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■舞台は夢の世界編
【33】
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もはや上下の概念すら消失した世界で、宙を舞っていたガイアとイデアの身体がぴたりと止まった。
2人の勇者が、魔銃と赤い大鎌を構えてこちらを見据えているのにナイトメアは気づき、盾となるゾンビを生みだそうとする。
『──くそったれが……!』
だが、現れたのはどろどろに溶けた不完全なゾンビ。
もう使い魔を召喚する光力すら残っていないことは明らかだった。
残されたものがなにもないナイトメアに、2人の勇者の全光力をそそいだ業が向けられる。
「『魔法曲“フリウタ”』」
先にイデアが業名を唱え、赤い大鎌を振り抜く。
虹色の光とともに放たれた音色は、破壊の冷気をまといながら対象を目指して流れていく。
「『魔法銃“天照大神”』」
続いてガイアが業名を唱え、3点バーストの魔銃の引き金を引いた。
3発の弾丸が重なり合い、まるで小さな太陽が誕生したかのように、虹色の光力が灼熱の塊となって放たれる。
属性を負荷した必殺の一撃。
強力な業ほど、発動までの溜め時間と使用後の硬直が長くなる。その隙をつかれれば命取りとなるため、まさにこのタイミングで最後の決め手に選ばれた一撃だった。
『───』
並の業なら、身体がひとかけらになろうと耐え抜くつもりだった。しかし、これはそんなレベルの業ではない──
『───!』
ナイトメアは叫びにもならない声をあげ、黒い光を全身に纏わせた。
それと同時に、圧縮して迫りくる世界が一気に加速する。
業が届く前にこの世界を終わらせる。
その意志がはっきりと黒い光に宿っていた。光が輝くほど、ナイトメアの身体が足元から崩れ落ちていく。
自らの命を光力に変換した最後のあがき。
見える世界の幅はもうすぐそこまで来ていた。
圧縮が速すぎる。このままでは押しつぶされる。
──だが、あと一歩のところ、瞬きすら許されない時間の中、世界の圧縮が止まった。
いや、止まったのではない。巨大な蛇がとぐろを巻き、周囲を取り囲んで圧縮から守っていたのだ。
『惨めだ……これがお前の夢の果てなのか』
蛇のとぐろの中、ナイトメア、勇者3人、そしてもう一体の悪魔の姿があった。
そして、2人の勇者の業がナイトメアに届く。
虹色の音色がナイトメアを一瞬で凍りつかせ、その身体に衝撃も加えて粉砕する。
さらには、小さな太陽が、粉々になった身体をひとかけらも残さぬよう飲み込んでいった。
太陽の光が消える前に、周囲が闇に染まっていく。
怒り、憎しみ、絶望──様々な感情が入り混じった声にもならない断末魔だけが、悪夢の終わりに残されたものだった。
2人の勇者が、魔銃と赤い大鎌を構えてこちらを見据えているのにナイトメアは気づき、盾となるゾンビを生みだそうとする。
『──くそったれが……!』
だが、現れたのはどろどろに溶けた不完全なゾンビ。
もう使い魔を召喚する光力すら残っていないことは明らかだった。
残されたものがなにもないナイトメアに、2人の勇者の全光力をそそいだ業が向けられる。
「『魔法曲“フリウタ”』」
先にイデアが業名を唱え、赤い大鎌を振り抜く。
虹色の光とともに放たれた音色は、破壊の冷気をまといながら対象を目指して流れていく。
「『魔法銃“天照大神”』」
続いてガイアが業名を唱え、3点バーストの魔銃の引き金を引いた。
3発の弾丸が重なり合い、まるで小さな太陽が誕生したかのように、虹色の光力が灼熱の塊となって放たれる。
属性を負荷した必殺の一撃。
強力な業ほど、発動までの溜め時間と使用後の硬直が長くなる。その隙をつかれれば命取りとなるため、まさにこのタイミングで最後の決め手に選ばれた一撃だった。
『───』
並の業なら、身体がひとかけらになろうと耐え抜くつもりだった。しかし、これはそんなレベルの業ではない──
『───!』
ナイトメアは叫びにもならない声をあげ、黒い光を全身に纏わせた。
それと同時に、圧縮して迫りくる世界が一気に加速する。
業が届く前にこの世界を終わらせる。
その意志がはっきりと黒い光に宿っていた。光が輝くほど、ナイトメアの身体が足元から崩れ落ちていく。
自らの命を光力に変換した最後のあがき。
見える世界の幅はもうすぐそこまで来ていた。
圧縮が速すぎる。このままでは押しつぶされる。
──だが、あと一歩のところ、瞬きすら許されない時間の中、世界の圧縮が止まった。
いや、止まったのではない。巨大な蛇がとぐろを巻き、周囲を取り囲んで圧縮から守っていたのだ。
『惨めだ……これがお前の夢の果てなのか』
蛇のとぐろの中、ナイトメア、勇者3人、そしてもう一体の悪魔の姿があった。
そして、2人の勇者の業がナイトメアに届く。
虹色の音色がナイトメアを一瞬で凍りつかせ、その身体に衝撃も加えて粉砕する。
さらには、小さな太陽が、粉々になった身体をひとかけらも残さぬよう飲み込んでいった。
太陽の光が消える前に、周囲が闇に染まっていく。
怒り、憎しみ、絶望──様々な感情が入り混じった声にもならない断末魔だけが、悪夢の終わりに残されたものだった。
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