宝物をたくさん持ち帰った桃太郎

kudamonokozou

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宝物をたくさん持ち帰った桃太郎

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いよいよ鬼ヶ島が見えてきました。

桃太郎はしゃんと胸を張って、鬼ヶ島の鬼たちを見つめています。

猿は上手に櫓を使って、船をどんどん進めて行きます。

雉は羽をはばたかせ、鬼たちの回りをびゅんと飛びます。

犬は桃太郎の前に進み出て、真っ先に岸に上がろうと待ち構えています。

いよいよ、船が岸に乗り上げました。

犬は勢いよく飛びあがって、岸を走り出しました。

桃太郎もそれに続いて、岸に飛び降りました。

雉も岸に降りてきて、勇ましく歩き出しました。

猿も櫓を置いて、桃太郎に続いて駆けてきました。

岸には、大勢の鬼たちが待ち構えていました。

鬼のうち、二人が、
『桃太郎様ご一行、大歓迎』
と書いたのぼりを掲げていました。

そして鬼たちが、
「ようこそ鬼ヶ島へ!」
と、口々に叫びました。

鬼ヶ島に住んでいる犬たちがたくさん寄って来て、桃太郎のお供の犬と嬉しそうにじゃれあいました。

まるで、懐かしい友達に会ったみたいです。

「え、そうするとこの道中、きび団子しか召し上がっていないのですか。」
と、鬼たちが驚いた様子でそう聞きました。

「そうなんですよ。桃太郎は猿使いが荒くて。」
と、猿が言うと、
「それを言うなら、『桃太郎は雉使いが荒い』ですよ。」
と、雉が言うと、
「それを言うなら、『桃太郎は犬使いが荒い』ですよ。」
と、犬が言いました。

「あれ、桃太郎さんのこと、呼び捨てにしてよろしいのですか。ご主人様なんでしょう。」
と、鬼たちが聞きましたが、
「いやいや、私たちの方がずっと年上ですから。桃太郎なんて、まだおむつが取れたばかりの子供ですよ。」
と、猿が言いました。

「そうですか、そうですか。それでは早速、ご飯にしましょう。今日は晴れていて風も凪いでいますので、外で食事をお出ししようと思うのですが。」
と、鬼たちが言うと、桃太郎一行は、
「それが良い、それが良い。」
と、賛成しました。

鬼たちは、桃太郎たちの前にござをしいて、その上にたくさんの御馳走を並べました。

魚料理だの、山菜料理だの、おむすびだの、くだものだの、とてもおいしそうです。

「それでは、桃太郎様ご一行の御到着を祝いまして、いただきます!」
と、鬼の長があいさつをしまして、宴会が始まりました。

桃太郎たちはお腹が空いていましたので、むしゃむしゃとおいしそうに食事を食べました。

「ところで、鬼に角はないのかな。」
と、桃太郎がご馳走を頬張りながら、無邪気に、気になっていたことを聞きました。

「いや、参りましたなあ。鬼と呼ばれますが、ただの人ですよ。私たちは、昔からこの土地にずっと住んでいる者ですよ。」
と、鬼の長は、その禿げ頭を撫でまわしながら答えました。
「そうですよ。都の人間が、この人たちのことを勝手に鬼と呼んだのです。」
と、猿が桃太郎に教えました。
「へえー、そうなのか。これはためにになった。」
と、桃太郎は良い土産話ができたと喜びました。

お腹も一杯になったところで、鬼たちがお願いをしました。

「犬さん、この島の犬たちと一緒に並んで、お姿を披露してもらえませんか。」

犬はお安い御用と、鬼たちの前に、島の犬たちと並んで立ちました。

「ああ、犬さん、この者たちは大昔からこの国に住んでいる犬で、昔からの面影をそのまま伝えている犬なのですよ。ほら、ご先祖のような気がしませんか。」
と、鬼が桃太郎のお供の犬に言いました。

「そうなんですよ。一目見たときから、昔から会ってたような気がして、とても懐かしく思えるのです。ワンワン。」
と、お供の犬は喜んで言いました。

「うん、確かにそのように見える。犬たち、天晴じゃ。」
と、桃太郎は扇子を広げて、高く仰ぎました。

「だいぶ薄暗くなってきた。誰かすまんが、かがり火を焚いてくれんかの。」
と、年かさの鬼が言いましたので、別の鬼がかがり火を焚いてくれました。

「ところで、わしらもお猿さんと会うのは久しぶりですじゃ。この島にお猿はおりませんからのう。ほら、若い者なんかは、珍しそうにお猿さんをみつめていますでしょ。」
と、他の鬼が言いました。

そこで今度は、猿が鬼たちの前に立ちました。
「うわあ、お猿さんだ。」
と、島の子供たちが、嬉しそうに猿を見つめました。

なんだか人気者になった気がした猿は、嬉しくなって何度も宙返りをしました。

猿が宙返りをする度に、鬼たちは大人も子供も、
「ほーぅ、ほーぅ。」と、驚きの声を上げました。
そして最後に拍手をしました。猿は得意満面でした。

「うん、うん、猿も天晴じゃ。」
と、桃太郎はまた扇子を広げて、高く仰ぎました。

次は雉の番です。

雉は、皆の前にすくっと立ちました。

それだけで鬼たちは、
「ああ、さすがは国の鳥だ。なんと美しい。」
と、うっとりとしました。

赤い顔に、緑色にキラキラ光る胸、羽の美しい模様は芸術品のようです。

月明かりの中、かがり火が照らして、雉の姿は神秘的に輝きました。
雉は、ポーズを取ろうとして、その羽をばっと広げました。

「おーう、おーう。」
と、鬼たちはその豪華で華やかな様を見て、感嘆の声を上げました。

雉もその声に応えて、「ケーン、ケーン」と鋭く鳴きました。

ここで桃太郎が「天晴じゃ」と、扇子を仰ぐところですが、桃太郎は、すやすやと眠ってしまっておりました。
もうすっかり夜になっていたのです。

「それでは皆さん、お開きにしましょうか。」
と、鬼の長が言いましたので、皆で片づけをして、桃太郎一行は宿へと向かいました。

女性の鬼が、桃太郎を抱きかかえ、その寝顔をしみじみと見て、
「なんとかわいいお子なことよ。」
と、いとおしそうにつぶやきました。

次の朝、桃太郎は島の子供たちと、鬼ごっこやかくれんぼをして、楽しく遊びました。

帰る時になりまして、鬼たちは帰りのお弁当と、山の幸や海の幸で作られた保存食、すぐれた工芸品などをお土産に渡しました。

「皆、ありがとう!」
と、桃太郎はお礼を言って、扇子を広げて高く仰ぎました。

「また来てくださいね!」
鬼たちは、口々に桃太郎一行に叫びました。

船が小さくなるまで、鬼たちは手を振り続けました。

桃太郎は、
『聞くと見るとは大違い。鬼ヶ島に来て本当に良かった。』
と、つくづく思いました。
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