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■舞台は夢の世界編
【29】
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夢の北国のお城の前では、激しい銃音が響き、その場に似つかわしくない音色が流れ、重なるような笑い声がこだましていた。
『ははは! 外れ、外れ、大外れ!』
二人の勇者の攻撃を受けながら、100体のナイトメアたちは、はじけ、ばらけ、消し飛び、そしてまた元通りになってケラケラと笑い声を上げる。
さらには──
「ちっ!」
ガイアの舌打ち。魔銃で頭を吹っ飛ばしたナイトメアが風船のように膨らみ、爆弾のように突然爆発した。
回避しようとするが、その瞬間、数体のナイトメアがガイアにしがみついてきた。
「この……!」
ガイアは振りほどこうとするが、掴む力が強く、簡単には剥がれない。
「『魔法曲“スキャルダル”』」
それを見たイデアが赤い大鎌を振るった。
直後、ガイアが爆発に飲み込まれていく。
『そんな余裕あんのかよ!』
ガイアに意識を向けたイデアに、ナイトメアたちが襲いかかる。
しかし、赤い大鎌“ブラッド”が勝手に動き出し、もの凄い速さでイデアの手を離れると、瞬く間に向かってくるナイトメアたちを切り裂いていく。
『はあ……お前、悪魔のくせにダサいな。なに必死こいてそんな人間守ってやがる』
バラバラになったナイトメアたちは呆れたようにつぶやく。
赤い大鎌は何も答えることなく、回転しながらイデアの手元に戻った。
「すまん、イデア、助かったぞ!」
爆発に姿を消していたガイアは無傷で立っていた。
見ると、爆風を受け流すように薄いカーテンのようなものが彼女を覆っていた。
「本体を隠すためとはいえ、バラバラと散りながら攻撃しよって……だったら、まとめてやる!」
ガイアは叫ぶと、3点バーストの魔銃を構える。
「『魔法銃“月読命”』」
唱えられた業名と共に発射された3発の弾丸は、ある一定の距離で静止し、ひとつに混ざり、黄金に輝く球体へと変化した。
『──お、おお!?』
ナイトメアたちは、自分たちの身体が突然浮き上がったことに驚く。
否、ただ浮かんだだけではない。黄金の球体に向かって吸い寄せられていった。
『くそが、なめんじゃねえぞ!』
吸い寄せられるナイトメアたちが叫ぶと、まだガイアの業の影響を受けていないナイトメアたちは黒い光を輝かせ、自身の光力で反発してその場にとどまる。
「………」
イデアは全体を見渡し、引っ張られるナイトメア、残っているナイトメアが半々であることを確認する。
宙に浮いているナイトメア、残っているナイトメア。どちらかに本物は混ざっているはずだが、どちらを狙うべきか。
「『魔法曲“コルタール”』」
しかし、考える時間はない。全体を狙うには範囲が広すぎる。
ならば、ガイアの業の効果が消えないうちに、確実に業を与えられる浮いている方を狙う。
約50体のナイトメア。本体がいなくとも、これだけを一気に攻撃すれば、復活させるために相手の光力を削ることができるはず。
イデアの業により、球体に集められていた50体のナイトメアの首が斬り落とされた。
結果は──
『あー……ははは、ちょっと、びっくりしたじゃねえか』
やはり本体はいなかった。
残ったナイトメアたちは驚きつつも、安堵の表情を浮かべる。
「──『魔法剣“神龍”』」
唱えられた業名。
戦闘と業の使用によって疲労している2人の勇者と、50体が一気に削られた影響で動きが鈍くなったナイトメアたちの前を、白銀の竜が駆け抜けていく。
竜が向かう先は、ナイトメアたちの中でもっとも遠くにいた個体。
ガイアの業に引っ張られず、イデアの業にも斬られないために、自分の偽物に紛れながら、安全圏に逃げ続けていた個体だ。
『──っ!』
迫る白銀の竜に、ナイトメアは表情を硬くし、回避しようとするも──腕を食いちぎられる。
それと同時に、周囲のナイトメアたちの腕も同じように消失した。
