命令するので、私たちは貢物を出せないのです。』と、でたらめをいいました。
すっかり、ななしに騙された熊は、山犬を攻めに行きました。
獅子も、山犬を攻めに行きました。
こうして山犬は、獅子からも熊からも攻撃されてしまったのです。
森の中で戦争が起きました。
獅子だけとの戦いなら、勝つ手立てもあったのですが、熊からも攻められて、山犬は万事休すになりました。
山犬は、二頭で組になって戦いました。二頭で連携して上手く戦ったので、山犬は最初の内は優勢でした。
しかし、獅子と熊の援軍がやってきて、山犬はだんだん傷を負うものが多くなりました。
獅子と熊は体の大きさが山犬よりも数倍大きく、獅子の牙と熊の爪は、山犬のものよりもよほど大きくて威力があったのです。
山犬は力尽き、傷だらけになって、もはやこれまでと、遠く果ての方まで追いやられてしまいました。
山犬が追われる時に、ななしは、山犬に向かって「どうだ!まいったか!」と、嘲り笑いました。
獅子と熊は、山犬が勇敢に戦ったので、敵ながら天晴と感心していました。そして、ななしの態度が腹立たしくなり、ななしをぽかりぽかりと撲りました。
そして熊は、「おまえの貢物は倍にする。」と言い放ちました。
ななしは悲壮な顔になりましたが、自分だけの力では到底逆らえませんでした。
獅子にも熊にも相手にされなくなったななしは、竜の家来になりました。
竜はただ、家来が欲しかっただけです。
惨めになったななしは、『俺たちは、勇敢に山犬と戦って勝利したのだ。』と、子供たちにでたらめの話を言い伝えました。
山犬はもう果ての方まで去ってしまったので、好き勝手に言えるのでした。
でも愚かなななしは、ななし同士で仲違いを始め、二つに分かれてずっといがみ合っています。
こうして、動物の森はおかしな世界になってしまったのです。
そして今でも、獅子と熊が『俺たちが森を支配している』と言い張っているのです。
これが動物の森のお話です。いつのことかは分かりません。
いつの時代のことだか分からない、混沌とした世界の話です。
広い陸地に、大きな大きな森がありました。
森の中には色々な動物が住んでいて、それぞれ自然の摂理に従って生きていました。
ところで、人間は他人との違いをもの凄く気にしますよね。
そして人の心の中には、しだいに嫉妬や虚栄心、邪な欲望の心が芽生えてきます。
それが悪い行いへと繋がりますね。
動物は弱肉強食の摂理で生きています。
ところがこの森には、「人」の悪い心が入ってしまいました。
そして、自分たちが一番優れていると思い込んで、他の動物を支配しようとするものが出てきたのです。
森の中で、そんな悪い心が入った動物は、まず獅子でした。
獅子は、体が大きくて牙が強く、豊かなたてがみを持ち、自分たちこそ森の主に相応しいと思い込んでしまいました。
熊は、獅子のそんな態度が気に入りませんでした。
それで、獅子がそんなことを言ってるが、熊こそが森の主に相応しいと言うようになりました。
熊は獅子よりもさらに体が大きく、爪がものすごく大きくて鋭くて、ひょっとして獅子より強いかも知れません。
熊は獅子に対して、『一つ勝負するか!』と強気で挑発してきました。
でもこの森の中で、本当に一番強い動物は、虎でした。
虎は獅子よりも体が大きく、牙も爪も鋭く、俊敏さでは誰よりも勝っていました。
ですので、間違いなく虎が一番強かったのです。
でも虎は、森の主になりたいなどとは、これっぽちも思っていませんでした。
虎は、自分が好きなように生きていければそれで良い、と思っていました。
でも、虎の邪魔をするようなものがいれば、必ず倒しました。
それで、獅子も熊も、虎には逆らわないようにしていました。
他にも密かに、森の主として一番相応しいのは、俺たちだと思っている動物がいました。
それは竜でした。
