☆なんちゃってクエスト★

Natsu

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■舞台は夢の世界編

【19】

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「──む?」

 ガイアは突如とつじょ変わった景色に目をぱちくりとさせた。
 精神体の転送を待つべく横たわっていただけなのに、もの凄い浮遊感ふゆうかんが突如として生まれたからだ。

「おぉおぉぉ!?」

 しかも、まるで自分が落ちているみたいに、上に見える景色が遠ざかり、下に見える景色が近づいてくる。

「おおおぉぉおおぉ!」

 ガイアは認めたくなかった。転送された地点が空中であり、そこから現在進行形で自分が落ちていることに。

「お、おのれエルフめ! もう少しマシな場所に転送できんかったのか!」

 初めての精神世界のスタートがこれとは予想していなかったため悪態をつくが、とにかく今はこの状況をなんとかしなくてはならない。
 器用に着地する自信がないため、仕方ないから光力こうりょく身体からだを全開に包みこみ、落ちた時の衝撃をやわらげることにする。

「む!?」

 虹色の光に身を包んだ時、落下しながら向かっている地点の地面からなにかがえてくるのが見えた。
 身体を腐敗させた人間のようななにか、アンデッドとも呼べるものが、地面から雑草のようにわらわらと姿を現してくる。

「あ、あああ、つ、次から次へと!」

 このままただ落ちると、アンデッドの集団に突っ込むことになるだろう。

「いかん! このままでは、アンデッドたちにこの美女がもみくちゃにされて“見せられないよ”の看板が必要な状態になってしまう!」

 謎の状態を妄想してあせった自称美女のガイアは、左右のズボンと腰に装備してあるガンホルダーのうち、そのひとつに手をかけた。

 ガイアが愛用の3ちょうの魔銃。
 
 半自動式はんじどうしき
 フルオート。
 3点さんてんバースト。

 個々の魔銃の性質を分類するならこの名称になるだろう。
 ガイアはフルオートをガンホルダーから抜きとると、アンデッドの集団に銃口を向けた。

「『魔法銃まほうじゅう“スサノオ”』」

 業名わざめいと共に虹色に包まれたフルオートの引き金が引かれる。
 次の瞬間に起こったのは、数えきれないほどの弾丸が雨のようにアンデッドたちに襲いかかる光景だった。

 そこだけ世界が違うような暴風雨ぼうふうう
 飲み込まれて消えていく屍の集団。

 そして───

「ふっ……また、つまらぬものを撃ってしまった」

 ひどくえぐられた地面に降り立ったガイアはフルオートをホルダーにしまい、バラバラになったアンデッドたちを横目につぶやく。

「ロゼンとイデアは……まあ近くにはおらんな。まずは合流するのを優先に行動するべきか」

 ガイアは散らばったアンデッドのなかを歩きだした。

『……アア…ウァ゙ア…』

 銃声が響く。
 うめき声をあげながらガイアの足をつかもうとしていたアンデッドはこめかみに穴をあけ、その場に崩れ落ちた。

「……1匹仕留しとめそこなっておったか。転送の状況に驚いていたとはいえ、私も腕が鈍っておるのかな」

 ガンホルダーから引き抜きぬいた半自動魔銃をしまい、ガイアは他の勇者たちを探すために歩きだした。
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