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■舞台は夢の世界編
【35】
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賑やかな場が一旦落ち着くと、ククルは勇者たちに近づいていった。
「ほっほっほ、まずはご苦労様と言わせてくれ。素晴らしい働きだったぞ。ほれ」
ククルは、ぼんやりと光る葉っぱをロゼンの口元へと差し出した。
「はにほれ(なにこれ)?」
「肉体ではなく精神体に回復効果をもたらす特別な薬草じゃ。調合に時間がかかる高級品だが、もちろん無料だから安心してくれ。さて、お前さんの身体が痛む理由だが……精神体が肉体に戻り、その疲労やダメージが共有されたせいじゃろう。精神体だけであれだけ動き回れるなんて普通はないからな。ボロボロの精神体が突然戻ってきた肉体もパニックで、すぐには動けんじゃろ」
そう説明しながら、ククルはガイアにも薬草を差し出し、そのまま咥えさせた。
「ふまんな(すまんな)」
ガイアは身体が痛むのか、寝そべったまま薬草をもぐもぐと噛みしめる。
「ふむ次は……普通なら動けんはずだが、お前さんは別格ということかい? お前さんの分の薬草も用意しておいたんじゃが」
ククルは、立ち上がっているイデアに薬草を差し出そうとしたが、首を振られて拒否される。
「ごめんね、薬草は効かない体質なんだ。それに、痛みとか疲労とかもよくわからなくて……たぶん、ちょっと変わった体質なのかもね」
いや、それ体質の問題なの?
と、みなは思った。しかし、事実として彼女は他の勇者たちとは違い立ち上がっているし、痛がる様子もない。なにか特別な力があるのかもしれないが……なんせ現九角の一角、最強の冒険者の一人なのだから、そういうものか、と妙に納得する説得力もある。
「いや、それでも食べておけ、イデア」
そんな空気の中、ガイアがきっぱりと言い放った。
「どうして? 今言ったけど私は」
「いっぱい食べる子は元気なんだ! 食べろ!」
なにその理由?
と、みなは思ったが、イデアはくすくすと笑い、「わかったよ」と言いながら手を伸ばして薬草を受け取った。
「うむ、食べることは元気。人間たるもの、忘れてはならんぞ」
薬草をちぎりながらゆっくりと口に運ぼうとするイデアを見て、ガイアは満足げにうなずいた。だが、その時の彼女をよく見ていれば、口調と裏腹に、どこか心配そうな表情を浮かべているのに気づいただろう。
しかし、イデアが薬草を口に入れようとした瞬間――。
赤い大鎌“ブラッド”が回転しながら突然彼女の目の前に現れ、テントを揺らすほどの振動とともに地面に刃を突き立てた。
「……あ」
イデアはブラッドを目にすると、食べようとしていた薬草を思わずその場に落としてしまった。
「お、おい、イデア!」
ガイアが慌てて声をかける。
「ごめんね、ガイア。やっぱりこれは食べられないみたい。でも、こんなのに頼らなくても大丈夫だから安心して。だって、ブラッドがいてくれるんだから」
そう言うと、イデアは手を伸ばし、ブラッドの柄を掴んだ。
赤い大鎌は地面から引き抜かれると同時に、周囲に散らばっていた薬草を燃やすように灰へと変え、静かにイデアの背中へと収まっていった。
「ほっほっほ、まずはご苦労様と言わせてくれ。素晴らしい働きだったぞ。ほれ」
ククルは、ぼんやりと光る葉っぱをロゼンの口元へと差し出した。
「はにほれ(なにこれ)?」
「肉体ではなく精神体に回復効果をもたらす特別な薬草じゃ。調合に時間がかかる高級品だが、もちろん無料だから安心してくれ。さて、お前さんの身体が痛む理由だが……精神体が肉体に戻り、その疲労やダメージが共有されたせいじゃろう。精神体だけであれだけ動き回れるなんて普通はないからな。ボロボロの精神体が突然戻ってきた肉体もパニックで、すぐには動けんじゃろ」
そう説明しながら、ククルはガイアにも薬草を差し出し、そのまま咥えさせた。
「ふまんな(すまんな)」
ガイアは身体が痛むのか、寝そべったまま薬草をもぐもぐと噛みしめる。
「ふむ次は……普通なら動けんはずだが、お前さんは別格ということかい? お前さんの分の薬草も用意しておいたんじゃが」
ククルは、立ち上がっているイデアに薬草を差し出そうとしたが、首を振られて拒否される。
「ごめんね、薬草は効かない体質なんだ。それに、痛みとか疲労とかもよくわからなくて……たぶん、ちょっと変わった体質なのかもね」
いや、それ体質の問題なの?
と、みなは思った。しかし、事実として彼女は他の勇者たちとは違い立ち上がっているし、痛がる様子もない。なにか特別な力があるのかもしれないが……なんせ現九角の一角、最強の冒険者の一人なのだから、そういうものか、と妙に納得する説得力もある。
「いや、それでも食べておけ、イデア」
そんな空気の中、ガイアがきっぱりと言い放った。
「どうして? 今言ったけど私は」
「いっぱい食べる子は元気なんだ! 食べろ!」
なにその理由?
と、みなは思ったが、イデアはくすくすと笑い、「わかったよ」と言いながら手を伸ばして薬草を受け取った。
「うむ、食べることは元気。人間たるもの、忘れてはならんぞ」
薬草をちぎりながらゆっくりと口に運ぼうとするイデアを見て、ガイアは満足げにうなずいた。だが、その時の彼女をよく見ていれば、口調と裏腹に、どこか心配そうな表情を浮かべているのに気づいただろう。
しかし、イデアが薬草を口に入れようとした瞬間――。
赤い大鎌“ブラッド”が回転しながら突然彼女の目の前に現れ、テントを揺らすほどの振動とともに地面に刃を突き立てた。
「……あ」
イデアはブラッドを目にすると、食べようとしていた薬草を思わずその場に落としてしまった。
「お、おい、イデア!」
ガイアが慌てて声をかける。
「ごめんね、ガイア。やっぱりこれは食べられないみたい。でも、こんなのに頼らなくても大丈夫だから安心して。だって、ブラッドがいてくれるんだから」
そう言うと、イデアは手を伸ばし、ブラッドの柄を掴んだ。
赤い大鎌は地面から引き抜かれると同時に、周囲に散らばっていた薬草を燃やすように灰へと変え、静かにイデアの背中へと収まっていった。
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