竜は、「俺様が本気を出せば、獅子も熊もあっという間に倒せるのだ。」と、吹聴していました。
そして、いつも弱い動物を虐めていました。
動物の中には、竜は空に昇れるので、一番強いのではないかと言うものもいました。
それで、熊がちょっと試してみようと、竜の顔を引っ叩いて見ると、竜は、
「すまん、すまん、俺が悪かった。助けてくれ!」
と、熊に泣きつきました。竜は実は、それほど強くなかったのです。
竜は弱い動物には強そうに威張りますが、相手が強いとだらしないのです。
森の動物たちは、もうすぐ獅子と熊が戦いを始めるのではないかと、その様子を伺っていました。
しかし何と、獅子と熊は、お互い森を半分ずつ支配しようと、協定をもちかけたのです。
獅子と熊は、動物ごとに縄張りを決めて、獅子と熊のそれぞれ縄張りに属する動物たちに、貢物を出すように命令しました。
ただし、虎には何も言いませんでした。
これに抵抗しようとする動物もいましたが、獅子や熊に脅されると、戦わずして降参してしまいました。
ただし、ひとりだけ、その命令に従わない動物がいました。
それは山犬でした。
『山犬族は、獅子に支配されるいわれはない。』と、抵抗しました。
山犬は頑として、獅子に貢物を出そうとしませんでした。
それを見て、山犬の近くに住んでいる、何だかよく分からない動物も貢物を出しませんでした。
その動物は熊の縄張りに属するのですが、熊はその動物の名前を付けるのが面倒くさくて、「ななし」と呼びました。
ななしは熊の縄張りに属する動物ですが、
「山犬さん、獅子に歯向かうのでしたら、私たちを熊から守ってくださいよ。」
と、筋の通らない勝手なことを言いました。
その一方で熊には、『山犬が命令するので、私たちは貢物を出せないのです。』と、でたらめをいいました。
すっかり、ななしに騙された熊は、山犬を攻めに行きました。
獅子も、山犬を攻めに行きました。
こうして山犬は、獅子からも熊からも攻撃されてしまったのです。
森の中で戦争が起きました。
獅子だけとの戦いなら、勝つ手立てもあったのですが、熊からも攻められて、山犬は万事休すになりました。
山犬は、二頭で組になって戦いました。二頭で連携して上手く戦ったので、山犬は最初の内は優勢でした。
しかし、獅子と熊の援軍がやってきて、山犬はだんだん傷を負うものが多くなりました。
獅子と熊は体の大きさが山犬よりも数倍大きく、獅子の牙と熊の爪は、山犬のものよりもよほど大きくて威力があったのです。
山犬は力尽き、傷だらけになって、もはやこれまでと、遠く果ての方まで追いやられてしまいました。
山犬が追われる時に、ななしは、山犬に向かって「どうだ!まいったか!」と、嘲り笑いました。
獅子と熊は、山犬が勇敢に戦ったので、敵ながら天晴と感心していました。そして、ななしの態度が腹立たしくなり、ななしをぽかりぽかりと撲りました。
そして熊は、「おまえの貢物は倍にする。」と言い放ちました。
ななしは悲壮な顔になりましたが、自分だけの力では到底逆らえませんでした。
獅子にも熊にも相手にされなくなったななしは、竜の家来になりました。
竜はただ、家来が欲しかっただけです。
惨めになったななしは、『俺たちは、勇敢に山犬と戦って勝利したのだ。』と、子供たちにでたらめの話を言い伝えました。
山犬はもう果ての方まで去ってしまったので、好き勝手に言えるのでした。
でも愚かなななしは、ななし同士で仲違いを始め、二つに分かれてずっといがみ合っています。
こうして、動物の森はおかしな世界になってしまったのです。
そして今でも、獅子と熊が『俺たちが森を支配している』と言い張っているのです。
これが動物の森のお話です。いつのことかは分かりません。
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