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■舞台は夢の世界編
【14】
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「い、痛ってぇな! なにしやがんだ!」
ぶっちゃけそんなに痛くはなかったが、怒る理由としてそう叫んだあとゼンスはティアの顔を見る。
「なんなの、そんな理由でタナトス呼ぶのをあんなに嫌がっていたわけ!?」
「そんな理由だと!? お前にとっちゃそうかもしれんけど、武道派の俺にとったら結構な理由なんだぞ!?」
「だって、私だけだとタナトスの契約の負荷に耐えられないから一緒に耐えてやるって手を繋いでくれたじゃん!」
「そ、それはその時はそうしたが、まさか呼び出すときはずっと手をつなぐなんて俺は知らんかったぞ!」
喧嘩を始めた2人を、みなは反応に困ったように見つめる。
「それにパーティールールで決めただろ、タナトスを呼ぶときは全員が賛成したときだけって! ロゼン、ミモザ、お前らどうなんだ!?」
「呼んでいいよ」
「呼んでください」
「いや、ちょっとは考えろよ! パーティールール意味ねえじゃねえか!」
あっさりオッケーを出してきたしてきたロゼンとミモザに、ゼンスがたまらずに叫んだ。
そんなことをしていると、またティアの身体からエネルギーの波動が漏れ出し、テントが小さく揺れ始める。
「ああー!? ほら、たぶんこれ早く呼べって怒ってるでしょ! 早く早く!」
ティアは焦ったように手を伸ばした。
「……ちっ、し、仕方ねえな!」
ゼンスは諦めたようにその手を掴んだ。
握り返された手の感触を感じると、ティアは呪文詠唱を開始する。
「『暗闇の牢獄に封印されるのは破壊の蛇。その門を閉ざすのは掟を遵守する法の番人』」
詠唱を続けるティアの頭上に、巨大な蛇が巻き付いた門が突如として姿を現した。
一同が驚くなか、詠唱は続けられる。
「『穢れを練りこまれた餌により番人は逃れられない眠りにいざなわれる。門の鍵となる存在の封印は暗闇に閉ざされた蛇の化身を外界に解き放つ』」
その呪文に従うよう巨大な蛇はまるでそこに餌があるかのように虚無に食らいつき、意識をなくしたかのように顔をだらりと傾け、門に巻き付いていた身体が力なく地面に落ちていく。
「『閉ざされていた存在が光の下に立つことを許可された。束縛から解放され、一時の自由を与えられる。その名は──悪魔“タナトス”』」
ティアがそう言い終えた瞬間、巨大な門が開き、そこからなにかが飛びだしてきた。
『………』
黒い光を輝かせながら、蛇が巻きつく漆黒のローブに身を包んだ男が静かに地に足をつけた。
周りの空気を重いものに変えながら、召喚されたのは“悪魔タナトス”。
その出現にもっとも早く反応したのは、同じく悪魔の名を有する赤き大鎌だった。
ぶっちゃけそんなに痛くはなかったが、怒る理由としてそう叫んだあとゼンスはティアの顔を見る。
「なんなの、そんな理由でタナトス呼ぶのをあんなに嫌がっていたわけ!?」
「そんな理由だと!? お前にとっちゃそうかもしれんけど、武道派の俺にとったら結構な理由なんだぞ!?」
「だって、私だけだとタナトスの契約の負荷に耐えられないから一緒に耐えてやるって手を繋いでくれたじゃん!」
「そ、それはその時はそうしたが、まさか呼び出すときはずっと手をつなぐなんて俺は知らんかったぞ!」
喧嘩を始めた2人を、みなは反応に困ったように見つめる。
「それにパーティールールで決めただろ、タナトスを呼ぶときは全員が賛成したときだけって! ロゼン、ミモザ、お前らどうなんだ!?」
「呼んでいいよ」
「呼んでください」
「いや、ちょっとは考えろよ! パーティールール意味ねえじゃねえか!」
あっさりオッケーを出してきたしてきたロゼンとミモザに、ゼンスがたまらずに叫んだ。
そんなことをしていると、またティアの身体からエネルギーの波動が漏れ出し、テントが小さく揺れ始める。
「ああー!? ほら、たぶんこれ早く呼べって怒ってるでしょ! 早く早く!」
ティアは焦ったように手を伸ばした。
「……ちっ、し、仕方ねえな!」
ゼンスは諦めたようにその手を掴んだ。
握り返された手の感触を感じると、ティアは呪文詠唱を開始する。
「『暗闇の牢獄に封印されるのは破壊の蛇。その門を閉ざすのは掟を遵守する法の番人』」
詠唱を続けるティアの頭上に、巨大な蛇が巻き付いた門が突如として姿を現した。
一同が驚くなか、詠唱は続けられる。
「『穢れを練りこまれた餌により番人は逃れられない眠りにいざなわれる。門の鍵となる存在の封印は暗闇に閉ざされた蛇の化身を外界に解き放つ』」
その呪文に従うよう巨大な蛇はまるでそこに餌があるかのように虚無に食らいつき、意識をなくしたかのように顔をだらりと傾け、門に巻き付いていた身体が力なく地面に落ちていく。
「『閉ざされていた存在が光の下に立つことを許可された。束縛から解放され、一時の自由を与えられる。その名は──悪魔“タナトス”』」
ティアがそう言い終えた瞬間、巨大な門が開き、そこからなにかが飛びだしてきた。
『………』
黒い光を輝かせながら、蛇が巻きつく漆黒のローブに身を包んだ男が静かに地に足をつけた。
周りの空気を重いものに変えながら、召喚されたのは“悪魔タナトス”。
その出現にもっとも早く反応したのは、同じく悪魔の名を有する赤き大鎌だった。
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