☆なんちゃってクエスト★

Natsu

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■舞台は夢の世界編

【17】

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 空間が歪むほどのエネルギーの放出のあと、テントの中に、

『むきー!』

 と、エルフの悔しそうな叫び声がこだまする。

 起きたことを確認するため、みなはまず初めに横たわっている勇者たちに目を向けた。
 その肉体は眠っているようにも見えるが、精神体が抜けているためかどことなく精気の薄さを感じる。

「よし、勇者たちはナイトメアの世界に行ったか。それに武器の転送も成功しておる。さすがだぞエルフ」

 そう言ったあと、ククルはこの場から姿を消したものの確認をする。

「悪魔ブラッドとタナトスも勇者たちについていけたようだな。準備もなくまったくたいしたやつらじゃ」

 並の異世界ならともかく、ナイトメアのそれは本当に特殊な異世界だ。
 エルフですら、世界守備隊と協力してテントの下に魔法陣をはり、ここを亜空間に変えることでようやく転送を可能としているのに。

『な、なに言ってるんでしゅか! わ、私は勇者を万全の状態で送ることを優先するために準備が必要だっただけれすす!』

「わかっとる、お前さんだって十分にとんでもない神業をやっとるよ。ムキになって張り合わんでもよかろう。その悪魔きらいも困ったもんじゃて」

 エルフの子供じみた反応に、ククルはあきれたような言い方をした。
 そんな最中、ミモザ、スファル、ラトンの3人が勇者のそばに近寄って様子を見る。

「……呼吸はしていますね。精神体が抜けているせいで肉体は弱っていますが」

「ですね……まあガイアさんが死ぬところなんて想像できないですけど。ねえラトン」

「確かに……って、ゼンスにいとティアさんなんでそんな遠くに、もっと近寄ってきたらどうっすか?」

 少し離れた場所で、2人で手を繋いだまま座って動かないゼンスとティアに、ラトンは不思議そうな様子で言う。

「タナトスを呼び出している間、私たちは繋がった状態で動いちゃいけないのよ」

 空いてる手で頭をおさえてげんなりしているゼンスに代わり、ティアが答える。
 それを聞いて、ミモザが思いだしたような様子で近寄ってきた。

「……そうでしたね。ところで、タナトスを召喚中はエネルギーと精神体の消耗が激しいと聞きましたが、大丈夫なんですか?」

「私も心配だったけど本当にこの亜空間の中が凄いみたいで、私とゼンスが受ける消耗を肩代わりしてくれているみたい。やっぱりエルフは凄いわ」

「おい、よくわからんが大丈夫になってるんだったら、手を離してもいいんじゃねえか!?」

 話を聞いてゼンスが慌てて口をはさんでくる。

「ダメよ。消耗を肩代わりしてくれてはいるけど、タナトスと契約を結んだときの条件に私とあなたが繋がってることも含んでいるから、手を離して契約違反するとどうなるかわからないわ」

「……つーことは、ようするに?」

「ロゼンたちがナイトメアを倒して戻ってくるまで、私たちはこのままね。仲良し仲良し」

 ゼンスと対照的なニコニコとした顔で、ティアは繋いでいる手を楽しげに振った。
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