「お前が本物か」
ガイアとイデアは、ナイトメアの本体に向かって同時に動き出した。
『ははは! 外れ、外れ、大外れ!』
二人の勇者の攻撃を受けながら、100体のナイトメアたちは、はじけ、ばらけ、消し飛び、そしてまた元通りになってケラケラと笑い声を上げる。
さらには──
「ちっ!」
ガイアの舌打ち。魔銃で頭を吹っ飛ばしたナイトメアが風船のように膨らみ、爆弾のように突然爆発した。
回避しようとするが、その瞬間、数体のナイトメアがガイアにしがみついてきた。
「この……!」
ガイアは振りほどこうとするが、掴む力が強く、簡単には剥がれない。
「『魔法曲“スキャルダル”』」
それを見たイデアが赤い大鎌を振るった。
直後、ガイアが爆発に飲み込まれていく。
『そんな余裕あんのかよ!』
ガイアに意識を向けたイデアに、ナイトメアたちが襲いかかる。
しかし、赤い大鎌“ブラッド”が勝手に動き出し、もの凄い速さでイデアの手を離れると、瞬く間に向かってくるナイトメアたちを切り裂いていく。
『はあ……お前、悪魔のくせにダサいな。なに必死こいてそんな人間守ってやがる』
バラバラになったナイトメアたちは呆れたようにつぶやく。
赤い大鎌は何も答えることなく、回転しながらイデアの手元に戻った。
「すまん、イデア、助かったぞ!」
爆発に姿を消していたガイアは無傷で立っていた。
見ると、爆風を受け流すように薄いカーテンのようなものが彼女を覆っていた。
「本体を隠すためとはいえ、バラバラと散りながら攻撃しよって……だったら、まとめてやる!」
ガイアは叫ぶと、3点バーストの魔銃を構える。
「『魔法銃“月読命”』」
唱えられた業名と共に発射された3発の弾丸は、ある一定の距離で静止し、ひとつに混ざり、黄金に輝く球体へと変化した。
『──お、おお!?』
ナイトメアたちは、自分たちの身体が突然浮き上がったことに驚く。
否、ただ浮かんだだけではない。黄金の球体に向かって吸い寄せられていった。
『くそが、なめんじゃねえぞ!』
吸い寄せられるナイトメアたちが叫ぶと、まだガイアの業の影響を受けていないナイトメアたちは黒い光を輝かせ、自身の光力で反発してその場にとどまる。
「………」
イデアは全体を見渡し、引っ張られるナイトメア、残っているナイトメアが半々であることを確認する。
宙に浮いているナイトメア、残っているナイトメア。どちらかに本物は混ざっているはずだが、どちらを狙うべきか。
「『魔法曲“コルタール”』」
しかし、考える時間はない。全体を狙うには範囲が広すぎる。
ならば、ガイアの業の効果が消えないうちに、確実に業を与えられる浮いている方を狙う。
約50体のナイトメア。本体がいなくとも、これだけを一気に攻撃すれば、復活させるために相手の光力を削ることができるはず。
イデアの業により、球体に集められていた50体のナイトメアの首が斬り落とされた。
結果は──
『あー……ははは、ちょっと、びっくりしたじゃねえか』
やはり本体はいなかった。
残ったナイトメアたちは驚きつつも、安堵の表情を浮かべる。
「──『魔法剣“神龍”』」
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戦闘と業の使用によって疲労している2人の勇者と、50体が一気に削られた影響で動きが鈍くなったナイトメアたちの前を、白銀の竜が駆け抜けていく。
竜が向かう先は、ナイトメアたちの中でもっとも遠くにいた個体。
ガイアの業に引っ張られず、イデアの業にも斬られないために、自分の偽物に紛れながら、安全圏に逃げ続けていた個体だ。
『──っ!』
迫る白銀の竜に、ナイトメアは表情を硬くし、回避しようとするも──腕を食いちぎられる。
それと同時に、周囲のナイトメアたちの腕も同じように消失した。
「お前が本物か」
ガイアとイデアは、ナイトメアの本体に向かって同時に動き出した。
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